※本記事は、IPSホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第29期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. IPSホールディングスってどんな会社?
SAP ERPの導入支援および保守を主力とし、中堅・準大手企業向けに特化した専業ベンダーです。
■(1) 会社概要
同社は1997年に神戸市で設立され、SAP R/3導入事業を開始しました。2013年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。2024年に持株会社体制移行の準備を開始し、2025年に現在の社名へ変更しています。
現在の従業員数は連結157名、単体155名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社で、第2位、第3位は個人株主です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社ファウンテン | 42.17% |
| 小池 博幸 | 3.01% |
| 高田 智士 | 2.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は渡邉 寛氏が務めています。社外取締役比率は25%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邉 寛 | 取締役社長(代表取締役) | 1985年コベルコシステム入社。1997年同社設立とともに代表取締役社長に就任し、2001年より有限会社ファウンテン取締役を兼任。現職。 |
| 赤松 洋 | 代表取締役専務 | 2007年同社入社。執行役員営業副本部長、常務執行役員SAPサービス事業部長などを経て、2025年より現職。事業会社アイ・ピー・エスの代表取締役社長も務める。 |
| 中川 朋子 | 取締役管理部長 | 1994年パソナ入社。1998年同社入社後、管理部マネージャーを経て、2021年より現職。事業会社アイ・ピー・エスの監査役も兼任。 |
社外取締役は、榎 卓生(税理士法人大手前綜合事務所代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ERP導入事業」および「保守その他事業」を展開しています。
■(1) ERP導入事業
SAP社のERPパッケージソフトウェア導入支援を行っています。特に年商100億円から1,000億円規模の中堅・準大手企業を主要ターゲットとし、専業ベンダーとして独自のテンプレート「EasyOne」を活用した導入サービスを提供しています。
収益は、顧客企業からのシステム導入支援サービス料やライセンス販売などから得ています。運営は主に同社および連結子会社が行っています。
■(2) 保守その他事業
ERP導入済みの顧客に対し、システムの保守運用、周辺アプリケーションの保守、機能改善のための追加開発、バージョンアップサービスなどを提供しています。また、顧客自身がERPを運用するための教育サービスや、業務改革支援も行っています。
収益は、顧客企業からの保守運用サービス料や追加開発費などから得ています。運営は主に同社および連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は25億円から37億円へと着実に成長しています。経常利益も2.7億円から3.6億円へと増加傾向にあり、利益率は10%前後で推移しています。当期純利益も安定して黒字を維持しており、全体として堅調な拡大基調にあります。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 25.0億円 | 27.3億円 | 28.3億円 | 31.3億円 | 37.3億円 |
| 経常利益 | 2.7億円 | 2.4億円 | 3.0億円 | 3.3億円 | 3.6億円 |
| 利益率(%) | 10.9% | 8.9% | 10.6% | 10.4% | 9.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 1.8億円 | 2.1億円 | 2.3億円 | 2.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も9.5億円から11.1億円へと伸長しています。売上総利益率は約30%の水準を維持しています。営業利益についても増益となっており、事業拡大に伴うコスト増を吸収しつつ、収益性を確保していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 31.3億円 | 37.3億円 |
| 売上総利益 | 9.5億円 | 11.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.4% | 29.6% |
| 営業利益 | 3.3億円 | 3.6億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 9.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.8億円(構成比24%)、支払手数料が1.1億円(同14%)を占めています。売上原価については、労務費と外注費が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
ERP導入事業は大型案件の寄与もあり大幅な増収となりました。保守その他事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| ERP導入事業 | 24.0億円 | 29.0億円 |
| 保守その他事業 | 8.0億円 | 8.0億円 |
| 連結(合計) | 31.0億円 | 37.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、銀行借入及び自己資金にて事業運営上必要な資金を調達しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や売上債権の減少等により、大幅な収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産及び有形固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出が主な要因となりました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.8億円 | 5.4億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -2.5億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -0.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様の驚きと満足、当社社員並びに株主の皆様の喜びを実現すること」を経営理念として掲げています。SAP ERPの導入支援を通じて顧客の経営革新やビジネス革新を支援し、技術・品質・納期・コスト・利益を徹底して追求することで、最大のサービスを提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
陳腐化した技術や付加価値の低いサービスではなく、先進的な技術を背景に同社にしかできないサービスを追求する姿勢を重視しています。新しい技術の習得や開発、従来の技術の研鑽、製品開発や標準化、教育などの研究開発が極めて重要であると考え、全社を挙げてこれらに取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は着実な健全経営を主眼とし、具体的な達成目標値は定めていませんが、以下の指標を運営の基準としています。
* 売上高経常利益率:15~20%
* 自己資本比率:70%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後はデリバリー体制および製品開発体制の強化として、150人体制への増強と組織改革を推進します。また、RPAやAI、IoTなどの新技術の研究開発に取り組み、実ビジネスの確立を目指します。特にSAPパブリッククラウドへの対応強化や、生成AIを活用した業務自動化の実践に注力していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最大の競争力の源泉と位置づけ、海外人材の活用や新卒採用を中心とした育成に注力しています。IT市場の人材難に対応するため、従業員満足度を高めてロイヤリティーを獲得し、定着率向上を図ることで充実した体制を構築する方針です。また、専門的・実践的な教育を実施し、自律的な人材育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 38.6歳 | 7.7年 | 6,852,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.3% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性技術者比率(27.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) SAP社との契約について
同社グループはSAP社とパートナー契約を締結し事業を行っていますが、この契約は非独占的であり、他社との競争が存在します。将来的に契約内容の変更や解消が生じた場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(2) SAP社製品への依存度について
売上高の大部分がERP導入事業であり、SAP社製品への依存度が高くなっています。同社製品の市場競争力の低下や新製品開発への対応遅れが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保について
事業拡大には優秀な技術者の確保と定着が不可欠ですが、必要な人材を十分に確保できない場合、事業展開が制約される可能性があります。特にERP導入事業の品質と開発力を維持するためには、技術者の養成と確保が重要課題となっています。



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