Zenken 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Zenken 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する企業で、WEBマーケティング事業を主力とし、海外人材事業や不動産事業も展開しています。2025年6月期は、主力事業での減収が響き売上高は減少しましたが、費用の見直し等により各利益段階では増益を確保し、減収増益となりました。


※本記事は、Zenken株式会社 の有価証券報告書(第49期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Zenkenってどんな会社?


ニッチ市場に特化したWEBマーケティング支援と、海外IT・介護人材の紹介・教育事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1978年に語学教材の出版を目的として設立されました。2005年にeマーケティング事業(現WEBマーケティング事業)を開始し、現在の主力の礎を築きました。2018年には海外IT人材事業を開始して人材領域へ進出。2021年に東証マザーズ(現グリムス)へ上場し、2023年に現在の社名へ変更しました。

2025年6月30日時点で、連結従業員数は466名、単体では448名です。筆頭株主は吉澤信男氏で、第2位は代表取締役社長の資産管理会社である株式会社IC、第3位は代表取締役社長の林順之亮氏となっており、経営陣および関係者が大株主の上位を占めています。

氏名 持株比率
吉 澤 信 男 46.55%
IC 5.75%
林  順 之 亮 5.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は林順之亮氏が務めています。社外取締役比率は約11%です。

氏名 役職 主な経歴
林 順之亮 代表取締役社長 1984年インターナショナルラーニングシステムズジャパンリミテッド入社。ライトスタッフ等を経て2006年に同社入社。2014年6月より現職。
松島 征吾 取締役バリュークリエイション本部長 1994年ライトスタッフ入社。2005年に同社入社し営業部長等を歴任。人材戦略統括本部長を経て2025年7月より現職。
本村 丹努琉 取締役グローバルニッチトップ事業本部長 2003年TMコーポレーション入社。グリムスを経て2009年に同社入社。eマーケティング事業本部長を経て2025年7月より現職。
上奥 由和 取締役グローバル教育事業本部長 1997年ワット・トラベル(現GIO CLUB)入社。2005年に同社入社。リンゲージ事業本部長等を経て2023年10月より現職。
業天 邦明 取締役管理本部長 2005年監査法人トーマツ入所。経済産業省出向を経て2019年に同社入社し経理部長に就任。2024年9月より現職。


社外取締役は、渡辺紀子(ハイドリック&ストラグルズジャパン合同会社パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マーケティング」「海外人材」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

(1) マーケティングセグメント


WEBマーケティング事業として、クライアントの商品やサービスに特化した集客メディア(ポータルメディア等)の制作・運用を行っています。特定の市場で「ニッチトップ」を目指す中堅・中小企業や、BtoB製造業などを主要顧客とし、コンバージョン(成果)に至る可能性の高いユーザーを集客・送客するサービスを提供しています。

収益は、クライアントから受け取るメディアの制作費および運用費等から構成されています。コンサルティングから制作、編集、リーガルチェック、運用までをワンストップで提供する体制を構築しており、運営は主にZenkenが行っています。

(2) 海外人材セグメント


人材事業と教育事業で構成されています。人材事業では、インド等の海外IT人材や介護人材を日本企業へ紹介するほか、美容業界特化の求人メディア「美プロ」等を運営しています。教育事業では、法人向け語学研修、留学斡旋、日本語教育などを提供しています。

人材事業は企業からの紹介手数料や広告掲載料、教育事業は受講者や企業からの授業料、教材費、斡旋手数料等を主な収益源としています。インドの大学内に拠点を設けたり、地方自治体と連携して介護人材の受け入れ支援を行うなど独自の調達ルートを有し、運営は主にZenkenおよび全研ケアが行っています。

(3) 不動産セグメント


同社が保有するオフィスビル「全研プラザ」および「Zenken Plaza Ⅱ」(いずれも東京都新宿区)の賃貸を行っています。新宿駅から徒歩圏内という立地を活かし、オフィススペースの提供を行っています。

収益は、テナントからの不動産賃料です。高稼働を維持することで安定的な収益基盤となっており、運営は主にZenkenが行っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、シェアードサービス事業等を行っています。

