ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証グロース市場に上場し、メタボローム解析技術を用いた研究開発支援事業を展開する慶應義塾大学発のベンチャー企業です。2025年6月期はヘルスケア・ソリューション事業が大幅に伸長し、連結売上高は12期連続の増収を達成。営業利益も前期比で増益となり、堅調な業績推移を示しています。


※本記事は、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年09月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズってどんな会社?


同社は、生体内の代謝物質を網羅的に解析する「メタボローム解析」技術を核に、医療・食品分野の研究開発を支援する企業です。

(1) 会社概要


2003年、慶應義塾大学先端生命科学研究所の技術を実用化するため、同大学発ベンチャー第1号として設立されました。2013年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しました。2025年7月には東証スタンダード市場への移行を果たしています。2024年にはフェルメクテスと資本業務提携を行うなど、バイオものづくり分野への展開も加速しています。

連結従業員数は62名、単体では59名です。大株主は、筆頭株主が創業者で慶應義塾大学教授(当時)の冨田勝氏、第2位は資本業務提携先である医療情報サービス企業のエムスリー、第3位は創業者の曽我朋義氏となっており、創業者と事業パートナーが主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
冨田 勝 6.85%
エムスリー 3.81%
曽我 朋義 3.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼CFOは大畑恭宏氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大畑 恭宏 代表取締役社長兼CFO P&G、高島取締役等を経て、2020年同社入社。執行役員コーポレート統括本部長等を経て、2024年9月より現職。
紙 健次郎 取締役 2012年同社入社。執行役員メタボロミクス事業カンパニー解析本部長、海外事業管掌等を経て、2024年9月より現職。


社外取締役は、夏苅一(松田綜合法律事務所パートナー)、安藤英廣(株式会社アンディファーマパートナーズ代表)、氏家美千代(氏家公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「先端研究開発支援事業」および「ヘルスケア・ソリューション事業」を展開しています。

(1) 先端研究開発支援事業


製薬企業や大学、公的研究機関を主な顧客とし、メタボローム解析技術を活用した受託解析サービスを提供しています。バイオマーカー探索や作用機序解明などの基礎研究分野において、顧客から提供された試料を解析し、その結果を報告書として納品することで研究開発を支援しています。

収益は、顧客である研究機関や民間企業から受領する解析受託料や報告書作成料などで構成されています。運営は主にヒューマン・メタボローム・テクノロジーズが国内で行っており、海外市場においては米国子会社であるHuman Metabolome Technologies America, Inc.が販売活動を担っています。

(2) ヘルスケア・ソリューション事業


主に食品メーカーや化学企業などのヘルスケア関連企業に対し、機能性素材開発におけるソリューションを提供しています。機能性関与成分の網羅的測定や、独自アルゴリズムを用いたヘルスクレーム(機能性表示)の予測、臨床試験の支援などを行い、機能性表示食品の開発プロセスをサポートしています。

収益は、機能性素材開発を目指す企業からのコンサルティング料や解析料、臨床試験支援料などから得ています。また、皮膚ガス測定サービスなどの提供も行っています。運営はヒューマン・メタボローム・テクノロジーズが主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの5期間において、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、11億円から15億円規模へと拡大しました。利益面でも、2022年6月期以降は経常利益2億円以上、利益率10%台後半を維持しており、高い収益性を安定的に確保していることが読み取れます。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 11億円 12億円 13億円 13億円 15億円
経常利益 0.6億円 3億円 2億円 2億円 2億円
利益率(%) 5.3% 20.7% 17.9% 17.9% 16.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 3億円 2億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は60%台半ばと高い水準を維持しており、付加価値の高いサービスを提供できていることがわかります。営業利益についても増益基調にあり、事業規模の拡大と収益性の維持を両立させています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 13億円 15億円
売上総利益 9億円 9億円
売上総利益率(%) 64.6% 63.3%
営業利益 2億円 2億円
営業利益率(%) 16.4% 17.1%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2億円(構成比26%)、給与手当が2億円(同23%)を占めています。技術力向上と人材への投資を重視しているコスト構造が見て取れます。

(3) セグメント収益


先端研究開発支援事業は、国内売上が増加したものの海外売上の減少により全体では減収減益となりました。一方、ヘルスケア・ソリューション事業は機能性素材開発支援の受注が好調で売上が倍増し、セグメント利益も黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
先端研究開発支援事業 12億円 11億円 3億円 2億円 16.1%
ヘルスケア・ソリューション事業 2億円 3億円 -1億円 1億円 20.8%
連結(合計) 13億円 15億円 2億円 2億円 17.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 2億円 4億円
投資CF -0.3億円 -2億円
財務CF -1億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「未来の子供たちのために、最先端のメタボローム解析技術とバイオ技術を活用した研究開発により、人々の健康で豊かな暮らしに貢献する」ことを企業理念としています。ヘルスケア分野の研究開発におけるベストパートナーとして、画期的な製品・サービスの創造に貢献する「ヘルスケア・ソリューション・プロバイダー」を目指しています。

(2) 企業文化


競争優位性を持つメタボローム解析技術を基軸としたイノベーションの推進と、業務全般におけるオペレーショナル・エクセレンスの追求を重視しています。また、従業員が新たな価値を創造し、新規事業創出につなげるサイクルを重視し、積極的にチャレンジし成長できる環境整備に取り組む風土があります。

(3) 経営計画・目標


2026年6月期を最終年度とする中期経営計画において、成長基盤の構築をテーマに掲げています。既存事業の着実な成長に加え、新規事業の創出により、最終年度における以下の経営指標の達成を目指しています。

* 連結売上高:16億円
* 連結営業利益:3億円

(4) 成長戦略と重点施策


企業分野での売上成長を目指し、「バイオものづくり支援サービス(BMS)」の早期立ち上げ、既存事業(LSS・FDS)の安定成長、および新規事業創造を推進しています。特にBMSでは、提携先との実証実験成果を活かした拡販や新サービス開発に注力します。また、デジタル化や自動化推進による生産性向上を通じ、収益性のさらなる改善を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員が新たな価値を創造し、事業創出につなげるサイクルを重視しています。そのために、専門能力向上のための研修強化や、多様な専門人材の登用、自律的に成長する組織文化の醸成に取り組んでいます。また、人事評価における能力要件の再定義や、業績連動賞与による公正な利益配分など、意欲を高める環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.2歳 9.7年 6,734,689円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 売上高の季節変動


主要顧客である大学や公的研究機関の予算執行時期の関係で、測定試料の到着が下期(特に第3四半期)に集中する傾向があります。試料受領の遅れによる年度内解析の困難化やキャパシティ超過による機会損失が発生する可能性があります。同社は民間企業や海外からの受注拡大により変動の平準化を図っています。

(2) 国内外での競合


メタボローム解析受託サービスにおいて国内外の競合が増加し、一部で価格競争が見られます。価格競争による収益性の低下や、他社へのシェア流出のリスクがあります。同社は生産性改善による原価低減や、独自開発による解析サービスの提供、ワンストップサービスの強化により競争優位性の維持を図っています。

(3) 事業化及び商品開発の遅延


成長の源泉である新規開発において、技術的な障害等により開発が頓挫したり、期間が長期化したりする可能性があります。これらは成長戦略に影響を与える要因となります。同社は開発審議会での迅速な意思決定や、業務時間の一定割合を新規開発に充てる制度などを通じ、イノベーション創出とリスク管理の両立を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。