総医研ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

総医研ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。大阪大学発のバイオベンチャーとして、生体評価システムや健康補助食品、化粧品事業等を展開。直近の業績は、化粧品事業の減収等が影響し減収となるも、構造改革により営業赤字・経常赤字は大幅に縮小しています。


※本記事は、株式会社総医研ホールディングス の有価証券報告書(第31期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 総医研ホールディングスってどんな会社?


大阪大学医学部の研究成果をもとに設立されたバイオベンチャーです。エビデンスに基づく食品・化粧品開発や評価試験事業を展開しています。

(1) 会社概要


1994年に大阪大学発のバイオベンチャーとして設立され、2003年に東証マザーズへ上場しました。2006年に化粧品会社を買収し事業を拡大、2007年には持株会社体制へ移行し現社名となりました。その後、2017年に機能性素材開発を行う企業を買収し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結81名、単体9名です。筆頭株主は中国での事業展開におけるパートナー企業で、第2位は同社の創業者である取締役です。第3位には証券会社等の名義が並んでいます。

氏名 持株比率
GOLONG HOLDING CO.,LIMITED 17.68%
梶本修身 16.92%
INTERACTIVE BROKERS LLC 2.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は角田真佐夫氏です。社外取締役比率は約22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
角田真佐夫 代表取締役社長 2003年ロシュ・ダイアグノスティックス入社。2007年グループ入社後、ヘルスケアサポート事業部長等を経て、2024年9月より現職。
石神賢太郎 取締役会長 1996年日本エル・シー・エー入社。2005年グループ入社。子会社代表や同社代表取締役社長を経て、2024年9月より現職。
梶本修身 取締役(非常勤) 1994年同社設立・代表取締役就任。大阪大学医学博士。大阪市立大学大学院特任教授等を歴任し、東京疲労・睡眠クリニック院長等を兼務。
奥野貴人 取締役財務部長 2000年エコートレーディング入社。夢展望等を経て2020年同社入社。他社での経営管理職を経て2023年復帰し、2024年9月より現職。


社外取締役は、中島正和(ブライトリンクパートナーズ代表取締役)、山本博幸(公益財団法人日仏会館理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「生体評価システム」「ヘルスケアサポート」「化粧品」「健康補助食品」「機能性素材開発」事業を展開しています。

生体評価システム事業

バイオマーカーや生体評価システムの研究開発を行い、食品等の機能性・安全性に関する臨床評価試験を提供しています。主な顧客は食品企業や製薬企業です。

収益は、開発した技術を用いた評価試験の受託手数料や、バイオマーカーの使用権供与による対価等から得ています。運営は主に株式会社総合医科学研究所が行っています。

ヘルスケアサポート事業

医療機関ネットワークを活用し、特定保健指導や特定健康診査の受診勧奨サポート、糖尿病重症化予防サービスなどを提供しています。主な顧客は健康保険組合です。

収益は、健康保険組合等から受託する各種健康管理支援サービスの業務委託料から得ています。運営は主に株式会社総合医科学研究所が行っています。

化粧品事業

プラセンタエキスを用いた独自ブランドの化粧品を展開し、通信販売および卸売りを行っています。主な顧客は一般消費者および小売・卸売業者です。

収益は、化粧品等の商品販売代金から得ています。運営は主に株式会社ビービーラボラトリーズが行っています。

健康補助食品事業

抗疲労プロジェクトから生まれた「イミダペプチド」を主力とする健康補助食品を販売しています。主な顧客は一般消費者です。

収益は、健康補助食品等の商品販売代金から得ています。運営は主に日本予防医薬株式会社が行っています。

機能性素材開発事業

ラクトフェリン等の機能性素材の開発・販売や、医薬品開発を行っています。主な顧客は健康食品メーカー等です。

収益は、機能性素材の販売代金や技術供与による対価から得ています。運営は主に株式会社NRLファーマが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は減少傾向にあり、利益面では経常損失および当期純損失が続いています。ただし、直近では構造改革の推進により赤字幅は大幅に縮小しており、収益性の改善が進みつつあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 89億円 93億円 81億円 52億円 48億円
経常利益 9.2億円 13億円 7.3億円 -5.7億円 -1.3億円
利益率(%) 10.3% 13.4% 9.0% -11.0% -2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.6億円 8.1億円 4.5億円 -6.6億円 -2.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の削減が進んだことで、営業損失および経常損失は前期と比較して大幅に改善しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 52億円 48億円
売上総利益 25億円 24億円
売上総利益率(%) 48.1% 49.7%
営業利益 -6.1億円 -1.4億円
営業利益率(%) -11.8% -2.8%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が5億円(構成比22%)、給料手当が5億円(同18%)を占めています。売上原価においては、商品仕入高や製造費用等が計上されています。

