※本記事は、ウェルネット株式会社 の有価証券報告書(第43期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウェルネットってどんな会社?
マルチペイメントサービスや交通業界向けDXソリューションを提供する、決済・認証プラットフォーム企業です。
■(1) 会社概要
1983年に設立され、1996年に現社名へ変更、1997年よりコンビニ収納代行サービスを開始しました。2004年にJASDAQ市場へ上場し、その後東証二部、一部を経て、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行、現在はスタンダード市場を選択しています。2024年にはQRコードを活用したデジタル乗車券システム等の提供を開始しています。
同社(単体)の従業員数は131名です。筆頭株主は同社の主要取引銀行である三井住友銀行で、第2位は中小企業の育成・投資を行う東京中小企業投資育成、第3位は同社代表取締役社長の宮澤一洋氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社三井住友銀行 | 4.88% |
| 東京中小企業投資育成株式会社 | 3.26% |
| 宮澤 一洋 | 2.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役執行役員社長は宮澤一洋氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮澤 一洋 | 代表取締役執行役員社長 | 1983年東洋計器入社。1996年同社入社、取締役営業部長などを経て2009年より現職。 |
| 加藤 達也 | 取締役執行役員本社営業部長 | 1988年住友銀行(現三井住友銀行)入行。同行トランザクションバンキング営業部長などを経て2021年同社入社。2024年より現職。 |
| 吉元 啓介 | 取締役執行役員西日本支店長兼本社社長室長 | 1986年三井物産入社。ティーガイア常務執行役員などを経て2023年同社入社。2024年より現職。 |
| 東原 幸生 | 取締役執行役員管理部長 | 1982年北洋相互銀行(現北洋銀行)入行。同行常務取締役、交洋不動産社長などを経て2023年同社入社。2024年より現職。 |
| 中條 洋次 | 取締役執行役員サービス開発部長 | 1988年富士銀行(現みずほ銀行)入行。日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー常務などを経て2024年同社入社し現職。 |
社外取締役は、花澤隆(元NTTアドバンステクノロジ社長)、浦田祥範(北海道ベンチャーキャピタル社長)、山本・ティレル・由美(Nippon Investment Bespoke Research UK Ltd代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「決済・認証事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) マルチペイメントサービス・送金サービス
請求書や払込票を用いた代金回収(ビリング)、およびペーパーレスでの代金回収(E-ビリング)等の決済サービスを提供しています。また、事業者から消費者への送金を代行する送金サービスも展開しており、通信販売や各種会費、航空券やバスチケットの購入代金など、多様な決済ニーズに対応しています。
収益は、事業者から受け取る初期設定料、月額基本料金、および決済ごとの手数料から構成されています。送金サービスでは送金手数料等が収益源となります。運営は主にウェルネットが行っています。
■(2) 交通系DXソリューション・電子マネーサービス
スマホアプリ「バスもり!」やクラウドサービス「アルタイルトリプルスター」等により、バス・鉄道チケットの予約・購入・発券を電子化するソリューションを提供しています。また、サーバー型電子マネー「支払秘書」により、コンビニ等に行かずに公共料金や通信料金の支払いを可能にするサービスも展開しています。
収益は、アプリやシステムの利用料、決済手数料等から構成されています。交通事業者や電力会社等の導入企業から対価を受け取るモデルです。運営は主にウェルネットが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年6月期は前期比で増収となっています。利益面でも、経常利益率が10%を超える高水準を維持しており、直近では15%を超える利益率を記録するなど、収益性の向上が見られます。当期純利益も増益基調で推移しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 88.4億円 | 89.5億円 | 94.2億円 | 101.3億円 | 109.2億円 |
| 経常利益 | 6.7億円 | 7.5億円 | 9.4億円 | 12.2億円 | 16.6億円 |
| 利益率(%) | 7.5% | 8.4% | 9.9% | 12.1% | 15.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.9億円 | 5.3億円 | 6.4億円 | 8.4億円 | 10.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上原価も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益率は前期の12.1%から13.8%へと改善しました。コストコントロールを行いつつ事業拡大を実現していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 101.3億円 | 109.2億円 |
