※本記事は、株式会社タウンニュース社 の有価証券報告書(第45期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タウンニュース社ってどんな会社?
神奈川県・東京都多摩地域で無料の地域情報紙を発行し、広告枠販売を主軸に地域密着型の事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1977年に前身となる会社が設立され、神奈川県秦野市でタウンニュース秦野版の発行を開始しました。2006年にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、2010年には紙面と連動したWeb版のサービスを開始しました。2016年にイベント情報サイトを開設するなどデジタル化を推進し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。
2025年6月30日時点で、同社は単体のみで事業を行っており、従業員数は191名です。大株主については、筆頭株主は同社代表取締役が役員を務める企業、第2位は個人株主、第3位は情報通信サービスなどを手掛ける上場事業会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| カネマス | 40.21% |
| 大津 勝美 | 10.08% |
| 光通信 | 7.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役会長兼社長は宇山知成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宇山 知成 | 代表取締役会長兼社長 | 1999年同社入社。取締役、代表取締役社長を経て、2018年より代表取締役会長兼社長。2023年4月より現職。 |
| 小野 淳 | 取締役執行役員統括監理役員兼未来戦略HR室室長 | 1992年同社入社。執行役員横浜中央支社支社長、経営企画室室長、統括監理役員などを歴任。2025年4月より現職。 |
| 露木 敏博 | 取締役執行役員プロモーション事業部門監理役員 | 1991年同社入社。執行役員秦野支社支社長、企画営業部部長、PPP戦略室室長などを歴任。2024年7月より現職。 |
| 北原 健祐 | 取締役執行役員タウンニュース事業部門監理役員横浜中央支社支社長 | 2000年同社入社。経営企画室室長、事業開発室室長、横浜北支社支社長などを経て、2023年4月より現職。 |
社外取締役は、秋山純夫(有限会社一の家代表取締役社長)、岸井幸生(岸井幸生公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社は「タウンニュース事業」の単一セグメントですが、事業内容は主に「タウンニュース掲載」と「その他」に分類されます。
■(1) タウンニュース発行事業
神奈川県全域および東京都町田市、八王子市、多摩市において、行政区単位を基本とした地域情報紙「タウンニュース」を発行しています。地域の政治、経済、社会、文化等の身近な情報を掲載し、全36地区36版を展開しています。読者は無料で購読でき、新聞折込やポスティングによって各家庭や事業所に配布されます。
収益は主に、紙面の広告枠販売による広告料収入です。広告枠はクライアント(広告主)への直接販売および広告代理店経由で販売されます。運営は同社が行っており、紙面の印刷は外部業者に委託し、折込配送業者を通じて配布される体制をとっています。
■(2) その他(Web・プロモーション事業等)
紙面発行以外の領域として、Web版タウンニュースや政治家データベースサイト「政治の村」、地域情報サイト「RareA」などのデジタルメディア運営を行っています。また、行政や地元事業者と連携した地域プロデュース事業、公共施設の指定管理業務(PPP事業)、イベントプロモーション、各種出版物の制作なども手掛けています。
収益源は、Webサイトへの広告掲出料、プロモーション業務の受託料、指定管理料などです。これらの事業も主に同社が運営しており、地域の情報をビジネスに変える「総合情報企業」への転換を目指して、非紙面事業の拡大を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台後半で推移していましたが、直近では微減傾向にあります。経常利益は2024年6月期まで増加傾向にありましたが、2025年6月期は減益となりました。利益率は比較的高水準を維持しており、10%台後半から半ばで推移しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 29億円 | 32億円 | 37億円 | 37億円 | 37億円 |
| 経常利益 | 2.9億円 | 4.6億円 | 6.2億円 | 6.9億円 | 5.9億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 14.0% | 16.8% | 18.4% | 16.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 3.1億円 | 4.3億円 | 4.9億円 | 3.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益率は高い水準を維持しています。一方、営業利益率は前期と比較して低下しました。これは、売上の減少に加え、人件費や諸経費の増加による販管費の負担増が影響していると考えられます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 37億円 | 37億円 |
| 売上総利益 | 25億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 66.6% | 67.2% |
| 営業利益 | 5.8億円 | 4.6億円 |
