クレステック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クレステック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。取扱説明書や修理マニュアル等のテクニカルドキュメンテーション事業を主軸に、グローバルに展開する企業です。直近決算では、売上高は1.5%減の188億円、親会社株主に帰属する当期純利益は19.1%減の7億円と減収減益となりました。


※本記事は、株式会社クレステック の有価証券報告書(第41期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クレステックってどんな会社?


取扱説明書の制作・翻訳・印刷を行うドキュメント事業を核に、世界10か国で事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1984年、静岡県浜松市にて設立され、同年には米国ロサンゼルスにオフィスを開設するなど早期から海外展開を開始しました。1990年代から2000年代にかけて欧州、アジア各地に拠点を拡大し、2015年にJASDAQ(スタンダード)へ上場しました。その後、インドへの進出や国内印刷会社の買収などを経て事業基盤を強化し、2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は1,364名、単体では300名です。大株主構成については、筆頭株主は従業員持株会で、第2位は個人、第3位は投資育成会社です。安定株主として従業員や関係者が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
クレステック従業員持株会 11.43%
髙林 彰 10.25%
名古屋中小企業投資育成 10.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は栗沢 威臣氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
栗沢 威臣 代表取締役社長執行役員 1997年同社入社。執行役員、取締役執行役員欧米事業部長等を経て、2024年7月より現職。エイチエムインベストメント代表取締役社長等を兼任。
冨永 尚志 取締役専務執行役員国内事業担当役員兼国内子会社統括部長 1996年同社入社。執行役員国内事業部長、取締役常務執行役員等を歴任。大野印刷(現シープラス)社長等を経て、2024年7月より現職。
三輪 雅人 取締役専務執行役員財務担当役員 2005年同社入社。執行役員、取締役執行役員管理部長等を歴任。パセイジ監査役、シープラス取締役等を兼任し、2024年7月より現職。
鈴木 康明 取締役(常勤監査等委員) 1993年同社入社。常勤監査役を経て、2016年9月より現職。グループ会社の監査役を兼任。


社外取締役は、竹澤 隆国(竹澤公認会計士事務所所長)、佐藤 雅秀(佐藤雅秀公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国地域」「東南アジア/南アジア地域」「欧米地域」の4つの報告セグメントを展開しています。

(1) 日本


取扱説明書や修理マニュアル等のライティング、イラスト作成、データ組版、翻訳、印刷などを行うテクニカルドキュメンテーション業務を中心に行っています。また、市場動向調査や販促支援、梱包設計、ドキュメント作成ソフトの開発・販売など、周辺業務まで一貫したサポートを提供しています。

収益は、顧客企業からのドキュメント制作費、印刷費、システム利用料などから得ています。運営は主にクレステックが行い、国内子会社のパセイジ、シープラス、ナビ、マインズなどが連携して事業を展開しています。

(2) 中国地域


日本と同様にテクニカルドキュメンテーションサービスを提供するほか、顧客の工場への部材供給(マニュアル・箱・ラベル等の印刷物、緩衝材等)や販促活動の支援業務を行っています。現地の生産拠点としての機能も有し、日系メーカー等の海外展開を支援しています。

収益は、製品・部材の販売代金や制作・サービス料から得ています。運営は、CRESTEC (ASIA) LTD.、CRESTEC PRINTING (DONGGUAN) LTD.、SUZHOU CRESTEC PRINTING CO., LTD.などが担っています。

(3) 東南アジア/南アジア地域


この地域においてもテクニカルドキュメンテーションおよび印刷、パッケージ製造等の事業を展開しています。特にインドネシアやフィリピンなどでは大規模な生産拠点を有し、マニュアルやカートンボックス等の製造・供給を行っています。

収益は、印刷物や梱包資材等の製品販売および制作サービス料から得ています。運営は、PT. CRESTEC INDONESIA、CRESTEC PHILIPPINES, INC.、CRESTEC (THAILAND) CO., LTD.などが行っています。

(4) 欧米地域


欧米市場におけるテクニカルドキュメンテーションサービス、翻訳、現地での印刷コーディネートなどを提供しています。現地の法規制や言語に対応したドキュメント制作を行い、グローバルネットワークの一翼を担っています。