収益はグループ内外へのサービス提供に伴う対価であり、運営は主にZenkenが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は2022年6月期をピークに減少傾向にあります。特に2024年6月期にかけて大きく規模が縮小しましたが、直近の2025年6月期は減少幅が縮まりました。一方、利益面では2024年6月期に底を打ち、2025年6月期は経常利益、当期純利益ともに回復傾向を示しており、利益率も改善しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 62億円 77億円 71億円 56億円 55億円
経常利益 13億円 23億円 9億円 4億円 4億円
利益率(%) 21.2% 30.5% 12.5% 6.9% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 16億円 12億円 2億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微減となりましたが、売上原価の低減により売上総利益は増加し、利益率も向上しました。販売費及び一般管理費は増加しましたが、増益効果により営業利益は増加しています。全体として、売上規模の縮小をコストコントロールで補い、収益性を高める構造となっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 56億円 55億円
売上総利益 29億円 31億円
売上総利益率(%) 52.4% 55.3%
営業利益 3億円 4億円
営業利益率(%) 6.2% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比44%)、賞与引当金繰入額が0.4億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のマーケティング事業は運用メディア数の減少影響等により減収となりましたが、費用の見直しにより増益を確保しました。海外人材事業は人材紹介の伸長等により増収となり、黒字転換を果たしました。不動産事業は高稼働を維持し、安定的に推移しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
マーケティング 38億円 37億円 9億円 9億円 25.6%
海外人材 13億円 14億円 -1億円 1億円 4.8%
不動産 5億円 5億円 3億円 3億円 69.8%
その他 0.1億円 0.1億円 0億円 0億円 95.6%
調整額 - - -8億円 -10億円 -
連結(合計) 56億円 55億円 3億円 4億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


改善型(営業利益+資産売却等で借入返済)

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 7億円 6億円
投資CF -5億円 3億円
財務CF -5億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「そこにない未来を創る」をパーパスとして掲げ、社会課題の解決に結びつく事業活動を推進しています。特に日本の少子高齢化による生産年齢人口の減少を最重要課題と位置づけ、マーケティング事業と海外人材事業を軸としたソリューション提供を通じて、持続可能な社会の創出に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「クライアントファーストであれ」を掲げ、顧客や社会に向き合い課題やニーズを的確に捉えることを重視しています。また、多様性を活かすこと(ダイバーシティ&インクルージョン)や、社員一人ひとりの成長を促すことを大切にしており、新たな価値やクリエイティビティを生み出す原動力は「人」であるという考えのもと、組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


2026年6月期から2030年6月期までの5ヶ年を対象とした中期経営計画『Road to 250』を策定しています。企業価値の最大化と持続的成長を目指し、最終年度である2030年6月期において以下の目標達成と東証プライム市場への上場を視野に入れています。

* 売上高:130億円
* 営業利益:30億円
* 時価総額:250億円超

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画『Road to 250』では、事業構造の転換を掲げ、特に海外人材セグメントの成長加速を中核に据えています。エンジニアリング、介護・宿泊等の領域を最重要ターゲットとし、売上構成比の大幅な引き上げを目指します。また、主力であるマーケティングセグメントにおいても、既存の強みを活かしつつ事業強化を図ります。

* 海外人材セグメントの売上構成比を25%から43%へ拡大
* M&A投資枠として累計100億円程度を設定
* 株主還元の強化(DOE2.5%と連結配当性向50%のいずれか高い方を基準とする「累進配当」)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大と経営強化のため、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用・育成を最重要課題の一つとしています。自ら主体性を持って決断し、課題解決の立役者となれる人材を求めるとともに、多様な人材が特性や能力を最大限に活かせる社内環境の整備に取り組んでいます。具体的には、タレントマネジメントシステムの活用による適材適所の配置や、次世代経営幹部の育成などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 36.3歳 6.5年 4,859,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.4%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 78.8%
男女賃金差異(正規雇用) 82.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(74.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 優秀な人材の採用と育成


同社グループの成長は従業員に支えられており、必要な人材の継続的な確保と育成が最重要課題です。採用活動の遅れや、幹部人材および予想を超える人材の社外流出が発生した場合、事業運営に支障をきたし、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定事業への高い依存度


主力のマーケティングセグメントが売上高の約7割を占めており、経営資源も集中しています。事業環境の変化等により当該事業が縮小し、適切な対応ができなかった場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。これに対し、海外人材事業等の拡大による収益源の多様化を進めています。

(3) 技術革新への対応


インターネット広告市場では、生成AI(ChatGPT等)の台頭など技術進化が激しく起きています。予期しない技術の進歩や新プラットフォームの出現により、同社サービスの優位性を維持できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は生成AIの活用や情報収集に努めています。

(4) 検索エンジンのアルゴリズム変更


主力であるWEBマーケティング事業は検索エンジンを活用しており、頻繁に行われる表示順位判定基準(アルゴリズム)の変更に迅速に対応する必要があります。「Google」等のシステム変更への対応が遅れたり適切に実施されなかった場合、メディアの表示順位低下などを招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。