マーケットエンタープライズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マーケットエンタープライズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する同社は、ネット型リユース、メディア、モバイル通信の3事業を展開しています。第19期は、モバイル通信事業が大きく伸長したことやリユース事業の堅調な推移により、売上高248億円(前期比30.3%増)、経常利益6.8億円(同16倍)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社マーケットエンタープライズ の有価証券報告書(第19期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マーケットエンタープライズってどんな会社?


インターネットに特化したリユース事業を主軸に、メディアや通信事業も展開する最適化商社です。

(1) 会社概要


2006年に設立され、ネット型リユース事業を開始しました。その後、2015年にマザーズ市場へ上場を果たし、2016年にはモバイル通信事業を行う子会社MEモバイルを設立しました。2020年には農機具関連事業を譲り受け、業容を拡大しています。2021年に東証一部へ市場変更し、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は394名、単体では336名です。筆頭株主はWWGで、第2位は創業者の小林泰士氏、第3位は専務取締役の加茂知之氏となっており、経営陣が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
WWG 38.77%
小林 泰士 10.08%
加茂 知之 9.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は小林泰士氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小林 泰士 代表取締役社長 2004年11月同社創業、2006年7月設立とともに代表取締役社長に就任。2020年MEトレーディングおよびUMMの代表取締役社長も兼任し、現在に至る。
加茂 知之 専務取締役 2004年さなる入社後、同年11月同社創業に参画。2006年7月取締役就任。2013年7月より専務取締役。2021年9月よりMEモバイル代表取締役社長を兼任。
今村 健一 常務取締役管理本部長 リンクアンドモチベーション、ニトリ、フロンティアインターナショナルを経て2012年同社入社。管理本部長、執行役員を経て2014年取締役就任。2023年7月より現職。


社外取締役は、寺田航平(寺田倉庫代表取締役社長)、原田典子(AI CROSS代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ネット型リユース事業」「メディア事業」「モバイル通信事業」を展開しています。

(1) ネット型リユース事業


店舗を持たずインターネットに特化したリユース品の買取・販売を行っています。総合買取サイト「高く売れるドットコム」やリユースプラットフォーム「おいくら」を運営し、家電、趣味嗜好品から農機具まで多岐にわたる商材を取り扱います。

収益は、リユース品の販売代金や、プラットフォームにおけるマッチング手数料等から得ています。運営は主に同社が行い、農機具等はMEトレーディングが担当しています。

(2) メディア事業


通信、リユース、消費関連など、消費者に関心の高い分野で情報を提供するインターネットメディアを展開しています。「iPhone格安SIM通信」や「高く売れるドットコムMAGAZINE」など10メディアを運営しています。

主な収益は、記事を経由した送客に伴う成果報酬(広告収入)です。運営は同社およびUMMが行っています。

(3) モバイル通信事業


通信費削減に資する低価格でシンプルな通信サービスを提供しています。主力サービスとして、モバイルWi-Fiルーター「カシモWiMAX」を展開しています。

顧客からの通信サービス利用料が主な収益源です。運営は連結子会社のMEモバイルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近の2025年6月期は大幅な増収となりました。利益面では、2022年6月期や2024年6月期に赤字を計上するなど変動が見られましたが、2025年6月期はV字回復し、過去最高益水準となっています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 109億円 120億円 153億円 190億円 248億円
経常利益 0.3億円 -3.3億円 2.8億円 0.4億円 6.8億円
利益率(%) 0.3% -2.7% 1.8% 0.2% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.4億円 -4.0億円 2.9億円 -4.8億円 4.8億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に増加し、売上総利益も拡大しました。売上総利益率は低下していますが、増収効果により売上総利益の額は増加しています。営業利益は大きく改善し、収益性が向上しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 190億円 248億円
売上総利益 69億円 85億円
売上総利益率(%) 36.5% 34.4%
営業利益 3.0億円 6.3億円
営業利益率(%) 1.6% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が23億円(構成比29%)、給与手当が20億円(同25%)を占めています。売上原価については、商品仕入および通信サービス関連費用等が計上されています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収となりましたが、特にモバイル通信事業の売上が大きく伸長しました。利益面では、ネット型リユース事業が大幅な増益となり全体の利益を牽引しました。メディア事業は減収減益となりましたが、モバイル通信事業は増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
ネット型リユース事業 110億円 125億円 5.5億円 9.4億円 7.5%
メディア事業 5.8億円 4.6億円 3.4億円 2.8億円 61.4%
モバイル通信事業 74億円 118億円 4.6億円 5.5億円 4.7%
調整額 - - -11億円 -12億円 -
連結(合計) 190億円 248億円 3.0億円 6.3億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

