※本記事は、テックファームホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第34期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テックファームホールディングスってどんな会社?
同社は、先端技術を活用したシステム受託開発を行うICTソリューション事業と、海外流通支援事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1991年にイベント企画会社として設立され、1998年にテックファームへ商号変更しソフトウエア開発へ転換しました。2008年にヘラクレス市場(現・東証グロース)へ上場を果たし、2015年には持株会社体制へ移行しています。2019年にはWeAgriを子会社化し、クロスボーダー流通プラットフォーム事業を本格化させました。
2025年6月30日現在、連結従業員数は317名、提出会社(単体)は27名です。筆頭株主は事業会社のTOKAIコミュニケーションズで、第2位は元社長の筒井雄一朗氏、第3位は個人株主の小林正興氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社TOKAIコミュニケーションズ | 9.00% |
| 筒井 雄一朗 | 6.61% |
| 小林 正興 | 3.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名、計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長CEOは永守秀章氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永守 秀章 | 代表取締役社長CEO | ドレスナー証券等を経て2003年サイバード入社。2011年同社取締役兼CFO、2013年取締役副社長CFOを経て、2015年7月より現職。WeAgri社長も兼務。 |
| 千原 信悟 | 代表取締役会長 | Federal Express等を経て2004年同社入社。経営管理部長、CFO、副社長を経て2010年社長就任。2013年社長CEOを経て、2015年7月より現職。 |
| 筒井 雄一朗 | 取締役 | キヤノン等を経て1998年同社社長就任。2009年会長、エクシーダ社長等を経て、2017年9月より現職。Prism Solutions Inc.社長を兼務。 |
社外取締役は、小夫みのり(税理士)、大井哲也(弁護士)、田口浩介(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ICTソリューション」「クロスボーダー流通プラットフォーム」事業を展開しています。
■(1) ICTソリューション
先端技術を活用した業務システムや基幹システムの受託開発、運用保守などを提供しています。主な顧客はDX推進を目指す企業であり、AIやXR(VR/AR/MR)等の技術を用いた高付加価値ソリューションや、3D技術を活用した開発などを手掛けています。
収益は、顧客企業からのシステム開発受託費や運用保守費等から得ています。運営は主にテックファーム、米国子会社のPrism Solutions Inc.、シンガポール子会社のTechfirm Asia Pte. Ltd.が行っています。
■(2) クロスボーダー流通プラットフォーム
食品や美容品等の日本産品を海外へ輸出・卸売するほか、輸出に関するコンサルティング業務を行っています。シンガポール市場を拠点に、直営店舗やECサイトを通じた販売、デジタルマーケティング支援などを展開し、日本企業の海外進出を支援しています。
収益は、商品の販売収入や輸出支援・マーケティング支援に係るコンサルティング料等から得ています。運営は主に株式会社WeAgriが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は50億円台から60億円台で推移していましたが、当期は大型案件の寄与により過去最高の67.1億円へ急伸しました。経常利益も売上増に伴い大幅に改善し、利益率も10%を超える水準まで上昇しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 60.0億円 | 55.2億円 | 57.7億円 | 50.7億円 | 67.1億円 |
| 経常利益 | 2.1億円 | -2.1億円 | 1.9億円 | 2.6億円 | 7.6億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | -3.7% | 3.2% | 5.1% | 11.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5.8億円 | 1.0億円 | 0.3億円 | -0.1億円 | -1.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は30.2%から33.0%へ改善しました。販管費も増加していますが、増収効果が上回り、営業利益率は4.7%から11.2%へと大きく向上しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 50.7億円 | 67.1億円 |
| 売上総利益 | 15.3億円 | 22.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.2% | 33.0% |
| 営業利益 | 2.4億円 | 7.5億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 11.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.1億円(構成比35%)、役員報酬が1.4億円(同9%)を占めています。積極的な採用活動や人材への投資により人件費が増加傾向にあります。
■(3) セグメント収益
ICTソリューション事業は大型開発案件の受注と順調な進捗により大幅な増収となりました。クロスボーダー流通プラットフォーム事業も、シンガポールでの販促強化等により増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| ICTソリューション | 47.6億円 | 62.0億円 |
| クロスボーダー流通プラットフォーム | 3.1億円 | 5.1億円 |
| 連結(合計) | 50.7億円 | 67.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.1億円 | 3.3億円 |
| 投資CF | 0.5億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -0.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「最先端テクノロジーと創造力で、産業の変革をリードします。」をミッションとして掲げています。ITの発展に寄与すべく前例のない技術開発にも果敢に挑戦し、社員の成長と顧客の価値創造の実現を通じて社会貢献に努めることを経営方針としています。
■(2) 企業文化
「ITの力を、社会に役立てる」という志を大切にし、すべてのステークホルダーから信頼される企業を目指しています。また、「働き方の多様性」を尊重し、リモートワークや時短勤務の制度化などを通じて、エンジニア等の多様な人材が能力を長期にわたり発揮できる環境構築を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
グループとして売上高100億円を目指す過程にあり、収益性と継続的成長の実現を経営目標としています。2026年6月期の連結業績見通しとして、以下の数値を掲げています。
* 売上高:72億円
* 営業利益:6億円
* 経常利益:5.8億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:3.3億円
■(4) 成長戦略と重点施策
ICTソリューション事業では大型開発案件の獲得とAI活用の推進、先端技術(XR等)でのプレゼンス向上を図ります。クロスボーダー流通プラットフォーム事業では、プラットフォームの認知向上と国内営業の強化を進めます。また、成長加速のためM&Aや資本業務提携も積極的に検討する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
先端技術や大型案件を担えるエンジニアの獲得と育成を重要課題と認識しています。ハイレイヤーエンジニアの採用強化や報酬制度の見直し、体系的な教育研修プログラムへの投資を行うほか、フルリモートや時短勤務などの多様な働き方を推進し、エンゲージメントとウェルビーイングの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 41.6歳 | 7.9年 | 6,308,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.3% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
国内外の経済情勢、顧客のIT投資動向、技術革新のスピード、価格競争の激化などが業績に影響を与える可能性があります。顧客ニーズの変化や技術革新への対応が遅れた場合、事業展開や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定事業への依存度
ICTソリューション事業の売上高が高い割合を占めており、同事業の環境変化により大規模な減衰が生じた場合、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、クロスボーダー流通プラットフォーム事業の拡大や自社ソリューション開発による多角化を進めています。
■(3) プロジェクト管理
大型案件の増加に伴い、緻密なプロジェクト管理が求められています。不採算プロジェクトの発生や納期遅延による損害賠償が生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、見積精度の向上、リスク管理の徹底、品質管理体制の強化等に努めています。
■(4) 人財の確保及び育成
事業成長には優秀なエンジニアの確保と育成が不可欠です。人材確保が計画通り進まない場合や、人材流出、生産性低下が生じた場合、中長期的な成長や業績に影響を及ぼす可能性があります。ブランディング強化、教育制度の整備、職場環境の充実等により対策を講じています。



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