デジタル・インフォメーション・テクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタル・インフォメーション・テクノロジー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する独立系情報サービス企業です。ソフトウエア開発事業とシステム販売事業を展開し、金融・通信等の業務システムや車載等の組込み開発、自社セキュリティ商品などを提供しています。旺盛な需要を取り込み、15期連続の増収増益を達成するなど業績は拡大基調にあります。


※本記事は、デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 の有価証券報告書(第24期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。


1. デジタル・インフォメーション・テクノロジーってどんな会社?


ソフトウエア開発とシステム販売を主軸とする独立系情報サービス企業です。自社商品の開発や運用サポートも手掛け、安定した収益基盤と成長性を兼ね備えています。

(1) 会社概要


1982年に東洋コンピュータシステムとして設立され、業務システム開発を開始しました。2002年に純粋持株会社として東洋アイティーホールディングス(現同社)を設立し、2006年に子会社を吸収合併して現商号へ変更しました。2015年のJASDAQ上場後、市場変更を経て現在はプライム市場に上場しています。2024年にはジャングルを完全子会社化するなど事業拡大を続けています。

連結従業員数は1,532名、単体では1,240名です。筆頭株主は同社社長が代表取締役を務める投資会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社社長となっています。

氏名 持株比率
NIインベストメント 13.49%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.25%
市川 聡 7.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は市川 聡氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
市川 聡 代表取締役社長執行役員 2004年入社。経営企画、事業本部長などを歴任し、2018年より社長。現在はCS本部・TS本部・NB本部等を管掌。
小松 裕之 取締役副社長執行役員 JALデジタル等を経て2013年入社。経営企画、IR、プロダクトソリューション等を担当し、2024年より現職。
中川 彰二 取締役上席執行役員 2000年東洋コンピュータシステム入社。エンベデッドソリューションカンパニー社長等を経て、2025年より企画営業部長。
柴尾 明子 取締役上席執行役員 1996年東洋コンピュータシステム入社。経理部長として管理部門を統括し、2019年より管理本部長兼経理部長。
村山 憲一郎 取締役 1990年東洋コンピュータシステム入社。2001年よりDITマーケティングサービス代表取締役社長を務める。


社外取締役は、西井正昭(元三井住友信託銀行渋谷支店長)、北之防敏弘(元ジェーシービー常務執行役員)、小河原茂(元アスクル執行役員)、大熊厚志(元クレディ・スイス証券)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウエア開発事業」および「システム販売事業」を展開しています。

(1) ソフトウエア開発事業


金融・通信等の業務システム開発、車載・家電等の組込みシステム開発、および自社開発商品(WebARGUS、xoBlos等)の提供を行っています。また、システムの運用サポートや検証サービスも展開しています。

収益は主に顧客からの受託開発費、運用保守費、および自社商品のライセンス料や保守料から成ります。運営は同社のほか、米国子会社DIT America、シンプリズム、ジャングル、システム・プロダクトなどが担当しています。

(2) システム販売事業


主に中小企業を対象として、カシオヒューマンシステムズ社製の経営支援基幹システム「楽一」およびその周辺機器、事務用品等の販売を行っています。

収益は主に顧客への商品販売代金から得ています。運営は主に連結子会社のDITマーケティングサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において売上高は144億円から242億円へと順調に拡大しており、15期連続の増収増益を達成しています。経常利益についても17億円から30億円へと増加傾向にあり、利益率も12%前後で安定的に推移するなど、収益性を維持しながら成長を続けています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 144億円 162億円 181億円 199億円 242億円
経常利益 17億円 20億円 21億円 24億円 30億円
利益率(%) 12.0% 12.4% 11.3% 12.1% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 14億円 13億円 17億円 22億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高は約43億円の増加、営業利益は約6億円の増加となりました。M&Aによる子会社の連結効果や、金融・公共系システムの開発案件の伸長、自社商品の販売拡大などが寄与し、大幅な増収増益を実現しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 199億円 242億円
売上総利益 49億円 61億円
売上総利益率(%) 24.9% 25.4%
営業利益 24億円 30億円
営業利益率(%) 12.2% 12.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が11億円(構成比34%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるソフトウエア開発事業は、金融系案件の回帰やM&A効果により大幅な増収増益となりました。システム販売事業も、事業承継の効果などにより増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
ソフトウエア開発事業 192億円 233億円 24億円 29億円 12.6%
システム販売事業 7億円 9億円 1億円 1億円 8.7%
調整額 -0億円 -0億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 199億円 242億円 24億円 30億円 12.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

