伏木海陸運送 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

伏木海陸運送 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する伏木海陸運送は、富山県の伏木富山港を拠点とする総合物流企業です。港運事業を中核に、不動産事業や繊維製品製造事業も展開しています。2025年6月期の連結業績は、売上高135億円(前期比4.0%増)、経常利益12億円(同64.0%増)の増収増益となりました。


※本記事は、伏木海陸運送株式会社 の有価証券報告書(第108期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 伏木海陸運送ってどんな会社?


伏木海陸運送は、富山県高岡市に本社を置く総合物流企業です。伏木富山港を基盤とした港湾運送事業を主力とし、地域の物流インフラを支えています。

(1) 会社概要


同社は1944年、伏木港湾運送と日本通運伏木支店との合併により設立されました。1963年に東京証券取引所市場第二部に上場を果たしています。近年ではM&Aによる多角化を進めており、2009年にチューゲキを、2012年には山口ニットを連結子会社化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は684名、単体では300名体制です。筆頭株主は創業家資産管理会社と推測される株式会社橘海運で、第2位は大手生命保険会社の明治安田生命保険相互会社、第3位は地元の金融機関である株式会社北陸銀行となっています。

氏名 持株比率
橘海運 7.98%
明治安田生命保険相互会社 7.36%
北陸銀行 4.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性1名の計16名で構成され、女性役員比率は6.3%です。代表取締役社長は浦俊夫氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
浦 俊夫 代表取締役社長 1980年入社。財務・経理部長、総務部長、代表取締役専務、代表取締役副社長を経て、2025年9月より現職。
大門 督幸 取締役会長 1978年入社。営業部長、代表取締役専務、代表取締役副社長、代表取締役社長を経て、2025年9月より現職。
細川 英明 代表取締役専務 1986年入社。営業部長、取締役国際物流部長、常務取締役を経て、2025年9月より現職。伏木貨物自動車社長を兼任。
吉田 秀樹 常務取締役 1989年入社。営業部長、北陸日本海油送社長を経て、現在はFKKエンジニアリング社長および人事労務部長を兼任。
松浦 孝雄 取締役関連事業部長 1990年入社。経営企画室長を経て現職。高岡ステーションビル社長を兼任。
縄井 和弘 取締役総務部長 1989年入社。営業部次長、総務部長を経て現職。
野村 和宏 取締役海運部長 1993年入社。海運部長を経て現職。新湊観光開発社長、北陸海事社長を兼任。
塚原 悟史 取締役国際輸送部長 1993年入社。営業部次長、国際輸送部長を経て現職。
釣谷 宏行 取締役 シーケー金属社長、サンエツ金属社長等を経て現職。三谷伸銅会長を兼任。
夏野 公秀 取締役 射水運輸社長、射水建設興業社長、射水建材社長を兼任。
稲垣 晴彦 取締役 北陸コカ・コーラボトリング常務を経て現職。GRN社長、北陸コカ・コーラボトリング会長を兼任。
粟田 吉弘 取締役 2004年9月より現職。2011年4月小倉大弓製作所へ入社。
橘 奈緒美 取締役 タチバナアソシエイツ代表を経て現職。DHRインターナショナル・ジャパンパートナーを兼任。


社外取締役は、釣谷宏行(シーケー金属等社長歴任)、夏野公秀(射水運輸社長)、稲垣晴彦(北陸コカ・コーラボトリング会長)、橘奈緒美(タチバナアソシエイツ代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「港運事業」「不動産事業」「繊維製品製造事業」および「その他」事業を展開しています。

港運事業


伏木港、富山新港における船舶の積卸、コンテナターミナル運営、沿岸作業、通関、陸上・海上輸送、倉庫保管などを提供しています。主な顧客は荷主企業や船会社です。

収益は、荷役料、運送料、保管料などが主な源泉です。運営は、主に伏木海陸運送、丸共シーランド、北陸海事、伏木貨物自動車、北陸日本海油送、北陸太平洋物流、高岡鉄道産業が行っています。

