※本記事は、株式会社キャンバス の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キャンバスってどんな会社?
独自の創薬アプローチで抗がん剤の研究開発を行う創薬ベンチャーです。
■(1) 会社概要
同社は2000年に愛知県で設立され、2002年に本社を静岡県沼津市に移転しました。2009年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たし、2022年の市場区分見直しに伴いグロース市場へ移行しています。独自のスクリーニング法により創出された抗がん剤候補化合物「CBP501」の開発を中心に事業を展開しています。
2025年6月30日現在、同社(単体)の従業員数は14名です。大株主の構成は、筆頭株主から第3位までがいずれも証券会社となっており、特定の大株主による支配色が薄く、市場を通じた株式保有が中心となっていることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天証券 | 2.21% |
| SBI証券 | 1.18% |
| マネックス証券 | 0.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は河邊 拓己氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河邊 拓己 | 代表取締役社長 | 医師、医学博士。京都大学ウイルス研究所助手、ワシントン大学博士研究員等を経て、名古屋市立大学医学部分子医学研究所助教授に就任。2001年同社取締役、2003年より現職。 |
| 加登住 眞 | 取締役最高財務責任者兼 経営企画室長 | 日本合同ファイナンス(現ジャフコグループ)入社。エムビーエルベンチャーキャピタル取締役を経て、2000年同社取締役に就任。2009年より最高財務責任者を務める。 |
| 坂本 一良 | 取締役管理部長 | チェースマンハッタン銀行等を経て、NIFコーポレート・マネジメント取締役。2008年同社入社。経営企画室長を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、小宮山 靖行(社会保険労務士法人みくりや社中代表)、白川 彰朗(インテリジェント・キャピタルゲイト代表取締役)、古田 利雄(弁護士法人クレア法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■医薬品事業
同社は、抗がん剤の基礎研究から早期臨床開発、後期臨床開発に取り組む創薬企業です。独自の創薬コンセプトに基づき、医薬品候補化合物の選別や基礎データの収集・解析を行うほか、臨床試験の実施を通じて新薬承認を目指しています。主力パイプラインには、免疫系抗がん剤との併用効果が期待される「CBP501」などがあります。
収益モデルは、自社で創出した医薬品候補化合物を製薬企業等へライセンスアウトすることによる契約一時金、開発マイルストーン、販売ロイヤルティ等の獲得を目指すものです。また、自社で開発を進め上市し、製品売上を得ることも視野に入れています。運営は主にキャンバスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第22期から第26期にかけて、事業収益(売上高)は計上されていません。これは、同社が開発中の抗がん剤候補化合物が上市に至っておらず、また新たなライセンス契約による収益も発生していないためです。研究開発費等の先行投資が継続しており、経常損失および当期純損失が続いています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事業収益 | - | - | - | - | - |
| 経常損失 | -5.6億円 | -8.5億円 | -12.8億円 | -12.1億円 | -11.6億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期純損失 | -5.3億円 | -8.6億円 | -12.4億円 | -12.1億円 | -11.6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において事業収益はなく、営業損失および経常損失を計上しています。研究開発費や管理部門の人件費などの固定費が主な費用となっており、赤字幅は前期と比較して縮小傾向にあります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 事業収益 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業損失 | -12.6億円 | -11.1億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、公租公課が1.0億円(構成比33%)、役員報酬が0.6億円(同20%)を占めています。また、事業費用全体のうち研究開発費は8.2億円であり、全体の約74%を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の研究開発活動による支出が先行しているため営業CFはマイナスですが、株式発行などの財務活動により資金を調達し、現預金を確保する「勝負型」のキャッシュ・フロー構造です。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -12.8億円 | -7.7億円 |
| 投資CF | - | 0.0億円 |
| 財務CF | 15.4億円 | 17.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は95.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「より良い抗がん剤を一日も早く患者さんにお届けすること」を事業目標として掲げています。この目標を実現するための企業理念として、「フェアであること」および「科学的・倫理的・経済的に正しい道を最短の距離・時間で進むこと」を定めています。医薬品分野のバリューチェーンにおいて存在意義のある会社として持続的に成長し、世界の医療発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、社員一人ひとりが自立し自律する主体的な市民(シティズン)として、平等・博愛、互恵・相互扶助の精神、コンプライアンス、コミュニケーションを相互に高め、高潔な人格を錬成することを人材育成方針としています。多様なバックグラウンドを持つ社員が適正かつ公正に評価され、個々の能力を最大限発揮できる環境づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、独自の創薬アプローチを活かした抗がん剤の研究開発に特化集中し、企業価値の最大化を図ることを基本戦略としています。特定の数値目標は掲げていませんが、主力パイプラインである「CBP501」の開発を加速し、成功確率を最大化すること、および基礎研究を継続して次世代パイプラインを創出することを当面の優先課題としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、製薬企業等との提携に依存しない「創薬パイプライン型」の開発を志向しています。特に最先行の「CBP501」については、免疫チェックポイント阻害抗体との併用療法による臨床試験を推進し、早期の承認取得を目指しています。また、創薬エンジンの改良・充実を図り、新規化合物パイプラインの獲得を進めることで、中長期的な競争力の強化と企業価値向上に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の創薬事業には多様な領域のプロフェッショナル人材の貢献が不可欠であり、人材の多様性の確保と働きがいのある職場づくりを重要課題としています。社員個々のワーク・ライフ・バランスを尊重し、最大のパフォーマンスを発揮できる職場環境を作ることで、業務の生産性向上と個々の生活の質の向上を併せて実現することを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 47.7歳 | 13.5年 | 7,551,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率については、計算の対象となる事例が発生しなかったため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇の平均取得率(約80%)、産休後の職場復帰率(創業来100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医薬品開発の不確実性
医薬品開発は長期かつ多額の費用を要し、成功確率は高くありません。開発のいずれの段階においても中止や遅延が発生する可能性があります。同社は複数の候補化合物を保有することでリスク分散を図っていますが、主力化合物が開発から脱落した場合、財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 将来収益の不確実性
同社は現在、製品販売に関する売上高がなく、製品上市までには相当の期間を要すると予想されます。現時点で想定している適応疾患の選定や市場規模予測が誤っていた場合、あるいは環境変化に迅速に対応できなかった場合、十分な収益を得られず、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) 開発資金の確保
同社は製品上市まで安定的な収益源がなく、先行投資期間が続きます。開発推進には多額の資金が必要であり、資本市場からの調達や製薬企業との提携活動を行っていますが、これらには不確実性が伴います。資金確保が遅れた場合、開発スケジュールの遅延により事業戦略に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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