#穴吹興産転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、穴吹興産株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 穴吹興産ってどんな会社?
分譲マンション「アルファ」シリーズの展開を中心に、人材サービスや施設運営、介護医療、エネルギー事業など多角的な事業を行う企業グループです。
■(1) 会社概要
1964年5月に宅地建物取引を目的として設立されました。1985年6月に本格的にファミリーマンションの分譲事業へ進出し、2004年6月に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2006年6月に同市場第一部指定を経て、2013年7月の市場統合に伴い東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2024年12月には米国での地域統括会社を設立するなど、海外展開も進めています。
同社の連結従業員数は1,780名、単体では423名です。筆頭株主は親会社でありマンション管理等を行う穴吹ハウジングサービス、第2位は代表取締役社長の穴吹忠嗣氏です。第3位には奨学金給付等を行う公益財団法人穴吹キヌヱ忠嗣教育基金が入っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 穴吹ハウジングサービス | 47.37% |
| 穴吹 忠嗣 | 8.23% |
| 公益財団法人穴吹キヌヱ忠嗣教育基金 | 6.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名(有報提出日現在)の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は穴吹忠嗣氏です。社外取締役比率は25.0%(8名中2名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 穴吹 忠嗣 | 取締役社長(代表取締役) | 1975年4月山種証券入社。1978年8月同社入社。1994年7月代表取締役社長に就任し、現在に至る。穴吹エンタープライズ取締役会長等を兼任。 |
| 大谷 佳久 | 常務取締役管理本部長 | 1990年4月同社入社。あなぶきメディカルケア代表取締役社長、あなぶきヘルスケア代表取締役社長等を経て、2023年9月常務取締役就任。 |
| 近藤 陽介 | 常務取締役不動産開発本部長 | 1999年4月同社入社。ジョイフルサンアルファ代表取締役社長等を経て、2023年9月常務取締役就任。 |
| 新宮 章弘 | 取締役 | 1989年1月穴吹ハウジングサービス入社。2014年1月同社取締役社長。2015年9月同社取締役就任。現在、穴吹ハウジングサービス代表取締役社長。 |
| 松本 伸也 | 取締役M&A推進部長 | 2003年4月同社入社。執行役員、M&A推進室長等を経て、2022年9月取締役就任。あなぶきデジタルサービス代表取締役社長を兼任。 |
| 香川 昌章 | 取締役海外事業本部長 | 1997年4月同社入社。日本電力取締役、執行役員海外事業推進部長等を経て、2024年9月取締役就任。 |
社外取締役は、堀井茂(弁護士)、勝丸千晶(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産関連事業」、「人材サービス関連事業」、「施設運営事業」、「介護医療関連事業」、「小売流通関連事業」、「エネルギー関連事業」、「観光事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産関連事業
「アルファ」シリーズの分譲マンション事業を主軸に、中古マンション買取再販、不動産仲介、不動産賃貸、戸建分譲、注文住宅事業などを行っています。顧客は主に個人や投資家です。
マンションや戸建住宅の販売代金、不動産の賃貸料や仲介手数料などが主な収益源です。運営は主に同社が行い、あなぶきリアルエステートが販売代理、あなぶき・きなりの家が戸建事業等を担当しています。
■人材サービス関連事業
人材派遣、有料職業紹介、業務処理請負(アウトソーシング)、組織人事コンサルティング、教育研修サービスなどを企業向けに提供しています。
企業からの派遣料金、紹介手数料、業務委託料などが収益源です。運営は主にクリエアナブキが行い、物流アウトソーシングはクリエ・ロジプラスが担当しています。
■施設運営事業
ホテル、サービスエリア、公民連携(PPP)事業による公共施設、ゴルフ場などの運営を行っています。利用者は一般顧客や観光客、地域住民などです。
施設利用料、宿泊料、飲食代、指定管理料などが収益源です。運営は主に穴吹エンタープライズが行い、イベント企画等はあなぶきエンタテインメントが担当しています。
■介護医療関連事業
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の運営、介護サービスの提供、医療・介護施設専門ポータルサイトの運営などを行っています。
入居者からの賃料や管理費、介護保険法に基づく介護給付費などが収益源です。運営はあなぶきメディカルケアおよびあなぶきヘルスケアが行っています。
■小売流通関連事業
長崎県においてスーパーマーケット事業を展開し、食料品や日用品などを地域住民に提供しています。
店舗での商品販売代金が収益源です。運営はジョイフルサンアルファが行っていますが、2025年7月1日付で同社の全株式が譲渡され、連結除外となりました。
■エネルギー関連事業
マンション向けの高圧一括受電による電力提供サービスや、住宅設備機器のリース事業を行っています。
電力利用者からの電気料金や、設備機器のリース料が収益源です。運営は主に日本電力が行っています。
■観光事業
国内・海外旅行の企画・手配・販売、タクシー事業などを行っています。個人や団体旅行客が顧客です。
旅行代金や手配手数料などが収益源です。運営は主に穴吹トラベルが行っています。
■その他
グループ内のコーポレート部門のシェアードサービスや、霊園事業、石材製品の製造・販売などを行っています。
グループ会社からの業務受託料や、霊園・石材の販売代金などが収益源です。運営はあなぶきビジネスサービスやあなぶきメモリアル等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第58期から第61期にかけて増加傾向にありましたが、第62期は微減となりました。利益面では、第61期に過去最高益を記録した後、第62期は減益となりましたが、一定の利益水準を維持しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,048億円 | 1,113億円 | 1,138億円 | 1,345億円 | 1,310億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 71億円 | 65億円 | 72億円 | 56億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 6.3% | 5.7% | 5.3% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 42億円 | 41億円 | 48億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、原価率の改善等により売上総利益の減少幅は抑制されています。一方、販売費及び一般管理費は減少したものの、営業外損益の影響等により経常利益は減少しました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,345億円 | 1,310億円 |