不動産事業


高岡駅前ビルの賃貸、不動産賃貸、駐車場経営、木造注文住宅の建築およびリフォーム事業を展開しています。テナント企業や一般個人顧客に対してサービスを提供しています。

収益は、賃貸料や住宅販売代金などが主な源泉です。運営は、主に伏木海陸運送、チューゲキ、大洋住宅が行っています。

繊維製品製造事業


繊維製品の製造を行っており、自動車内装材や衣料向けの製品を提供しています。

収益は、製品の販売代金が主な源泉です。運営は、主に山口ニットが行っています。

その他


損害保険代理店業、飲食店業、旅行業、繊維製品卸売業、ゴルフ場運営などを展開しています。多様なニーズに対応したサービスを提供しています。

収益は、代理店手数料、飲食代金、旅行代金、卸売代金、ゴルフ場利用料などが主な源泉です。運営は、主に伏木海陸運送、FKKエンジニアリング、FKKツアーズ、山口、氷見観光開発などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定的に推移しており、直近では130億円台を維持しています。利益面では、2023年6月期に高い利益率を記録した後、翌期に一旦低下しましたが、2025年6月期には回復傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 124億円 122億円 131億円 129億円 135億円
経常利益 7億円 9億円 13億円 7億円 12億円
利益率(%) 5.4% 7.7% 9.6% 5.5% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 6億円 5億円 3億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率は5.7%から9.2%へと大きく改善しており、収益性が向上しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 129億円 135億円
売上総利益 19億円 24億円
売上総利益率(%) 14.8% 17.6%
営業利益 7億円 12億円
営業利益率(%) 5.7% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、その他一般管理費が4.1億円(構成比36.1%)、給料及び手当が3.0億円(同26.9%)を占めています。売上原価については、大部分が事業運営に直接関わる費用で構成されています。

(3) セグメント収益


主力の港運事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。不動産事業は減収ながらも微増益を確保し、繊維製品製造事業も増収により黒字転換を果たしました。その他事業は減収減益となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
港運事業 85億円 92億円 9億円 13億円 14.2%
不動産事業 12億円 11億円 3億円 3億円 29.1%
繊維製品製造事業 21億円 21億円 -0.4億円 0.2億円 1.1%
その他事業 12億円 10億円 0.5億円 0.3億円 2.5%
調整額 - - -5億円 -4億円 -
連結(合計) 129億円 135億円 7億円 12億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で得たキャッシュを借入金の返済や株主還元に充てつつ、必要な投資は手元資金の範囲内でコントロールする「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 11億円 21億円
投資CF -13億円 -7億円
財務CF 1億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「内和外信」を社訓とし、総合物流事業を通じて地域社会に貢献することを目指しています。「FKKグループ経営理念」として、顧客・株主・社員・地域社会に信頼され貢献する企業集団を目指すこと、富山県を基盤としつつグローバルな視点で挑戦することを掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「攻め」は「改革・改善」の積み重ねで目標を達成し、「守り」は「報告・連絡・相談」の徹底で事故・ミスを無くし、顧客や地域の信頼を得ることを基本とする企業文化を持っています。法令遵守と企業の社会的責任を重視し、環境に配慮した経営を継続する姿勢を示しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的な成長と収益向上を目指していますが、具体的な数値目標を含む中期経営計画等の詳細は有価証券報告書上では記載されていません。ESG経営を基本方針とし、地域社会の発展に資することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


主力である港湾運送事業において、規制緩和による競争激化を見据え、コスト削減と物流ノウハウを駆使したサービスの充実に努めています。また、次世代を担う若年層の人材育成と技術伝承を最重要課題とし、現場の安全作業を徹底します。さらに、長距離ドライバー不足に対処するための国内モーダルシフトへの注力や、港湾物流インフラの整備、取扱貨物と航路の拡充を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


港湾運送事業及び関連事業に携わる若年世代の人材育成を最重要課題と位置づけています。業務ノウハウや作業技術の確実な伝承を行い、現場の安全作業を徹底する方針です。また、年齢や性別に関係なく多様な人材の活躍を推進し、定年を65歳とするなど、高齢者の技能伝承も重視しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.8歳 18.3年 5,693,656円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.3%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用) 72.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保について


同社グループの事業は労働集約的な側面が強く、人材の確保が重要です。優秀な人材の採用・育成、適正配置、労働環境の整備が進まない場合、将来の成長が鈍化し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 重大交通事故による社会的信用低下について


デリバリー事業を中心に車両による営業を行っており、安全対策には努めていますが、重大な交通事故が発生した場合、社会的信用の低下や車両使用停止等の行政処分を受けるリスクがあります。これにより事業が中断すれば、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) ゴルフ場経営による影響について


グループ内にゴルフ場経営を行う企業があります。利用者数の減少や客単価の低下など、ゴルフ場経営を取り巻く環境が悪化した場合、同社グループ全体の業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) コスト上昇について


輸送事業において多量の燃料を使用しており、原油価格の動向により燃料費が高騰した場合、輸送コストが上昇し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。