| 営業利益率(%) | 15.4% | 12.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比48%)、その他経費が4億円(同19%)を占めています。売上原価においては、経費(外注費等)が5億円(構成比44%)、材料費が5億円(同43%)を占めています。
■(3) セグメント収益
タウンニュース掲載売上は紙面広告の出稿鈍化等により減少しましたが、その他売上は指定管理事業やデジタル事業等の伸長により増加しました。全体としては、紙面事業の減少を非紙面事業の成長が一部補完する形となっています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| タウンニュース掲載売上 | 29億円 | 27億円 |
| その他 | 8.4億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 37億円 | 37億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しています。投資活動によるキャッシュ・フローもプラスとなっていますが、これは定期預金の払戻や有価証券の償還による収入が支出を上回ったためです。財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払い等によりマイナスとなっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.3億円 | 4.0億円 |
| 投資CF | -3.6億円 | 2.4億円 |
| 財務CF | -0.9億円 | -1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.9%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は88.2%で市場平均(同48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「地域に密着したアドコミ(アドバタイジング+コミュニケーション)を確立する」を事業コンセプトとしています。地域の生活者にとって広告も街のニュースであると考え、広告を通じて地域とのコミュニケーションを図り、地域社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
地域社会への貢献と発展を基本方針としています。創業以来、地域の隅々まで入り込む業務を通じて多様な情報や人的ネットワークを蓄積しており、これらを重要な経営資源と位置付けています。地域密着型の姿勢を重視し、行政や市民、地元事業者との協同による地域プロデュースなどを通じて、地域とともに成長する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は第2次「中期経営計画」において、「地域情報紙も発行する総合情報企業」への転換を掲げています。紙面事業の深耕に加え、プロモーション事業の拡大や経営効率の向上を通じて、売上規模と利益率の向上を目指しています。具体的な数値目標の達成に向け、事業活動を展開しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「総合情報企業」への進化に向け、既存紙面の媒体価値向上とエリア拡大に加え、デジタルメディアとのシナジー強化、地域プロデュースおよびPPP(公民連携)事業の展開を重点施策としています。また、人材の確保・育成のための「未来戦略HR室」の設置や、新聞購読率低下への対応としてWeb版やLINE等による複合的な情報発信を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
少子化の中で質の高い人材を確保するため、新卒・中途採用を積極的に行い、教育・研修の充実に注力しています。戦略的な推進組織として「未来戦略HR室」を設置し、採用から育成までの一貫した施策を展開しています。また、働き方改革を進め、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 39.8歳 | 13.8年 | 6,480,349円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男女賃金差異については、同社は常用労働者数が101人以上300人以下であり、法律の規定により公表項目として選択していないため、記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) タウンニュースの発行遅延や不発行
災害、伝染病、システム障害、または委託先の事故等により紙面の発行が遅延または不能となった場合、広告収入の減少や信用の失墜を招く可能性があります。これに対し、サーバーの外部委託やテレワークの実施等の対策を講じています。
■(2) 経済情勢・市場環境の変動
地域経済の悪化や大口顧客の方針転換による広告収入の減少、および用紙代等の原材料価格の高騰は、業績に影響を与える可能性があります。顧客基盤の拡大や用紙選定の最適化、デジタル配信の強化により対応を進めています。
■(3) デジタルメディアによる紙媒体への影響
デジタルメディアの台頭により紙媒体の読者や広告が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。地域密着の紙面づくりによる差別化や、Web版・LINE等のデジタル展開、非メディア事業の推進により、「総合情報企業」への構造改革を図っています。
■(4) 新規発行エリアの収益化
新規エリアへの創刊初期は先行投資が必要となり、広告収入が伸び悩み黒字化が遅れた場合、業績に影響を与える可能性があります。優秀な人材の投入やノウハウの活用により赤字期間の短縮を図るとともに、戦略的な発行継続を判断しています。



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