※本記事は、株式会社THEグローバル社 の有価証券報告書(第15期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. THEグローバル社ってどんな会社?
首都圏を基盤に、自社ブランド「ウィルローズ」シリーズ等の分譲マンションや、収益物件の開発を行う総合不動産企業です。
■(1) 会社概要
2010年にグローバル住販からの株式移転により設立され、同年JASDAQ市場(現スタンダード市場)へ上場しました。その後、シンガポールやベトナムなど海外への事業展開、ホテル事業への参入を進めるとともに、2020年にはアスコットの傘下入りを経て、2022年にSBIホールディングスの連結子会社となりました。2025年には旭化成ホームズと資本業務提携を締結しています。
グループの従業員数は連結142名、単体67名です。筆頭株主は金融サービス大手のSBIホールディングスで、第2位は住宅メーカーの旭化成ホームズ、第3位は証券会社です。SBIグループの信用力とネットワークを活かした事業展開を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SBIホールディングス | 51.95% |
| 旭化成ホームズ | 9.88% |
| 立花証券 | 5.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は岡田圭司氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡田 圭司 | 代表取締役社長執行役員 | 都市建コーポレーション等を経て2012年グループ入社。開発事業部長、グローバル・エルシード社長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 山名 徳雄 | 取締役執行役員 | 三和銀行(現三菱UFJ銀行)、アイ・ティー・エックス、SBCメディカルグループ等を経て2021年入社。管理部長等を経て現職。 |
| 髙村 正人 | 取締役 | 三和銀行、SBI証券社長等を経て、SBIホールディングス代表取締役副社長、SBI PTSホールディングス代表取締役等を現任。 |
| 中野 剛章 | 取締役常勤監査等委員 | 大和ハウス工業、大和リビング執行役員、SBI証券事業開発部長等を経て、2022年よりグループ監査役等を歴任し現職。 |
社外取締役は、明石昌(元大和リビング代表取締役社長)、山上友一郎(公認会計士・監査法人プレンプション代表社員)、上村直子(弁護士・産業革新投資機構法務コンプライアンス室長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「分譲マンション事業」「収益物件事業」「販売代理事業」「建物管理事業」「ホテル事業」および「その他」事業を展開しています。
■分譲マンション事業
首都圏において自社ブランド「ウィルローズ」シリーズを中心とした新築マンションの企画・開発・分譲を行っています。デザイン性の確保に努めるほか、水回りや収納などのセレクトプラン「ライフパレット」により顧客満足度を高めています。
開発はTHEグローバル社が担い、用地仕入や設計監理、建設工事の管理を行います。企画・コンサルティングはグローバル住販が担当し、販売代理で培ったノウハウを活かしています。製販一体の体制でエンドユーザーへ住宅を提供しています。
■収益物件事業
主に首都圏において、マンション開発で培った仕入力や企画力を活用し、賃貸マンションやオフィスなどの収益物件の企画・開発・販売を行っています。また、オフバランススキームの活用など出口戦略の多角化も推進しています。
この事業は主にTHEグローバル社が担っています。開発した物件は、ファンドや投資家、事業会社等へ売却することで収益を得ています。同社の成長ドライバーとして位置づけられ、経営資源が集中されています。
■販売代理事業
グループ開発のマンション等の販売業務に加え、他社デベロッパーのマンション等の販売代理を行っています。販売企画からモデルルーム運営、契約、引渡業務までを一貫して手掛けます。また、不動産の売買仲介業務も含まれます。
運営はグローバル住販が行っています。デベロッパー(売主)から販売代理手数料や仲介手数料を受け取るビジネスモデルです。豊富な販売実績とマーケティング力を強みとしています。
■建物管理事業
主に分譲マンションの管理業務を行っています。自社開発物件だけでなく他社開発物件の管理業務も受託し、事業拡大を図っています。「入居者パーティー」など入居者間のコミュニティづくりにも注力しています。
運営はグローバル・ハートが行っています。管理組合等から管理委託料を受け取るストック型ビジネスであり、安定的な収益基盤となっています。
■ホテル事業
インバウンド需要の高い京都において、ホテルの開発・販売・運営を行っています。開発はTHEグローバル社が行い、新築またはリノベーションしたホテルを投資家に売却します。
運営はグローバル・ホテルパートナーズが行っています。投資家等からリースバックによりホテル運営を受託し、宿泊料等の売上を得るモデルです。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸業などを展開しています。保有不動産の賃貸収入などを計上しています。
運営は主にTHEグローバル社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第13期に一時増加した後、第14期に減少しましたが、第15期には617億円へと大幅に拡大しています。経常利益は第12期以降黒字化し、直近では46億円まで成長しました。利益率も改善傾向にあり、第15期は7.5%となっています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 184億円 | 258億円 | 424億円 | 270億円 | 617億円 |
| 経常利益 | -31億円 | 4億円 | 16億円 | 31億円 | 46億円 |
| 利益率(%) | -16.8% | 1.5% | 3.7% | 11.4% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -41億円 | 5億円 | 17億円 | 27億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高が約2.3倍に急増し、それに伴い売上総利益も約1.7倍に増加しています。営業利益は約3.1倍の54億円となり、営業利益率も6.5%から8.8%へ向上しました。事業規模の拡大とともに収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 270億円 | 617億円 |