| 売上総利益 | 21.4億円 | 25.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.1% | 23.1% |
| 営業利益 | 12.2億円 | 15.0億円 |
| 営業利益率(%) | 12.1% | 13.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が3.4億円(構成比33.8%)、役員報酬が0.7億円(同7.2%)を占めています。売上原価においては、収納代行手数料が67.0億円(売上原価合計の79.8%)と大半を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「決済・認証事業」の単一セグメントです。主力サービスの「マルチペイメントサービス」「送金サービス」「アルタイルトリプルスター」の需要拡大に加え、投資事業組合運用益なども寄与し、全体の業績を押し上げました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 決済・認証事業 | 101.3億円 | 109.2億円 |
| 連結(合計) | 101.3億円 | 109.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ウェルネットは、営業活動を通じて資金を獲得し、事業運営の基盤を強化しています。投資活動においては、将来の事業展開を見据えた資金の支出が見られます。また、財務活動では、株主への還元や自己株式の取得を通じて、資本構成の最適化を図っています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26.4億円 | 24.1億円 |
| 投資CF | 3.3億円 | -8.3億円 |
| 財務CF | -3.9億円 | -7.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「安全・安心・快適・便利を最大効率で実現する。」ことを経営理念として掲げ、様々な仕組みをITで実現することを目指しています。また、「社員に自身の可能性を試すフィールドを提供する。」ことも掲げ、企業価値の継続的な向上を図っています。
■(2) 企業文化
今後5年間の経営計画として「『Think Wild.』~ 新規サービスを北海道から生み出し、日本のDX化けん引企業に~」を策定しています。また、変化の激しい決済市場において、かつてコンビニ決済という斬新なアイデアで現在の地歩を確立したように、強い思いを持ってチャレンジを続ける姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年6月期の業績予想として、高付加価値サービスの普及拡大に注力し、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:115億円
* 営業利益:16.8億円
* 経常利益:17.0億円
* 当期純利益:11.0億円
■(4) 成長戦略と重点施策
現在提供しているサービスの収益最大化と、電子マネー・認証関連の新規事業育成に注力する方針です。具体的には、日本通信との協働による電子マネーの展開、交通事業者向けIT化プロジェクト「アルタイルトリプルスター」の利用率拡大、非対面決済「マルチペイメントサービス」の機能拡充などを推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性を含む人材の育成および社内環境整備に関して、女性従業員がいきいきと働き、様々なフィールドで継続的に活躍できる職場環境づくりやワーク・ライフ・バランス実現に向けた支援策を推進しています。育児・介護等に関する両立支援制度の整備や女性従業員の積極的な採用・登用、残業時間の抑制などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 37.7歳 | 8.2年 | 5,406,989円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法令による規制
決済代行事業は「割賦販売法」、送金サービス等は「資金決済に関する法律」等の規制下で運営されています。今後これらの法令等が改正され、規制強化等が実施された場合、事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 収納代行預り金に関するリスク
マルチペイメントサービスでは、事業者に代わり収納した代金を一時保管しています。これらは分別管理されていますが、ペイオフ等に関する金融行政の方針変更により預金保護の対象外となった場合、保管方法や回収方法の変更等が必要となり、事業運営や業績に影響が生じる可能性があります。
■(3) コンビニインフラへの依存
コンビニ決済サービスは、コンビニ各社のKIOSK端末等が前提となっています。コンビニ各社が端末やサービス提供方法を変更した場合、対応コストの発生等により業績に影響を与える可能性があります。
■(4) システムトラブル及び事務リスク
システム停止は重大な問題となるため、設備・回線の冗長化や24時間監視体制を講じています。しかし、自然災害、サイバー攻撃等によるシステム障害や、事務リスクによる損害賠償請求等が発生した場合、社会的信用の失墜を含め、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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