マーケットエンタープライズの当連結会計年度における資金は増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、利益計上と売上債権の増加、棚卸資産の減少、仕入債務の増加により、資金が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、デリバティブ解約による収入があったものの、本社移転や事業譲受による支出により、資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少や各種手数料、リース債務の返済による支出により、資金が減少しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -4.2億円 4.8億円
投資CF -2.3億円 -0.5億円
財務CF 5.0億円 -2.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「WinWinの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」という企業理念を掲げています。また、「持続可能な社会を実現する最適化商社」を目指し、多様化する消費行動に対して最適な選択肢を提供することで、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の発展に寄与することを使命としています。

(2) 企業文化


「商売を心から楽しむ主体者集団」であり続けることを重視しています。また、社員が持つべき共通の価値観として「ME 10Core Values」を定めており、「Speed(速度)」「Change & Challenge(変化と挑戦)」等の10項目を通じて、自律的かつ能動的に行動する文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


2026年6月期を最終年度とする中期経営計画において、売上高300億円、営業利益20億円の目標を掲げてきました。現状では外部環境の変化等により達成が困難な状況と認識していますが、新たな成長機会の捕捉に努めています。今後は、売上総利益および販管費率を重要な経営指標として位置付け、利益額の増大を重視する方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹事業であるネット型リユース事業において、個人向けリユース分野の拡大による市場プレゼンスの確立を目指します。具体的には、AI活用による業務効率化やDX施策を推進し、収益性を向上させます。また、2026年6月期よりメディア事業の機能を他事業へ統合し、集客力を強化するとともに、モバイル通信事業では5G回線の獲得やオプション拡充による収益基盤の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に向け、企業理念・風土に合致した優秀な人材の確保と育成を重視しています。ダイバーシティ&インクルージョンを意識し、多様な主体性や働き方を受容する人事制度を構築しています。また、次世代経営人材の育成や、給与水準の向上、教育研修体制の整備、タレントマネジメントシステムの活用を通じて、人材の定着と組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 31.4歳 3.8年 4,263,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.0%
男女賃金差異(正規) 82.5%
男女賃金差異(非正規) 74.3%


※女性管理職比率については、女性活躍推進法に基づく情報公開項目として役員に占める女性の割合等を選択していることから、有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、20代の社員が占める割合(52.9%)、入社3年未満の社員の割合(54.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) リユース品の確保について


リユース事業の収益源泉である商品の買取において、景気動向の変化や競合の出現による買取価格の上昇、新品流通状況の変化、顧客マインドの変化等により、安定的かつ十分な量・質のリユース品を確保できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 検索エンジンからの集客について


運営サイトへの集客において検索エンジン経由の流入が重要であるため、検索エンジンのアルゴリズム変更等により検索結果の表示順位が変動し、集客効率が低下した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 通信回線提供企業からの調達について


モバイル通信事業では通信回線を他社から調達してサービスを提供しています。契約の終了や内容変更、または通信端末のサプライチェーン混乱による在庫逼迫等が生じた場合、サービスの提供や営業戦略に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定のサービスへの依存について


ネット型リユース事業の売上の過半数は「Yahoo!オークション」を通じたものとなっています。独自の販売チャネル開拓を進めていますが、同サービスの廃止や仕様変更等、予期せぬ事態が発生した場合、販売チャネルとしての利用に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。