クロス・マーケティンググループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロス・マーケティンググループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するクロス・マーケティンググループは、デジタルマーケティング、リサーチを主軸としたデータマーケティング、インサイト事業を展開しています。直近決算では、インフルエンサーマーケティングや海外リサーチの需要回復が寄与し、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社クロス・マーケティンググループ の有価証券報告書(第13期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クロス・マーケティンググループってどんな会社?


マーケティングリサーチとITソリューションを融合させ、顧客のマーケティング課題を解決する事業を展開しています。

(1) 会社概要


2003年にクロス・マーケティングが設立され、ネットリサーチサービスの提供を開始しました。2008年に東証マザーズへ上場後、2011年にはモバイル向けソリューション事業を行うクロス・コミュニケーションが営業を開始しました。2013年に株式移転により持株会社体制へ移行し、2018年には東証一部へ指定替えを行っています。

連結従業員数は1,535名、単体では110名です。筆頭株主は創業者の五十嵐幹氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位は資産管理会社とみられる合同会社です。

氏名 持株比率
五十嵐 幹 26.90%
日本カストディ銀行(信託口) 15.50%
合同会社general investment 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは五十嵐幹氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
五十嵐 幹 代表取締役社長兼CEO 1996年日本アジア投資入社。2003年クロス・マーケティング設立、代表取締役社長就任。2013年同社代表取締役社長就任。2014年より現職。
小野塚 浩二 取締役CFOグループ経営企画本部本部長 2001年フィールズ入社。エン・ジャパン経営企画室室長等を経て、2012年クロス・マーケティング入社。2015年より現職。


社外取締役は、成松淳(ミューゼオ代表取締役CEO)、内田輝紀(元大蔵省印刷局長・弁護士)、田原泰明(元武富士執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルマーケティング事業」、「データマーケティング事業」、「インサイト事業」を展開しています。

(1) デジタルマーケティング事業


デジタル領域において、販促支援メディアの運営、プロモーション・マーケティング支援、システム開発および保守・運用、人材供給などのITソリューションを提供しています。顧客はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業等です。

顧客からのシステム受託開発費、保守運用費、プロモーションサービスの利用料などが収益源となります。運営は主に株式会社クロス・コミュニケーション、株式会社エクスクリエ、株式会社クロス・プロップワークス、株式会社オルタナエクスなどが行っています。

(2) データマーケティング事業


マーケティングリサーチにおけるオンライン・オフラインでのデータ収集を中心にサービスを提供しています。国内外において、ネットリサーチや各種調査を実施し、顧客のマーケティング活動に必要なデータを収集します。

顧客企業からの調査受託費用が主な収益源です。運営は、国内では株式会社クロス・マーケティング、海外ではKadence International Inc.(USA)などのグループ各社が行っています。また、関連会社の株式会社リサーチパネルがモニター管理を行っています。

(3) インサイト事業


各種マーケティングデータの複合的な分析、消費者インサイト(潜在的な購買動機)の発掘、レポート作成などを通じて、顧客企業のマーケティング戦略における意思決定を支援します。

顧客企業からの分析業務委託費やコンサルティングフィーが収益源となります。運営は主に株式会社クロス・マーケティング、株式会社メディリード、Kadence International Business Research Pte.Ltd.などの国内外グループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は期間を通じて増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、2022年6月期に高い利益率を記録した後、翌期に一度低下しましたが、直近では増益基調に戻り、利益率も改善傾向を示しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 108億円 249億円 251億円 262億円 289億円
経常利益 10億円 25億円 19億円 19億円 24億円
利益率(%) 9.7% 10.0% 7.5% 7.3% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.6億円 3億円 4億円 13億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に増加しています。営業利益についても前期から大きく伸長しており、営業利益率が改善していることから、本業の収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 262億円 289億円
売上総利益 102億円 111億円
売上総利益率(%) 39.1% 38.3%
営業利益 18億円 25億円
営業利益率(%) 7.0% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が32億円(構成比38%)、賞与引当金繰入額が3億円(同3%)を占めています。

