イード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、Webメディア運営やコンテンツ提供を行うCP事業と、リサーチやECソリューションを提供するCS事業を展開しています。第26期の連結業績は、売上高が前期比微減、経常利益は減益となりましたが、特別利益の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社イード の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イードってどんな会社?


Webメディア運営を核としたコンテンツマーケティングと、リサーチやEC支援等のソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


2000年に株式会社IRIコマース&テクノロジーとして設立され、2010年に現商号へ変更しました。M&Aを積極的に活用してWebメディア等の事業を拡大し、2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。その後もメディア取得や資本業務提携を進め、2025年にはロボット情報メディア等の営業権を取得しています。

2025年6月30日時点の従業員数は連結230名、単体120名です。大株主構成は、筆頭株主がポータルサイト運営のエキサイト、第2位が広告代理店の博報堂、第3位が人材関連サービスのマイナビとなっており、事業シナジーが見込まれる事業会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
エキサイト 14.53%
博報堂 10.64%
マイナビ 8.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は宮川洋氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
宮川 洋 代表取締役 アスキー、インターネット総合研究所を経て、2000年同社取締役。2002年より代表取締役を務めるほか、子会社エンファクトリーなどの取締役も兼務。
須田 亨 取締役 日本能率協会コンサルティング等を経て、1995年旧イード入社。2010年より同社取締役。子会社ネットショップ総研取締役等を兼務。


社外取締役は、大和田廣樹(ドリームキッド代表取締役社長)、吉崎浩一郎(グロース・イニシアティブ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クリエイタープラットフォーム事業(CP事業)」および「クリエイターソリューション事業(CS事業)」を展開しています。

(1) クリエイタープラットフォーム事業(CP事業)


「iid-CMP」にて運営するWebメディアやコンテンツを通じて、顧客企業へマーケティングサービス(インターネット広告及びデータ・コンテンツ提供)を提供しています。21ジャンル81個(2025年6月末時点)のWebメディアを運営し、各ジャンルに特化したニュース記事やコンテンツを配信しています。

主な収益源は、顧客企業からの広告料金、データ・コンテンツ利用料金、およびECサイト運営収入です。運営は同社のほか、子会社のエンファクトリー(ECサイト「STYLE STORE」等)、ネットショップ総研(EC運営代行)、SAVAWAY(EC管理システム「TEMPOSTAR」)、エフ・アイ・ティー・パシフィック等が行っています。

(2) クリエイターソリューション事業(CS事業)


リサーチソリューションとECソリューションの2つの分野で構成されています。リサーチでは大規模定量調査から定性調査、行動観察まで幅広く対応し、ECソリューションでは独自ECシステム「marbleASP」の提供を中心に、サイト構築支援などを行っています。

収益は、顧客企業からのリサーチ業務受託料や、ECシステムの提供・構築に伴う対価から得ています。運営は主に同社が行っており、リサーチソリューションでは顧客の要望に応じたきめ細かい対応を、ECソリューションでは拡張性の高いシステム提供を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は60億円前後で推移しており、第24期以降は横ばい傾向にあります。経常利益は第23期をピークに減少傾向にありますが、毎期黒字を確保しています。当期純利益については変動があるものの、直近の第26期は特別利益の計上などにより回復しています。利益率は低下傾向にありましたが、当期は純利益率が改善しました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 54億円 56億円 61億円 61億円 61億円
経常利益 5億円 6億円 6億円 5億円 5億円
利益率(%) 8.6% 11.5% 9.3% 8.9% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 3億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高はほぼ横ばいですが、売上総利益はわずかに増加し、利益率も維持されています。一方、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少し、営業利益率は低下しました。経常利益も減少しましたが、特別利益として投資有価証券売却益等を計上したことで、最終的な当期純利益は増加しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 61億円 61億円
売上総利益 27億円 28億円
売上総利益率(%) 44.9% 45.3%
営業利益 5億円 5億円
営業利益率(%) 8.6% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6.8億円(構成比29.6%)、支払手数料が3.6億円(同15.6%)を占めています。売上原価においては、外注費が14.0億円(構成比68.8%)と高い割合を占めています。

(3) セグメント収益


CP事業は、ネット広告売上の改善等により売上高が増加し、セグメント利益も増加しました。一方、CS事業はリサーチソリューションでの大型案件受注が低調だった影響で売上高、利益ともに大きく減少しました。全体としては、CS事業の減少をCP事業がカバーしきれず、連結営業利益は減少しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
クリエイタープラットフォーム事業 55億円 56億円 4億円 4億円 7.9%
クリエイターソリューション事業 6億円 5億円 1億円 0.2億円 3.9%
連結(合計) 61億円 61億円 5億円 5億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、主に営業活動によるキャッシュ・フローを運転資金や設備・投融資資金の原資としており、必要に応じて金融機関からの借入も行っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは増加しました。これは、税金等調整前当期純利益やのれん償却額の計上、減価償却費の計上などが主な要因です。

投資活動によるキャッシュ・フローは減少しました。これは、主に投資有価証券の取得による支出が影響しています。

財務活動によるキャッシュ・フローは減少しました。これは、長期借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払いなどが主な要因です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 8億円 5億円
投資CF -3億円 -1億円
財務CF 2億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「We are the User Experience Company. すべての人に最高のユーザーエクスペリエンスを!」を企業理念として掲げています。コンテンツマーケティング企業として、顧客やサービス利用者の満足度向上を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、市場動向や競合企業、顧客ニーズの変化に対して速やかにかつ柔軟に対応できる組織運営を重視しています。また、リモートワークとリアルコミュニケーションを併用し、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、メディアジャンルの拡大やWebメディアの増加によるCP事業の拡大、CS事業の安定的な収益基盤の維持、新たな収益基盤の開発を重要視しています。具体的な数値目標としては、次期の期末配当予想において連結株主資本配当率(DOE)2.5%を目安としています。

(4) 成長戦略と重点施策


AI活用による新規サービスの創出や既存事業の拡張、M&AによるWebメディアやコンテンツの取得を通じた事業領域の拡大を推進しています。また、広告収入への依存度を下げるため、サブスクリプションやEC支援など多様な収益ポートフォリオの構築を図るとともに、エンジニアリング力の強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を重要と認識し、多様な人材の採用とeラーニングや外部研修による育成を実施しています。また、リモートワークとリアルコミュニケーションを併用し、仕事と生活の調和を図る働きやすい環境を整備することで、顧客満足度の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 42.2歳 12.2年 5,930,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社グループは、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 広告・マーケティング収入への依存について


CP事業の売上は顧客企業からの広告マーケティング収入に依存しています。インターネット広告市場は拡大傾向にありますが、企業のマーケティング活動は景気動向の影響を受けやすいため、活動が縮小した場合には同社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

(2) インターネット業界への対応について


技術やビジネスモデルの変化が速いインターネット業界において、AI利活用などの対応を進めていますが、新技術や新ビジネスモデルを適時かつ効果的に採用できない可能性があります。また、対応に多額の費用や時間がかかった場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 検索エンジンへの対応について


運営するWebメディア等は検索エンジンからの集客が多く、SEO対策を行っていますが、検索エンジンのロジック変更により表示順位が変動した場合、集客力が低下し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。