※本記事は、トラストホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第12期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トラストホールディングスってどんな会社?
駐車場ビジネスを祖業とし、現在は不動産開発や小口化投資商品、医療支援、キャンピングカー事業等を多角的に展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
同社は1993年に福岡県で駐車場事業を開始し、2006年に福岡証券取引所Q-Boardへ上場しました。その後、関東への進出や警備会社の設立などを経て、2013年に持株会社体制へ移行し、東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。M&Aによりキャンピングカー事業や温浴事業も傘下に収め、2025年には東証スタンダード市場および福証本則市場へ市場区分を変更しています。
連結従業員数は196名、単体では24名が在籍しています。筆頭株主は地域活性化を目的としたファンドである九州応援ファンド第1号組合で、第2位も同系列の第2号組合です。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、創業家や特定の事業会社による支配色は薄い株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 九州応援ファンド第1号組合 | 9.88% |
| 九州応援ファンド第2号組合 | 8.49% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(株式付与ESOP信託口・75551口) | 7.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山川修氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山川 修 | 代表取締役社長 | 2001年入社。トラストアセットパートナーズ代表取締役社長、トラストパーク代表取締役社長(現任)等を歴任し、2022年より現職。 |
| 矢羽田 弘 | 代表取締役副社長 | 2000年入社。トラスト不動産開発、RVトラスト、トラストメディカルサポート等の代表取締役社長を歴任し、2021年より現職。 |
| 河邉 誠一郎 | 取締役 | 2004年入社。トラストパーク東京支社長、RVトラスト代表取締役社長(現任)、和楽代表取締役社長(現任)等を歴任し、2024年より現職。 |
| 原 宗平 | 取締役 | 2009年入社。ジーエートラスト取締役等を経て、2023年より経営管理部長として現職。 |
社外取締役は、木下敏之(元佐賀市長)、加峯辰美(元西鉄エージェンシー社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「駐車場事業」「不動産事業」「駐車場等小口化事業」「メディカルサービス事業」「RV事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 駐車場事業
遊休地の有効利用と既存駐車場の活性化をコンセプトに、コインパーキング等の運営・管理を行っています。土地オーナーから土地を借り上げて運営するほか、運営受託やコンサルティングも手掛けています。
料金収入や運営受託料が主な収益源です。運営は主にトラストパークやグランシップが行っています。
■(2) 不動産事業
ファミリーマンションの分譲事業を中心とした住宅の企画、開発、販売を行っています。「人へ、街へ、次世代へ末永く愛される住まい」をコンセプトとしています。
マンション等の販売代金が主な収益源です。運営は主にトラスト不動産開発が行っています。
■(3) 駐車場等小口化事業
不動産特定共同事業法に基づき、駐車場を対象とした小口化商品「トラストパートナーズ」の組成・販売を行っています。長期安定的な資産運用をサポートする商品を提供しています。
投資家への商品販売代金や管理報酬等が収益源となります。運営は主にトラストパークおよびトラストアセットパートナーズが行っています。
■(4) メディカルサービス事業
医療機関等への不動産賃貸や貸金業務、各種コンサルティング業務を行っています。地域医療を担う医療機関へ安全・安心な医療環境を提供することを目的としています。
不動産賃貸料や金利収入、コンサルティング料が収益源です。運営は主にトラストメディカルサポートおよび嘉麻の庄が行っています。
■(5) RV事業
キャンピングカー等の製造、販売、カスタマイズを行っています。「新しいライフスタイルをサポートする」をコンセプトに事業を展開しています。
車両の販売代金やカスタマイズ料が収益源です。運営は主にRVトラストが行っています。
■(6) その他
温浴施設の運営、警備業務、高濃度水素水の製造・販売などを行っています。温浴施設としては「那珂川清滝」や「和楽の湯下関せいりゅう」を運営しています。
施設利用料や警備料金、商品販売代金が収益源です。運営は和楽、トラストパトロール、トラスト不動産開発などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は120億円から130億円台で推移しています。第11期までは増収傾向にありましたが、第12期は減収となりました。経常利益は第8期の赤字から回復し、第11期には6億円台まで伸長しましたが、第12期は減益となっています。一方、当期純利益は直近3期間で黒字を維持しており、第12期も前期比で微増益を確保しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 123億円 | 127億円 | 134億円 | 137億円 | 129億円 |
| 経常利益 | -0.8億円 | 3.5億円 | 5.1億円 | 6.1億円 | 4.7億円 |
| 利益率(%) | -0.7% | 2.7% | 3.8% | 4.4% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.7億円 | 1.3億円 | 2.4億円 | 3.4億円 | 3.5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期の137億円から129億円へ減少しました。売上総利益も27億円から25億円へ減少していますが、売上総利益率は約20%の水準を維持しています。販管費の抑制等により一定の利益水準を確保していますが、営業利益は前期の6.8億円から5.3億円へ減少しました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 137億円 | 129億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.0% | 19.5% |