| 売上総利益 | 56億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.6% | 15.6% |
| 営業利益 | 18億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、プロジェクト販売費が8億円(構成比20%)、租税公課が7億円(同16%)を占めています。売上原価に関しては、土地代や建築費などが大半を占めます。
■(3) セグメント収益
当期は「収益物件事業」が売上・利益ともに牽引役となり、売上高は前期比3倍超、利益は約3.4倍と飛躍的に成長しました。「分譲マンション事業」は安定的に推移しています。「販売代理事業」「建物管理事業」は堅調ですが利益面では横ばいから微減、「ホテル事業」は赤字となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 分譲マンション事業 | 90億円 | 86億円 | 8億円 | 8億円 | 9.3% |
| 収益物件事業 | 151億円 | 517億円 | 17億円 | 58億円 | 11.2% |
| 販売代理事業 | 3億円 | 3億円 | 5億円 | 3億円 | 77.2% |
| 建物管理事業 | 5億円 | 5億円 | 1億円 | 0.3億円 | 5.6% |
| ホテル事業 | 22億円 | 6億円 | 3億円 | -1億円 | -20.0% |
| その他 | 0.1億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 58.8% |
| 調整額 | -7億円 | -5億円 | -16億円 | -13億円 | - |
| 連結(合計) | 270億円 | 617億円 | 18億円 | 54億円 | 8.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるCFは、棚卸資産の減少や利益計上によりプラスとなりました。投資CFは有価証券の払戻等でプラス、財務CFは借入金の返済が進みマイナスとなりました。全体として、本業で得た資金と資産整理で借入金を圧縮する「改善型」のキャッシュフローといえます。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -119億円 | 187億円 |
| 投資CF | -4億円 | 4億円 |
| 財務CF | 120億円 | -118億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は39.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「不動産価値創造企業として、変化する時代のスピードに対応し、一歩先のニーズを見据えます。既成概念に囚われず、新しい発想による価値を創造し、お客様の夢を叶えます。」を掲げ、他にはない価値・サービスを創造するオンリーワン企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「新しい発想、新しい挑戦、新しい行動。」の実践を重視しています。顧客満足なくして企業成長はないという信念のもと、購入後も含めた顧客満足度でナンバーワンとなることを目標としています。感動を与える商品とサービスの提供を通じて社会貢献と利益獲得の両立を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
財務健全化を図るため、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 自己資本比率:30%以上
* ネットD/Eレシオ:2.0倍未満
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業の選択と集中」を掲げ、主力の分譲マンション事業と収益物件事業に資源を集中させています。分譲マンションでは富裕層向け商品の開発を強化し、収益物件ではオフバランススキームなど出口戦略の多角化を目指します。また、旭化成ホームズとの資本業務提携により、大規模プロジェクトの共同開発などを推進しています。
5. 働く環境
同社的人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を不動産価値創造の担い手と位置づけ、資格取得の奨励や手当給付など能力開発環境を整備しています。また、外部専門人材の積極採用、競争力強化のための報酬制度見直し、エンゲージメントサーベイの実施などを通じ、従業員エンゲージメントの向上と健康増進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 41.1歳 | 2.9年 | 7,087,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職者数(3人 2.1%)、年次有給休暇取得率(70.2%)、月平均残業時間(10時間45分)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 有利子負債への依存と金利変動
用地取得や建築資金を主に金融機関からの借入で調達しており、有利子負債依存度が高い水準にあります。事業拡大に伴い今後も高い水準で推移すると想定されるため、資金調達の困難化や金利上昇が発生した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産市況の悪化
事業は景気、金利、地価動向などの影響を受けやすい特性があります。経済情勢の悪化により消費者の購入意欲や投資家の投資意欲が減退した場合、または保有する不動産の価値が下落した場合、業績および財政状態に影響が出る可能性があります。
■(3) 用地取得競争の激化
事業採算性の観点から基準を設けて用地仕入を行っていますが、不動産市況の変化や他社との取得競争の激化により、基準や戦略に合致する優良な土地の仕入れが困難になった場合、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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