スマートバリュー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スマートバリュー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、クラウドソリューション事業を展開する企業です。自治体向けクラウドやモビリティIoT、アリーナ運営等を手掛けます。2025年6月期はアリーナ開業等により増収となりましたが、先行投資負担で営業赤字が拡大しました。事業譲渡益の計上により最終損益は黒字化しています。


※本記事は、株式会社スマートバリュー の有価証券報告書(第78期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スマートバリューってどんな会社?


行政のデジタル化支援や自動車向けIoTサービスに加え、神戸でのアリーナ運営も手掛けるクラウド企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1928年創業の堺バッテリー工業所にあり、1990年に前身となる会社が設立されました。1994年に携帯電話販売を開始し、2005年の持株会社化を経て、2012年に現在の商号となりました。2015年にJASDAQ(スタンダード)へ上場し、2025年には「GLION ARENA KOBE」を開業するとともに、祖業の流れをくむカーソリューション事業の一部とデジタルガバメント事業の一部を譲渡し、事業ポートフォリオの転換を進めています。

2025年6月30日時点で、連結従業員数は197名、単体では105名です。筆頭株主は創業家出身の渋谷一正氏、第2位は代表執行役社長の渋谷順氏であり、創業家が主要株主となっています。第3位には、デジタルガバメント領域で資本業務提携を結んでいるウイングアーク1st株式会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
渋谷 一正 20.57%
渋谷 順 11.63%
ウイングアーク1st 7.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表執行役社長は渋谷順氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は83.3%と非常に高い水準にあります。

氏名 役職 主な経歴
渋谷 順 取締役代表執行役社長 1985年入社。2003年代表取締役社長就任。グループ各社の代表を経て、2020年9月より現職。One Bright KOBEやストークスの代表も兼務。
森田 由基 執行役 2007年イチネン入社。2017年同社入社。モビリティ・サービス部門を経て、2020年9月より現職。One Bright KOBE等の取締役を兼務。
吉川 航平 執行役 2012年同社入社。ビジネスソリューション、プロジェクト開発部門などを経て、2020年7月サービス開発Division Manager。2020年9月より現職。
森田 憲作 執行役 1997年パナソニックITソリューションズ入社。2014年同社入社。開発・デザイン部門長、取締役CTO等を経て、2021年7月より現職。


社外取締役は、北條明宏(公認会計士・税理士)、松本直人(フューチャーベンチャーキャピタル元代表)、赤崎雄作(弁護士)、松川奈央(弁護士)、永島竜貴(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルガバメント」「モビリティ・サービス」「スマートベニュー」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

デジタルガバメント


自治体向けに、透明性・参加・連携を推進するためのクラウドサービス群「ガブクラ」を提供しています。具体的には、Webサイト作成・運用のためのCMS「SMART L-Gov」や、住民と自治体をオンラインで繋ぐ「GaaS」などが主力です。ただし、2025年6月30日付で、一部事業(公募調達によるクラウドサービス提供事業など)をウイングアーク1stへ譲渡しました。

収益は、自治体や公的機関からのシステム利用料や開発委託費などが主な源泉です。運営は主にスマートバリューが担ってきましたが、事業譲渡に伴い、今後は連結子会社の株式会社ノースディテールが営むラボ開発事業などが中心となります。

モビリティ・サービス


コネクティッドカーサービス「CiEMSシリーズ」や、自動車データの利活用プラットフォーム、カーシェアリング等のサービス化支援プラットフォーム「Kuruma Base」を提供しています。2024年7月末には、収益性が低下していたカーソリューション事業(リース車両向け物販)を譲渡しました。

主な顧客は法人企業で、サービス利用料やプラットフォーム利用料、関連機器の販売などが収益源となります。運営はスマートバリューおよび株式会社ノースディテールが行っており、モビリティIoT領域でのストック収益(月次経常収益)拡大を目指しています。

スマートベニュー


2025年4月に開業した「GLION ARENA KOBE」を核に、スタジアム・アリーナ改革やスマートシティ構想に基づく新たな市場創造を目指しています。スポーツやエンターテイメントの力を活用し、アリーナ運営や周辺エリアマネジメントを含むまちづくりを推進します。