(3) セグメント収益


デジタルマーケティング事業はインフルエンサーマーケティング等が好調で大幅な増収増益となりました。データマーケティング事業も国内外での需要回復により増収増益を達成しています。一方、インサイト事業は一部拠点の苦戦などにより減収減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
デジタルマーケティング事業 107億円 125億円 7億円 9億円 7.2%
データマーケティング事業 88億円 99億円 22億円 30億円 30.1%
インサイト事業 67億円 65億円 10億円 8億円 12.9%
その他 - - - - -%
調整額 -16億円 -17億円 -20億円 -22億円 -%
連結(合計) 262億円 289億円 18億円 25億円 8.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

クロス・マーケティンググループは、事業活動を通じて資金を創出し、成長投資に充当する財務戦略を採っています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上やのれん償却などにより、事業運営を通じて資金を創出しました。一方、投資活動では、固定資産の取得や事業譲受、子会社株式の取得により、将来の成長に向けた投資を行いました。財務活動では、借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払いを行いましたが、新たな借入により一部資金を調達しました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 16億円 20億円
投資CF -12億円 -5億円
財務CF 5億円 -11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ミッションとして「未来をつくろう / Discover Something New.」を掲げ、顧客の事業・マーケティング上の課題解決を通じて未来をつくるグループとして事業運営を行っています。また、ビジョンとして「やればいいじゃん! / Just go for it!」を掲げ、チャレンジし続ける姿勢を目指すべき姿としています。

(2) 企業文化


ミッション・ビジョンの実行にあたり、社員には「Road of Growth」として信念・考え方・行動指針を示し、その実現を目指して推進しています。顧客、株主、従業員、社会などあらゆるステークホルダーから信頼される経営を行い、持続的な成長を通じて社会に貢献することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営方針「Unite & Generate」のもと、グループシナジーの推進と経営品質の向上により高い成長を目指しています。中期成長指針として、向こう5年以内(2030年6月期まで)に以下の数値目標の実現を掲げています。

* 連結売上高500億円
* 営業利益50億円

(4) 成長戦略と重点施策


経営人材の積極的な採用と育成に注力するとともに、AI投資を中核としたITシステム・インフラ投資による生産性向上を図ります。また、周辺事業領域を含めた積極的なM&Aを実行し、事業規模の拡大を目指します。さらに、事業セグメントを「リサーチ・インサイト事業」と「デジタルマーケティング事業」の2区分へ集約し、シナジー創出を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術や業界基準の急速な変化に対応するため、営業力、企画力、開発力、統計知識など多様な能力を持つ優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。新卒・中途採用を積極的に行うほか、全社員に対する研修や階層別研修を実施し、スキルアップを支援しています。また、次世代経営層の育成や人事評価制度の見直しにより、モチベーション向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.5歳 6.0年 7,343,000円


※平均年間給与は、臨時従業員を除く従業員の賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 51.1%
男女賃金差異(正規雇用) 51.7%
男女賃金差異(非正規) -%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、入社者における女性比率(54.9%)、女性管理職比率(19.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム開発に関するリスク


システム開発において、開発の遅延やトラブルが発生した場合、開発コストが増大する可能性があります。また、納期の遅延や納品後の瑕疵が生じた場合、費用の増大や損害賠償が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保・育成


事業成長には多様な能力を持つ優秀な人材の確保と育成が不可欠です。しかし、経済環境の好転に伴う人材獲得競争の激化や、人材育成が順調に進まない場合、事業の成長が阻害される可能性があります。

(3) 競合環境の激化


同社グループの事業には大きな参入障壁がないため、類似事業者の拡大や新規参入が相次いでいます。また、調査案件の大型化や価格競争に対応するための業界再編も進行しており、激しい競争環境下で適切に対応できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 登録モニターの活用


データマーケティング事業等において、関連会社である株式会社リサーチパネルの登録モニターを主に利用しています。何らかの事情により当該登録モニターの利用が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。