#ゼロ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ゼロ の有価証券報告書(第79期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ゼロってどんな会社?
日産自動車の陸送部門を母体とし、現在は全メーカーの車両輸送や人材派遣、海外事業を展開する総合物流企業です。
■(1) 会社概要
1961年に日産自動車の新車輸送を行う日産陸送として設立されました。2001年のMBOによる独立を経てゼロへ商号変更し、2005年に東証二部へ上場しました。その後、2014年にタンチョンインターナショナルリミテッドと資本業務提携を結び、同社グループの一員となりました。近年では、2021年に陸友物流(北京)有限公司を子会社化するなど、海外展開や周辺事業の拡大を進めています。
連結従業員数は2,703名、単体では446名体制です。筆頭株主は香港に拠点を置くタンチョンインターナショナルグループの投資会社であるZENITH LOGISTICS LIMITED、第2位は物流持株会社のSBSホールディングスであり、アジアを代表するコングロマリットと国内物流大手が大株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ZENITH LOGISTICS LIMITED | 47.97% |
| SBSホールディングス | 20.90% |
| フジトランスコーポレーション | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は髙橋俊博氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北村 竹朗 | 代表取締役会長海外事業本部長 | 日産自動車出身。北米日産副社長等を経て、2006年に同社入社。経営企画部長、海外事業企画部長、社長等を歴任。2024年7月より現職。 |
| 髙橋 俊博 | 代表取締役社長 | 三和銀行(現三菱UFJ銀行)出身。2015年に同社入社。経営企画部長、グループ戦略本部長、ゼロ・プラスIKEDA社長等を歴任。2025年7月より現職。 |
| 中江 英毅 | 代表取締役副会長カスタマーサービス本部長整備事業本部長 | 苅田港海陸運送出身。同社社長を経て、2011年に同社執行役員。カスタマーサービス本部長等を歴任し、2024年9月より現職。 |
| 柴田 学爾 | 取締役営業本部長 | 三菱商事出身。ウイルプラスホールディングス常務等を経て2023年に同社入社。執行役員営業本部長を経て2025年9月より現職。 |
| タン・エンスン | 取締役 | タンチョンモーターグループ代表、タンチョンインターナショナルリミテッド会長等を歴任。2004年9月より現職。 |
| ジリアン・タン | 取締役 | タンチョンインターナショナルリミテッド取締役。2025年9月より現職。 |
社外取締役は、鎌田正彦(SBSホールディングス代表取締役社長)、上村俊之(クリフィックス税理士法人社員)、和田芳幸(和田会計事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内自動車関連事業」「ヒューマンリソース事業」「一般貨物事業」「海外関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内自動車関連事業
新車および中古車の輸送、バイク輸送、レンタル建機の回送、納車前整備点検、中古車オークション会場での検査業務などを提供しています。自動車メーカーや販売会社、リース会社などが主な顧客です。
輸送サービスや整備サービスの対価として収益を得ています。運営は主にゼロ、ゼロ・プラス関東などの地域子会社、ゼロ・プラスBHS、ゼロ・プラスIKEDA、ソウイング、ゼロ・プラス・メンテナンスが行っています。
■ヒューマンリソース事業
自動車の運行管理事業(役員車や送迎バス等)や、ドライバーおよび倉庫内作業員を中心とした人材派遣事業を提供しています。病院、教育施設、物流企業などが主な顧客です。
運行管理請負料や人材派遣料を収益としています。運営は主にジャパン・リリーフおよびその子会社が行っています。
■一般貨物事業
港湾荷役や一般消費財等の運輸・倉庫事業、3PL事業を提供しています。物流センターを持つ企業や電力会社などが顧客です。
港湾荷役料、運送料、倉庫保管料などを収益としています。運営は主にゼロ、苅田港海陸運送、九倉、東洋物産が行っています。
■海外関連事業
東南アジア向けの中古車輸出や、中国における新車輸送などを展開しています。現地の自動車販売会社や物流会社などが顧客です。
中古車の販売代金や輸送サービスの対価を収益としています。運営は主にゼロ、ワールドウインドウズ、陸友物流(北京)有限公司、TC Zero Company Private Limitedなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は過去5期間を通じて増加傾向にあり、特に直近では料金適正化や輸送戦力の確保により伸長しています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに大幅な増加基調にあり、利益率も改善傾向を示しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 922億円 | 1,070億円 | 1,329億円 | 1,408億円 | 1,478億円 |
| 税引前利益 | 54億円 | 39億円 | 51億円 | 62億円 | 102億円 |
| 利益率(%) | 5.8% | 3.7% | 3.8% | 4.4% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 36億円 | 25億円 | 34億円 | 42億円 | 72億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上収益の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率は前期間と比較して改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,408億円 | 1,478億円 |
