エンビプロ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エンビプロ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の資源リサイクル企業。金属スクラップ等の資源循環事業やグローバルトレーディング事業、リチウムイオン電池リサイクル事業等を展開しています。直近の業績は、主力事業での市況変動や固定費増加等の影響を受け、売上高491億円、経常利益12億円と減収減益で着地しました。


※本記事は、株式会社エンビプロ・ホールディングスの有価証券報告書(第16期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エンビプロ・ホールディングスってどんな会社?


金属スクラップや廃棄物の再資源化を行う資源循環事業を中核に、グローバルな資源取引や電池リサイクルも手掛ける持株会社です。

(1) 会社概要


1950年に創業した佐野マルカ商店を起源とし、2010年に純粋持株会社として設立されました。2013年に東証二部に上場し、2018年には東証一部(現スタンダード市場)へ指定替えを果たしています。近年はリチウムイオン電池リサイクル事業を開始するなど、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現に向けた事業拡大を推進しています。

2025年6月末時点の連結従業員数は632名、単体では63名です。筆頭株主は資産管理会社のウィンデライトで、第2位は関連会社の佐野まるか、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
ウィンデライト 37.83%
佐野まるか 6.98%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は佐野文勝氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
佐野 文勝 代表取締役社長 1983年佐野マルカ商店(現エコネコル)入社。同社社長等を経て2010年エンビプロ・ホールディングス常務、2020年専務、2023年副社長を歴任。2025年9月より現職。
佐野 富和 取締役会長 1974年佐野マルカ商店(現エコネコル)入社。同社社長等を経て2010年エンビプロ・ホールディングス社長に就任。2025年9月より現職。
春山 孝造 専務取締役 春山金属等の経営を経て2010年エンビプロ・ホールディングス入社。子会社社長等を歴任し、2023年9月より現職。日東化工社長を兼務。
中作 憲展 常務取締役 岩田塗装機工業(現アネスト岩田)等を経て2016年エンビプロ・ホールディングス入社。ブライトイノベーション社長等を歴任し、2023年9月より現職。
竹川 直希 取締役 2006年佐野マルカ(現エコネコル)入社。エンビプロ・ホールディングス財務部長、経営企画部長等を経て、2021年7月より取締役管理管掌兼人事部長。


社外取締役は、野村浩子(元日経BP編集長・淑徳大学教授)、今庄啓二(元フューチャーベンチャーキャピタル会長)、村井俊朗(元住友商事執行役員)、神谷寛(税理士・元名古屋国税局酒税課長)、白石智哉(元ペルミラ・アドバイザーズ代表・セントケア・ホールディングス取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「資源循環事業」、「グローバルトレーディング事業」、「リチウムイオン電池リサイクル事業」および「その他」事業を展開しています。

資源循環事業


工場や解体物件等から排出される金属スクラップや産業廃棄物を主要な取り扱い対象としています。これらを収集運搬し、中間処理工場にて破砕・選別・圧縮等の加工を行い、鉄スクラップや非鉄金属、プラスチック、ゴム等のリサイクル資源を生産して販売しています。

販売先は国内外の鉄鋼メーカーや非鉄精錬メーカー等であり、製品の販売代金や廃棄物の処理料金が収益源となります。運営は主に株式会社エコネコル、日東化工株式会社、持分法適用会社の株式会社アビヅ等が担っています。

グローバルトレーディング事業


同社グループで生産したリサイクル資源や他社から仕入れた資源を全国の集荷拠点に集め、国内外へ販売しています。また、リサイクル資源の輸入や三国間貿易、輸出入業者向けの物流代行サービスも提供しています。

国内外の鉄鋼メーカーや製紙メーカー等への資源販売代金、および物流代行手数料が主な収益源です。運営は株式会社NEWSCON、株式会社3WM、株式会社サイテラス等が担っています。

リチウムイオン電池リサイクル事業


電池工場等から排出される工程廃材や使用済み電池を対象に、乾燥・破砕・選別処理を行っています。これにより、コバルトやニッケル等の希少金属(レアメタル)を含有した「ブラックマス(濃縮滓)」を生産し、販売しています。