収益は、アリーナの貸館料や協賛金(スポンサー収入)、プロバスケットボールクラブの運営収入などから構成されます。アリーナ運営は連結子会社の株式会社One Bright KOBEが、プロバスケットボールクラブ「神戸ストークス」の運営は株式会社ストークスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台から40億円台へと拡大傾向にありますが、利益面では苦戦が続いています。特に2024年6月期以降は営業損失が拡大しており、先行投資や事業構造改革の影響が見られます。2025年6月期は事業譲渡益の計上により当期純利益が大きく黒字化しましたが、本業の収益性改善が課題となっています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 34億円 38億円 39億円 38億円 44億円
経常利益 -5.8億円 0.1億円 -0.8億円 -3.1億円 -7.3億円
利益率 -16.8% 0.2% -2.0% -8.2% -16.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -14億円 0.0億円 -0.5億円 -3.5億円 9.4億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、新アリーナ開業に伴うコスト増などにより、営業損失が拡大しました。売上総利益率は改善傾向にあるものの、販管費の負担が依然として重い構造です。事業譲渡益という一時的な要因を除いた、本業ベースでの収益力強化が求められる状況です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 38億円 44億円
売上総利益 12億円 14億円
売上総利益率(%) 30.3% 33.1%
営業利益 -3億円 -4億円
営業利益率(%) -8.1% -10.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比30%)、支払手数料が4億円(同24%)を占めています。売上原価においては、アリーナ開業に伴うオペレーションコストなどが増加要因となっています。

(3) セグメント収益


スマートベニュー事業がアリーナ開業により大幅な増収となりましたが、開業費用の負担等により赤字となっています。モビリティ・サービスは不採算事業の譲渡影響等で減収となりました。デジタルガバメントは売上が微増しましたが、先行投資等により減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
デジタルガバメント 17億円 17億円 2億円 2億円 9.8%
モビリティ・サービス 15億円 11億円 2億円 2億円 16.0%
スマートベニュー 6億円 15億円 -3億円 -3億円 -21.2%
調整額 - - -5億円 -5億円 -
連結(合計) 38億円 44億円 -3億円 -4億円 -10.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

スマートバリューのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動では、税金等調整前当期純利益や契約負債の増加などが主な要因となり、資金が増加しました。投資活動では、事業譲渡による収入が大きく貢献し、資金が増加しましたが、有形固定資産の取得による支出もありました。財務活動では、長期借入れによる収入が主な要因となり、資金が増加しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 0.3億円 5億円
投資CF 4億円 9億円
財務CF 1億円 10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「スマート&テクノロジーで歴史に残る社会システムを創る!」をミッションとして掲げています。また、中長期的には創業100年となる2028年を見据えた「Moonshot Vision 2028」を策定し、既存のクラウドサービスを拡充させつつ、デジタルとコミュニティの力でリアルなまちを変革し、未来の社会システム(スマートシティ)の創造を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「社会の公器として永続する事業主体になる。そして変わりゆく時代を創造する主体者となる。」という目的を持ち、サステナビリティの実践自体を企業目的としています。また、従業員がお互いを尊重し合い、個々の能力を発揮できる環境整備を通じて、信頼を前提としたコミュニティを育み、未来に残る価値を生み出し続けることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年8月に発表した中期経営計画(ローリング版)において、2028年6月期の目標として以下の数値を掲げています。持続的な企業価値向上に向け、収益性に加え、クラウドサービスの充実を示すMRR(月次経常収益)を重要指標としています。

* 連結営業利益:11.4億円
* モビリティ・サービスセグメント MRR:0.75億円

(4) 成長戦略と重点施策


「Moonshot Vision 2028」のもと、民間企業がまちづくりの主体者となるモデルへの転換を進めています。デジタルガバメント事業の一部譲渡などポートフォリオの入れ替えを行う一方、神戸でのスマートシティモデルの実装を推進し、このモデルを地方創生戦略として全国展開することを目指しています。

* スマートベニュー:アリーナを核としたまちづくりモデルの確立と全国展開。
* モビリティ・サービス:2024年問題等の社会課題に対応する無人化・省人化ソリューションの全国展開。
* アライアンス戦略:他社との連携による市場・サービス領域の拡大。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のため、性別や国籍等を問わず多様な人材を採用し、各種研修や資格取得支援、社内公募制度などを通じて育成を図っています。「SMART WORK」プロジェクトを通じて多様な働き方や子育て・介護支援等の環境整備を進めるとともに、お互いを尊重し合うDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進し、組織と個人の成長を促しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.9歳 4.1年 4,591,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 30.8%
男性労働者の育児休業取得率 42.9%
労働者の男女の賃金の差異 -


※労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「えるぼし」認定(3つ星)、「くるみん」認定(5回目取得)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新による影響


インターネット技術の進化は速く、開発体制の強化と維持が不可欠です。これらが困難になり技術的優位性を失ったり、対応のために労務費が上昇したりした場合、利益の減少など業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社による影響


クラウドソリューション事業には多くの競合が存在します。既存事業者との競争激化や新規参入により、受注減少などが生じた場合、売上や利益が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報漏洩に関するリスク


ISO27001認証取得など情報管理に努めていますが、万が一、個人情報や企業情報が漏洩した場合、損害賠償や信用の失墜、契約解除などを招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。