| 売上総利益 | 177億円 | 218億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.6% | 14.7% |
| 営業利益 | 62億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が26億円(構成比22%)、賞与引当金繰入額が5億円(同4%)を占めています。売上原価においては、外注輸送費が300億円(構成比24%)、従業員給付費用が342億円(同27%)、商品売上原価が426億円(同34%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内自動車関連事業は料金改定や輸送効率化により増収増益となりました。ヒューマンリソース事業は増収ながら先行投資等で微減益、一般貨物事業は港湾荷役の好調等で増収増益です。海外関連事業は中古車輸出の回復等により利益が大幅に改善しました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内自動車関連事業 | 639億円 | 697億円 | 70億円 | 90億円 | 13.0% |
| ヒューマンリソース事業 | 234億円 | 253億円 | 8億円 | 8億円 | 3.2% |
| 一般貨物事業 | 65億円 | 67億円 | 8億円 | 20億円 | 29.5% |
| 海外関連事業 | 489億円 | 488億円 | 0.8億円 | 9億円 | 1.8% |
| 調整額 | -20億円 | -26億円 | -25億円 | -25億円 | - |
| 連結(合計) | 1,408億円 | 1,478億円 | 62億円 | 102億円 | 6.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)です。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 112億円 | 129億円 |
| 投資CF | -47億円 | -28億円 |
| 財務CF | -8億円 | -46億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは『品質』を企業理念として掲げています。「安全で良質な輸送・サービス」を顧客に提供するとともに、「顧客の期待以上のサービスを創造することにより、豊かな社会の発展に貢献する」ことを目指しています。
■(2) 企業文化
営業品質・物流品質・人的品質(人的資本)・財務品質など、あらゆる品質の向上を活動の基本としています。持続的な成長・発展を通じて企業価値を増大させ、社会、顧客、株主から継続的に信頼される企業グループになることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画の最終年度となる2027年6月期に向けた数値目標を設定しています。
* 売上収益:1,500億円以上
* 営業利益:100億円以上
* 営業利益率:6.5%以上
* ROE:14.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
車両輸送事業においては、地域ブロック化による最適な配置やデジタル化による輸送効率向上、コスト管理の徹底を進めています。また、物流の2024年問題への対応として、業務の効率化や自動化、労働環境の改善を推進し、魅力ある職場づくりを目指しています。さらに、中古車関連やヒューマンリソース事業、海外事業の拡大も重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人財の確保・育成を経営の重要項目と位置づけ、多様な職種での採用強化や労働環境整備を進めています。従業員の自律的なキャリア形成を支援し、性別や年齢、国籍を問わず活躍できる組織づくりを目指しています。また、健康で安心して働ける環境の実現に向け、安全教育や多様性の確保、ワークライフバランスの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 45.8歳 | 13.7年 | 5,928,799円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.9% |
| 男性育児休業取得率 | 63.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、三年以内離職率(10.0%)、有給休暇平均取得日数(13.4日)、年間採用人数(181人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要顧客への売上依存度
日産自動車グループへの売上依存度が継続的に高い状況にあります。同社とは契約更新を続けていますが、取引状況に変更が生じたり、取引が継続できなくなった場合には、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 特有の法的規制
事業活動には貨物自動車運送事業法等の許認可が必要であり、法令違反等により許認可が取り消された場合、事業継続に支障をきたす可能性があります。また、働き方改革関連法などの規制強化への対応により、人件費や設備投資等のコストが増加する可能性があります。
■(3) 人材の確保
少子高齢化や景気回復に伴う人材不足、人件費高騰により、必要な人材、特に乗務員を確保できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、新卒採用の強化や労働環境の改善等の施策を講じています。
■(4) サイバーセキュリティ
基幹システム等へのサイバー攻撃によりシステム停止や情報漏洩が発生した場合、事業運営への支障、社会的信用の失墜、損害賠償等により、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、技術的・人的なセキュリティ対策を強化しています。



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