(3) セグメント収益


主力の健康補助食品事業は広告戦略の転換等により減収となりましたが、利益率は改善し黒字化しました。化粧品事業は減収ながらも費用抑制で黒字転換しました。一方、ヘルスケアサポート事業は増収増益と好調に推移しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
生体評価システム 2億円 2億円 -0.7億円 0.1億円 3.5%
ヘルスケアサポート 6億円 7億円 0.9億円 1.1億円 15.5%
化粧品 15億円 15億円 -1.5億円 0.3億円 1.8%
健康補助食品 25億円 21億円 -1.6億円 0.9億円 4.3%
機能性素材開発 3億円 3億円 -0.1億円 -0.3億円 -10.1%
連結(合計) 52億円 48億円 -6.1億円 -1.4億円 -2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスであり、本業で得た資金で投資や財務活動を行っている「健全型」のパターンを示しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -9億円 6億円
投資CF -0.1億円 -4億円
財務CF -3億円 -0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-3.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「医科学の研究成果を事業化し、人々の健康で安全な生活の実現に寄与する」を企業理念として掲げています。医学分野における大学の研究成果を社会実装することで、人々の健康で安全な暮らしを実現し、医療費の抑制や生活快適性の向上等に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


大学発ベンチャーとして、科学的根拠(エビデンス)を重視する文化があります。高度な医学的背景と研究開発力、医師や大学とのネットワークを強みとし、中立性・公益性を保ちながら事業を展開しています。研究成果に基づき、正確な健康情報や適切な商品を提供することに価値を置いています。

(3) 経営計画・目標


企業としての成長過程にあるため、安定的かつ継続的な成長を確保するための事業基盤強化と、事業規模拡大による企業価値向上を目標としています。直近では「構造改革」を進め、収益性改善に取り組むとともに、将来の持続的成長に向けた研究開発や新サービス構築への先行投資を実施しています。

(4) 成長戦略と重点施策


セルフメディケーションを支援する「総合ヘルスケアプラットフォーム」の構築に注力しています。具体的には、抗疲労領域やフェムテック領域への研究開発投資、医療DXを中心としたサービスの展開、戦略的なM&Aや業務提携を推進しています。また、事業ポートフォリオの見直しを行い、経営資源をヘルスケア領域へ集中させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


医学・薬学等の専門性の高い人材に加え、マーケティングや管理部門など幅広い人材の最適化を図っています。「抗疲労」を事業テーマとする企業として、従業員自身も健康でやりがいを持って働ける環境づくりを重視し、ワークライフ・バランスの充実や健康増進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 46.7歳 4.1年 8,164,537円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性従業員の育児休業取得率(33.3%)、健康診断における人間ドック受診率(71.7%)、有給休暇取得率(68.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 評価試験事業の受注環境

評価試験事業の受注は、食品・製薬企業におけるトクホや機能性表示食品等の新規開発動向に依存します。昨今は一般的な健康表示の開発が一巡し、新規案件が減少傾向にあります。顧客企業の経営環境や戦略変更により、この傾向が続いた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 研究開発の不確実性

バイオマーカーや生体評価システム、独自製品の開発には多額の費用と時間がかかります。必ずしも事業化や収益化に成功する保証はなく、研究領域の拡大等により研究開発費が増加した場合、業績に影響を与える可能性があります。また、大学発の研究成果を利用するビジネスモデルであるため、大学との関係性変化もリスク要因となります。

(3) 特定人物への依存

代表取締役社長の角田真佐夫氏は事業運営の中心的な役割を担っており、創業者の梶本修身氏はアカデミアとのネットワーク構築等で重要な役割を果たしています。組織的対応の強化を進めていますが、何らかの理由でこれらの人物が業務遂行困難となった場合、事業戦略や経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 化粧品事業の縮小・撤退

連結子会社ビービーラボラトリーズが行う化粧品事業は、中国市場への依存度が高く、事業環境の悪化を受けて2026年3月末までに事業活動を終了する予定です。国内市場向けの一部事業は他子会社へ移管されますが、事業終了に伴う手続きや海外販売の動向等が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。