デジタル・インフォメーション・テクノロジーは、営業活動で得た資金を基盤に、投資活動では事業基盤強化を図り、財務活動では株主還元や自己株式取得を行っています。

同社は、本業である事業活動を通じて、前年度を上回る資金を創出しました。投資活動においては、定期預金の払い戻し等により、前年度とは異なり資金の流入超過となりました。一方、財務活動においては、株主への配当金支払いと自己株式の取得により、資金の支出が大きくなっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 17億円 24億円
投資CF -6億円 0億円
財務CF -8億円 -15億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社員の生活を守り、且つ社会に貢献する」を経営理念とし、「顧客起点」を企業理念の中核に据えています。お客様のニーズや市場動向を踏まえ、得意とする技術領域を組み合わせてビジネス価値を高める提案を行うことを企業の存在意義としています。

(2) 企業文化


ロゴマークである立方体の集合体は社員一人ひとりを表し、「付加価値の向上」「熱い情熱をもつ」「目的・目標をもつ」といった価値観を共有しています。カンパニー制による部分最適(専門特化・経営者育成)と、本部制による全体最適(統制・連携)を組み合わせた組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


「信頼され、選ばれるDITブランド」の構築を2030年ビジョンとして掲げています。中期的なスローガンとして「50、50、50超えへの挑戦!」を掲げ、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:500億円
* 営業利益:50億円
* 配当性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営方針「付加価値の追求と変化対応への取り組みから、経営の安定成長を目指す」の下、事業基盤の安定化と成長要素の強化に取り組んでいます。

* リノベーション:既存事業の改革による事業基盤の強化・安定化
* イノベーション:自社商品を軸とした新しい価値創造
* 競合から協業へ:協業による事業拡大
* 開発からサービスへ:サービス視点での事業拡大
* 人材調達・人材育成:採用と育成の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材調達・人材育成(採って育てる)」を基本戦略の一つとし、優秀な人材の確保と育成に注力しています。社員満足度向上のための環境作りや、地方拠点を活かした採用、M&Aによる人材確保を推進するとともに、研修の充実やeラーニング活用によるスキルアップ支援を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 37.5歳 9.0年 5,668,537円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.8%
男性育児休業取得率 69.2%
男女賃金差異(全労働者) 81.3%
男女賃金差異(正規雇用) 81.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保・育成に関するリスク


ビジネスソリューション事業等は人材の能力に大きく依存しています。競争激化の中で有能な技術者や管理者の確保・育成が計画通り進まない場合、受注案件への対応体制が不十分となり、業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 技術革新への対応リスク


技術革新のスピードが速い業界において、先進的なノウハウと開発環境を継続的に進化させる必要があります。想定を超える技術革新や環境変化が生じ、迅速に対応できない場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 価格競争の激化


オフショア開発の普及やアジア諸国企業の進出により、価格競争が一層激化することが予測されます。営業力・技術力の強化や生産性向上で対応する方針ですが、競争が想定以上に激化した場合は収益性に影響を与える可能性があります。

(4) 情報漏洩・システムトラブル


顧客の機密情報や個人情報を取り扱うため、情報漏洩が発生した場合は信用失墜や損害賠償につながります。また、災害やサイバー攻撃等によるシステムトラブルが発生した場合も、事業活動や業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。