非鉄商社や非鉄精錬メーカーへのブラックマス販売代金や、廃棄物の処理料金が収益となります。運営は株式会社VOLTA等が担っています。

その他


上記セグメントに含まれない事業として、企業の環境経営やESG投資対応を支援するコンサルティングや、障がいのある方への就労支援サービスなどを展開しています。

一般企業からのコンサルティング報酬や、障がい福祉サービスにおける給付金等が収益源です。運営は株式会社ブライトイノベーションや株式会社アストコが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績推移です。売上高は2022年6月期にピークを迎えましたが、直近では市況の影響等により減少傾向にあります。利益面でも、資源価格の変動等の影響を受け、変動が見られます。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 409億円 573億円 492億円 522億円 491億円
経常利益 25億円 42億円 19億円 18億円 12億円
利益率(%) 6.1% 7.3% 3.9% 3.4% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 31億円 12億円 5億円 12億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高の減少に加え、売上原価率は改善傾向にあるものの、販売費及び一般管理費の負担が増加したことで、営業利益率は低下しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 522億円 491億円
売上総利益 85億円 85億円
売上総利益率(%) 16.2% 17.2%
営業利益 14億円 10億円
営業利益率(%) 2.7% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、輸送経費が29億円(構成比39%)、給与手当が16億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


資源循環事業は鉄スクラップ価格の変動等により減収減益となりました。グローバルトレーディング事業も市況悪化の影響を受け減収減益です。一方、リチウムイオン電池リサイクル事業は生産数量の伸長により増収増益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
資源循環 213億円 210億円 16億円 12億円 5.5%
グローバルトレーディング 350億円 316億円 4億円 3億円 0.9%
リチウムイオン電池リサイクル 16億円 17億円 2億円 2億円 13.2%
その他 5億円 5億円 1億円 1億円 19.4%
調整額 △61億円 △57億円 △6億円 △5億円 -
連結(合計) 522億円 491億円 18億円 12億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 29億円 35億円
投資CF △16億円 △13億円
財務CF △19億円 △21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均とほぼ同じ、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.0%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創業企業(つねに社会にとって必要な事業を創造しつづける)」「循環企業(助け合い、活かし合い、分かち合う喜びの環を回しつづける)」「求道企業(永遠につづく企業の道、人の道を追求しつづける)」を企業理念として定めています。これらを通じて、社会に求められる事業を創造し、ステークホルダーの期待に応えるとともに、良い世の中を作ることを目指しています。

(2) 企業文化


「サーキュラーエコノミー(CE)をリードする」という戦略コンセプトのもと、事業活動そのものが社会的価値の創出に直結するという考え方を重視しています。組織風土としては、自律した個人が主体的に行動し、互いに助け合う関係性を基盤とする「創発的能力を備えた、自律した個人の規律ある集団」を目指しています。

(3) 経営計画・目標


不確実な事業環境を踏まえ、中期経営計画を取り下げ、中長期的にROEを新たな定量目標とする方針へ転換しました。今後は単年度ごとの具体的な利益計画と財務指標の達成を積み重ねることで、企業価値の向上を目指します。

(4) 成長戦略と重点施策


「サーキュラーエコノミー(CE)をリードする」を掲げ、「モノづくりを支えるCE」と「地域を支えるCE」の2軸で展開します。特に、焼却灰からの金銀滓回収事業、リチウムイオン電池リサイクル事業、ポリマーCE事業(廃プラスチック・ゴムの再生)を重要戦略事業と位置づけ、技術力と独自性を磨き上げることで、再生素材メーカーへの変革を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を事業の基盤と捉え、報酬水準の引き上げによる優秀な人材の確保と定着を推進しています。また、次世代経営層やリーダー層の計画的育成のため、OJTと選抜研修を組み合わせた教育を実施しています。企業理念の浸透を最重要テーマとし、自律的・戦略的に行動できる組織風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.6歳 6.8年 7,772,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.5%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.5%
男女賃金差異(正規雇用) 72.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、事業推進人材(135名)、従業員満足アンケート 成長できる環境への満足度(66.0%)、企業理念への共感度(83.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料、製・商品の相場変動リスク


取り扱う鉄スクラップや非鉄金属の価格は、資源価格や市場相場の影響を強く受けます。仕入・販売価格は相場に連動するため、急激な変動が生じた場合、利益の減少や在庫評価損の発生により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料・商品の調達環境リスク


主な調達源である工場からの金属スクラップや市中の解体スクラップは、生産動向や消費動向に左右されます。これら原材料の発生量が減少した場合、取り扱い数量や工場の稼働率が低下し、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 業績の変動リスク


同社グループの業績は、資源相場、為替相場、取扱数量の増減など外部環境の変化に大きく依存しています。これらの要因が複合的に作用することで、四半期ごとや年度ごとの業績が大きく変動する可能性があります。

(4) 特定の販売先への集中リスク


売上高の一部は特定の鉄鋼メーカー等に依存しています。取引先の事情や相手国の法規制、関税等の変化により取引関係に変更が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。