手間いらず 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

手間いらず 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

手間いらずは東証スタンダード上場のIT企業です。複数の宿泊予約サイトを一元管理する「TEMAIRAZU」シリーズを中心としたアプリケーションサービス事業と、比較サイト「比較.com」を運営するインターネットメディア事業を展開しています。直近の業績は、インバウンド需要を背景に増収増益で推移しています。


※本記事は、手間いらず株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 手間いらずってどんな会社?


宿泊施設向けの予約管理システム『TEMAIRAZU』と、比較サイト『比較.com』を運営する企業です。

(1) 会社概要


同社は2003年に比較サイトの運営を目的として設立され、2006年にマザーズへ上場しました。2009年にアプリケーションサービス事業を吸収合併で開始し、現在の主力事業基盤を確立しました。その後、2017年に現社名である手間いらずへ商号変更を行い、事業拡大を続けています。

現在は連結子会社を持たない単体組織で、従業員数は41名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の資産管理会社である68kで、第2位は代表取締役社長の渡邉哲男氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者が過半数の株式を保有するオーナー系企業としての側面を持っています。

氏名 持株比率
68k 52.40%
渡邉 哲男 9.23%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は渡邉哲男氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
渡邉 哲男 代表取締役社長 1998年CSKベンチャーキャピタル入社。2003年8月同社設立に伴い代表取締役社長に就任し、現在に至る。
中野 寿男 取締役 SMBC日興証券、Study Valley、Wovn Technologiesを経て2022年入社。経営管理部長などを歴任し2025年より現職。


社外取締役は、鈴木一夫(弁護士)、長又義郎(元三菱信託銀行)、山本祐紀(税理士)、洲崎智広(元フォーシーズホールディングス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アプリケーションサービス事業」、「インターネットメディア事業」を展開しています。

(1) アプリケーションサービス事業


ホテルや旅館などの宿泊施設に対し、宿泊予約サイトコントローラー『TEMAIRAZU』シリーズを提供しています。これは、楽天トラベルやBooking.comなど複数の宿泊予約サイトおよび自社予約エンジンの在庫・料金・予約情報を一元管理できるサービスです。

収益は、主に月額固定の基本利用料・オプション利用料と、予約数に応じて課金される変動料金で構成されています。運営は同社が行っています。

(2) インターネットメディア事業


比較サイト『比較.com』を中心とした広告媒体の運営を行っています。ショッピング、プロバイダー、旅行、資産運用など多様な分野の商品・サービス情報を、インターネットユーザーのニーズに合わせて整理し提供しています。

収益は、主に月額固定の広告収入と、資料請求や予約などの成果に応じた成果報酬型の広告収入で構成されています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定的に成長を続けており、毎期増収を達成しています。特筆すべきは利益率の高さで、経常利益率は70%を超える非常に高い水準を維持しています。直近においてもインバウンド需要の回復等を背景に業績を伸ばしており、高収益体質を維持しながら順調に拡大しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 16.1億円 16.3億円 18.1億円 20.2億円 21.9億円
経常利益 11.5億円 11.8億円 13.3億円 14.8億円 16.2億円
利益率(%) 71.3% 72.3% 73.7% 73.1% 74.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.6億円 7.8億円 8.7億円 9.8億円 10.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を見ると、売上高の増加に伴い、各利益項目も順調に増加しています。売上総利益率、営業利益率ともに極めて高い水準で推移しており、効率的な事業運営が行われていることがわかります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 20.2億円 21.9億円
売上総利益 18.2億円 19.4億円
売上総利益率(%) 89.9% 88.8%
営業利益 14.8億円 16.1億円
営業利益率(%) 73.0% 73.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.2億円(構成比37%)、役員報酬が0.4億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては経費が1.5億円(構成比60%)、労務費が1.0億円(同40%)となっており、システム維持管理に関わる費用が主となっています。

(3) セグメント収益


アプリケーションサービス事業は、訪日旅行者の増加による宿泊予約数の伸長を受け、月額変動収入および固定収入が増加し、増収増益となりました。一方、インターネットメディア事業は検索エンジンのアルゴリズム変更等の影響によりサイトトラフィックが減少し、減収減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
アプリケーションサービス事業 20.0億円 21.7億円 16.1億円 17.7億円 81.5%
インターネットメディア事業 0.2億円 0.1億円 0.1億円 0.0億円 13.7%
連結(合計) 20.2億円 21.9億円 14.8億円 16.1億円 73.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で獲得したキャッシュを元手に、配当支払いや自己株式取得といった株主還元を積極的に行っている「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。無借金経営であり、財務基盤は盤石です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 9.5億円 10.6億円
投資CF -0.1億円 0億円
財務CF -2.0億円 -10.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は93.8%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る高水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「世界中のモノやコトとの連携で人々の手間を無くし、それによって創出されるたくさんの出会いや時間などが、社会を豊かにしていくことを目指す」を経営理念として掲げています。ITの力を活用して社会の非効率を解消し、広く有用な存在であり続け、社会と共存する企業であることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は小規模組織であることを活かし、少数精鋭の体制で運営されています。従業員一人ひとりがユーザー視点でニーズを汲み取り、企画からビジネスへの昇華までを行える知識と経験、ビジネスセンスを持つことが求められます。個人の感性や経験が事業のスピードや質に直結するため、優秀な人材の確保と育成を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


経営規模に関する指標として「売上高」、収益性に関する指標として「売上高営業利益率」を特に重視しています。人件費や開発費用のバランスを考慮しながら投資を行い、急激な利益率の変化がないようにコントロールしつつ、高付加価値製品の提供による株主価値の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、主力製品の機能強化と営業体制の拡充を重点施策としています。具体的には、新機能開発や外部システムとの連携強化によるサービス価値の向上、および教育研修の充実やツール整備による営業力の強化を進めています。また、インバウンド需要等の市場動向を注視し、セキュリティ対策や人材育成にも注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ユーザー視点でニーズを捉えビジネス化できる人材を求めており、個人の能力が事業に大きく影響すると認識しています。そのため、成果連動型の給与体系や教育研修の充実に力を入れています。採用ではビジネス経験重視の中途採用に加え、将来の幹部候補としての新卒採用も積極的に行い、優秀な人材の確保と育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 34.0歳 4.3年 5,194,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均勤続年数(4.3年)、平均年齢(34.0歳)、開発組織における外国籍比率(41%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネットおよび広告市場の変動リスク

同社事業はインターネットの安定的利用を前提としており、災害等によるインフラ寸断や技術革新による代替サービスの出現がリスクとなります。また、インターネット広告市場は景気変動の影響を受けやすく、広告出稿の減少が業績に影響を与える可能性があります。

(2) 宿泊予約サイトコントローラー市場の競合リスク

主力事業であるサイトコントローラー市場には複数の競合が存在します。海外企業の参入や異業種からの参入、競合他社のシェア拡大などにより競争が激化した際、収益力の低下や広告宣伝費の増加を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) システム障害およびセキュリティリスク

事業基盤であるITシステムにおいて、サイバー攻撃、情報漏洩、システム障害が発生した場合、サービス提供が困難になる恐れがあります。これに備え冗長化やセキュリティ対策を行っていますが、万一の事態には信用低下や損害賠償等により業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 小規模組織における人材リスク

同社は少数精鋭の組織体制をとっており、人材の確保や育成が計画通り進まない場合や、既存の重要人材が流出した場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。業務のマニュアル化等は進めていますが、一時的な大量欠員等が生じた場合の影響は大きくなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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