収益は、ドキュメント制作費や翻訳料、サービス提供料から得ています。運営は、CRESTEC EUROPE B.V.(オランダ)、CRESTEC USA, INC.(米国)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2023年6月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、直近の2024年6月期および2025年6月期は減少傾向に転じています。利益面では、2023年6月期に経常利益がピークに達した後、直近2期は減益傾向が続いています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 172億円 186億円 213億円 191億円 188億円
経常利益 11億円 14億円 16億円 13億円 12億円
利益率(%) 6.2% 7.6% 7.6% 6.8% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 8億円 9億円 9億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上総利益は増加しており、売上総利益率も改善しています。一方で、販管費などの影響を含めた営業利益率は上昇していますが、最終的な当期純利益は減少しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 191億円 188億円
売上総利益 55億円 56億円
売上総利益率(%) 28.9% 29.9%
営業利益 12億円 13億円
営業利益率(%) 6.2% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料が16億円(構成比38%)と最も大きな割合を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入や製造にかかる費用が計上されています。

(3) セグメント収益


日本では主要顧客の取引が徐々に回復し増収増益となりました。東南アジア/南アジア地域では売上は減少したものの、利益面では大幅な増益を達成しました。一方、中国地域では経済停滞の影響等により減収減益となり、欧米地域は売上は微増ながら減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
日本 53億円 55億円 1億円 3億円 5.8%
中国地域 44億円 43億円 3億円 1億円 2.1%
東南アジア/南アジア地域 70億円 67億円 6億円 7億円 10.8%
欧米地域 23億円 23億円 2億円 2億円 7.9%
連結(合計) 191億円 188億円 12億円 13億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 25億円 20億円
投資CF -7億円 -3億円
財務CF -14億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「クレステックは企業として、社会に通用する企業を目指す。」「クレステックの社員は、社会人として通用する人間を目指す。」を経営理念に掲げています。情報創造企業として、世界中の人々のコミュニケーションを創造し、安心して暮らせる社会の構築に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「GLOBAL COMMUNICATIONS」をテーマに、世界を繋ぐ人に優しいコミュニケーションの創造を目指しています。年齢や国籍等に関係なく平等に情報を提供できる環境づくりを重視し、言葉の障壁を越えた社会の構築に向けて、新たなツールやサービスの開発に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


2027年6月期を最終年度とする中期経営計画「CR Challenge 27」を推進しています。「グローバル化に向けた新たな挑戦」を基本方針とし、以下の経営数値目標を掲げています。

* 連結売上高:200.0億円
* 連結営業利益:14.0億円
* 連結営業利益率:7.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「CR Challenge 27」のもと、グローバルネットワークを活用した事業強化と体制強化に取り組んでいます。具体的には、外資系企業との取引拡大や既存企業との取引拡充、新規企業との連携やM&Aを推進しています。また、事業ポートフォリオの確立や人材育成、DX化への対応などにより、持続的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グローバル市場での競争力を高めるため、専門的な技術の確立と人材の育成を最重要課題の一つとしています。多様な人材が活躍できる機会の創出や、次世代マネジメント層の育成に注力するとともに、全体最適を意識した適材適所の人員配置を行い、グローバルに活躍できる人材の確保・育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 44.9歳 15.3年 5,115,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.0%
男女賃金差異(正規) 78.4%
男女賃金差異(非正規) 57.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動によるリスク


同社グループの業績は景気変動の影響を受けやすく、主要顧客である日系メーカーの生産活動縮小や製品開発の遅れなどが生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、医薬・生活用品など新分野への拡大や顧客の多様化を進め、リスク分散を図っています。

(2) 主要顧客への依存リスク


特定の地域セグメントにおいて主要顧客の生産動向が変化した場合、業績への影響が懸念されます。また、主要顧客である日系メーカーの海外製造拠点の移転や再編があった場合も影響を受ける可能性があります。これらに対し、新規顧客開拓や既存取引の拡充、グローバルサポート体制の強化などで対応しています。

(3) ペーパーレス化による影響


デジタル化の進展に伴う取扱説明書のペーパーレス化や、スマートフォン普及によるデジタル製品市場の縮小がリスク要因です。オフィス向け機器市場の縮小も懸念されます。これに対し、パッケージ製品(化粧箱、梱包材等)の取引拡大や、医薬・生活用品メーカーへの販売強化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。