| 営業利益 | 6.8億円 | 5.3億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.8億円(構成比24%)、支払手数料が3.9億円(同20%)を占めています。売上原価においては、駐車場賃借料等の地代家賃や不動産販売原価が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
駐車場事業は堅調に推移し増収となりましたが、コスト増により減益となりました。不動産事業はマンション引渡戸数の減少により大幅な減収減益となりました。一方、駐車場等小口化事業は商品の組成・完売が順調で増収増益となり、利益率は6.1%を記録しました。メディカルサービス事業は貸倒引当金の戻入等により黒字転換しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 駐車場事業 | 68億円 | 70億円 | 4.0億円 | 2.6億円 | 3.8% |
| 不動産事業 | 47億円 | 35億円 | 2.5億円 | 1.2億円 | 3.6% |
| 駐車場等小口化事業 | 5.4億円 | 6.2億円 | 0.3億円 | 0.4億円 | 6.1% |
| メディカルサービス事業 | 2.6億円 | 2.8億円 | -0.6億円 | 0.8億円 | 30.1% |
| RV事業 | 4.3億円 | 5.0億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 5.5% |
| その他 | 9.8億円 | 10億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | 0.6% |
| 調整額 | -0.0億円 | - | 0.5億円 | -0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 137億円 | 129億円 | 6.8億円 | 5.3億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | -7.4億円 |
| 投資CF | -1.4億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | -16億円 | -0.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「仕事を通じて、仲間と共に人間性を高め、物心両面の幸福を追求すると同時に、地域社会の幸福に貢献する」という企業理念を掲げています。この理念に基づき、「医・食・住」の環境が整った地域社会の形成を目指し、各種事業に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、「企業は社会の公器である」という考えのもと、公正かつ透明性の高い経営と、全てのステークホルダーとの強固な信頼関係の構築を重視しています。また、多様な人材が活躍できる風土醸成を掲げ、性別や国籍にとらわれない採用・育成や、個人の能力発揮を促すキャリア形成支援を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、業績拡大と企業価値向上のために収益力の向上が重要であると認識しており、売上高経常利益率をKPIに定めています。具体的な数値目標として、売上高経常利益率10%の達成を掲げています。また、各事業において駐車場車室数、預かり資産、新築マンション引渡戸数などの重要指標を設定し、進捗管理を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長に向けて、主力の駐車場事業では利便性向上や料金最適化による収益確保、新規開発の強化を進めます。不動産事業ではニーズに対応したマンション開発と早期完売を目指し、小口化事業では商品組成件数の拡大と対象不動産の拡充を図ります。また、メディカルサービス事業やRV事業等の高付加価値化や収益力向上にも取り組み、各事業間のシナジーを高める方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人的資本経営」を重要課題とし、人材の多様性確保や雇用拡大に取り組んでいます。採用では人数にとらわれず企業理念への共感を重視し、育成では独自の研修プログラムや経営陣との対話を実施しています。また、女性や外国人の活躍推進、両立支援の充実、後継者育成にも注力し、従業員エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 34.6歳 | 7.1年 | 5,078,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 108.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 98.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(38.8%)、障害者雇用率(法定雇用率を上回る)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 駐車場用地の確保と契約解除
駐車場事業の拡大には採算の合う用地確保が不可欠ですが、地価高騰や土地活用の選択肢増加により困難になる可能性があります。また、土地所有者との契約は原則1年ごとの自動更新ですが、所有者の意向により短期間で解約される場合があり、収益性の高い物件の解約が多発すれば業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産市況および金利動向の影響
不動産事業は景気や金利、税制の影響を受けやすく、景気後退や金利上昇により販売価格が低下するリスクがあります。また、土地代や建築費の高騰、供給過剰による価格下落が発生した場合も業績に悪影響を与える可能性があります。引渡基準での売上計上のため、引渡時期の遅延等により四半期業績が変動するリスクもあります。
■(3) 小口化商品の販売時期による業績変動
駐車場等小口化事業の売上は、販売総額の概ね95%以上の契約となった時点で計上されます。一方、販売費は発生時に計上されるため、完売時期のずれ込みにより四半期ごとの業績が大きく変動する可能性があります。
■(4) 借入金依存と金利上昇リスク
事業用地の仕入や建築資金等を主に借入金で調達しているため、有利子負債依存度は62.1%と高くなっています。金利水準が上昇した場合には支払利息の負担が増加し、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。



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