| 売上総利益 | 267億円 | 262億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 20.0% |
| 営業利益 | 57億円 | 57億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、社員給料が54億円(構成比26%)、広告宣伝費が23億円(同11%)、販売促進費が23億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
不動産関連事業と小売流通関連事業が減収となりましたが、施設運営事業や介護医療関連事業、エネルギー関連事業は増収となりました。特にエネルギー関連事業は電力売上が堅調で収益が回復しました。施設運営事業もインバウンド需要等により増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産関連事業 | 989億円 | 924億円 | 55億円 | 55億円 | 5.9% |
| 人材サービス関連事業 | 56億円 | 59億円 | 2億円 | 3億円 | 4.6% |
| 施設運営事業 | 70億円 | 77億円 | 0.1億円 | 1億円 | 1.3% |
| 介護医療関連事業 | 63億円 | 70億円 | 2億円 | 2億円 | 2.8% |
| 小売流通関連事業 | 81億円 | 76億円 | -2億円 | -2億円 | - |
| エネルギー関連事業 | 64億円 | 82億円 | -2億円 | -0.7億円 | - |
| 観光事業 | 22億円 | 21億円 | 1億円 | 0.4億円 | 1.9% |
| その他 | 0.0億円 | 1億円 | 0.0億円 | -1億円 | - |
| 調整額 | - | - | 0.0億円 | 0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 1,345億円 | 1,310億円 | 57億円 | 57億円 | 4.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
積極型:営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -11億円 | 0.6億円 |
| 投資CF | -22億円 | -65億円 |
| 財務CF | 46億円 | 36億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「住まい創りや不動産価値創造事業を通じて地域社会の文化と歴史の創造に貢献します」という経営理念を掲げています。また、「最大たるより最良たるべし」、「オンリーワン(なくてはならない)企業」、「地域密着型企業」および「CS(顧客満足)・ES(従業員満足)推進企業」を経営の基本路線としています。
■(2) 企業文化
「地域に生かされ生きる」という価値観を共有し、地域社会になくてはならない存在となることを目指しています。「地域の環境、風土に結びついて人間の心が和む物を創り出す」「建物創りや事業活動を通じて、後世に影響を与えてゆく」を理念(ミッション)として掲げています。
■(3) 経営計画・目標
第63期(2026年6月期)から第65期(2028年6月期)までの中期経営計画を策定しています。経営指標としては、有利子負債比率を50%以下に圧縮し、自己資本比率を30%以上に向上させることを重点目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「地域密着型ビジネスモデルの研鑽と拡充、独創的新事業の創造と挑戦による事業ポートフォリオの組み換え」を中期方針としています。分譲マンション事業の収益向上、戦略的不動産関連事業の拡大、海外事業の拡大、新規不動産事業の確立、新たな収益モデルの創造、組織・デジタル戦略の推進、財務基盤の強化を重点戦略としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「経営理念・企業価値観の浸透」を基本とし、多様な人材が活躍できる組織を目指しています。海外事業を含めた採用強化、教育研修の充実、ES経営によるエンゲージメント向上、健康経営、将来に対応した人事制度設計などの施策を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 37.7歳 | 10.6年 | 6,782,939円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.9% |
| 男性育児休業取得率 | 45.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 47.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア「総合エンゲージメント」(3.59/5.00)、健康経営優良法人2025(認定取得)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況・金利動向の影響
不動産関連事業における住宅販売は、政府の経済政策、税制、金利動向の影響を受けやすく、消費者の購買心理の変化が経営成績に影響する可能性があります。また、資源価格高騰による資材価格の上昇も収益低下のリスク要因です。
■(2) 有利子負債への依存
分譲マンション事業の土地仕入れや建設資金を金融機関からの借入で調達しているため、有利子負債依存度が高くなっています(2025年6月期連結で50.9%)。金利上昇や金融機関の融資姿勢の変化により資金調達が困難になった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 引渡時期による業績変動
分譲マンション事業では顧客への引渡時に売上が計上されるため、引渡時期によって四半期ごとの業績に偏りが生じます。天災や工期遅延等により引渡しが期末を越えて遅れた場合、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
■(4) 穴吹工務店との関係及び競業
同社は元々穴吹工務店グループの不動産部門として設立されましたが、現在は別グループとして独立しており、大京グループ傘下の穴吹工務店とは競業関係にあります。商標を「あなぶき」に変更するなど差別化を図っていますが、営業地域において競業関係は継続しています。



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