※本記事は、株式会社ウイルプラスホールディングス の有価証券報告書(第18期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウイルプラスホールディングスってどんな会社?
主要事業は輸入車ディーラー事業と中古車輸出事業。M&Aとドミナント戦略で多ブランド展開を進める点が特徴です。
■(1) 会社概要
1997年に福岡県北九州市にて創業し、輸入車販売を開始しました。2007年に持株会社体制へ移行し、2016年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場しました。その後もM&Aにより取扱ブランドや店舗網を拡大し、2024年には株式会社ENGを子会社化して中古車輸出関連事業へ進出しています。
同社の連結従業員数は759名、単体従業員数は72名です。筆頭株主は代表取締役社長の成瀬隆章氏で、第2位および第3位は成瀬氏の資産管理会社である株式会社ICSおよび株式会社ETHとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 成瀬 隆章 | 23.61% |
| 株式会社ICS | 8.02% |
| 株式会社ETH | 8.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は成瀬隆章氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 成瀬 隆章 | 代表取締役社長 | 1995年千葉トヨペット入社。1996年さんふらわあ入社。グループ各社の代表取締役を経て、2007年10月より現職。 |
| 齊田 勇 | 取締役 | 1994年ケーユー入社。2005年福岡クライスラー(現ウイルプラスチェッカーモータース)入社。同社社長等を経て2014年9月より現職。 |
| 宇田川 宙 | 取締役 | 1998年UBSウォーバーグ証券入社。SBI証券常務取締役などを経て、2022年4月同社入社。経営戦略室執行役員を経て2022年9月より現職。 |
| 依田 卓弥 | 取締役 | 1981年住友海上火災保険入社。三井住友海上火災保険理事などを経て、2019年同社監査役就任。2023年9月より現職。 |
社外取締役は、廣田聡(HCA法律事務所代表弁護士)、上田研一(アント・キャピタル・パートナーズマネージングパートナー)、鈴木かおり(若林・渡邊法律事務所所属)、植野和宏(植野和宏公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「輸入車ディーラー事業」、「中古車輸出関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 輸入車ディーラー事業
フィアット、ジープ、BMW、MINI、ボルボ、ポルシェ等の輸入車新車・中古車の販売および車輌整備を行っています。インポーターと正規ディーラー契約を締結し、各ブランドの基準に則った店舗運営を行っています。
収益は、顧客への車輌販売代金、点検・修理等の整備料、損害保険会社からの手数料収入等が柱です。運営は主にウイルプラスチェッカーモータース、ウイルプラスモトーレン、ウイルプラス帝欧オート等の連結子会社が行っています。
■(2) 中古車輸出関連事業
日本国内のオートオークション等で仕入れた良質な中古車を、主にマレーシア等の海外へ輸出販売しています。また、下取りした他社ブランドの中古車などをオートオークションで販売する業販も行っています。
収益は、海外の輸入業者や国内のオートオークション業者等からの車輌販売代金が中心です。運営は株式会社ENGが行っています。
■(3) その他
主に損害保険代理店業を行っています。
収益は、損害保険会社からの手数料収入等です。運営は同社グループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高はM&A戦略の推進や新規事業の開始により拡大傾向にあり、特に当期は前期比で大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益は安定的に推移しており、当期純利益は負ののれん発生益の計上や繰延税金資産の計上等により大きく増加しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 408億円 | 397億円 | 441億円 | 477億円 | 886億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 24億円 | 19億円 | 16億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 6.0% | 4.4% | 3.3% | 2.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 2億円 | 2億円 | 43億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しましたが、新規事業の影響等により利益率は低下しました。販売費及び一般管理費も増加していますが、事業規模拡大に伴うものです。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 477億円 | 886億円 |
| 売上総利益 | 94億円 | 124億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.6% | 14.0% |
| 営業利益 | 15億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が31億円(構成比29%)、減価償却費が19億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
輸入車ディーラー事業は店舗数増加等により増収増益となりました。当期より開始した中古車輸出関連事業も売上に大きく寄与しましたが、利益率はディーラー事業と比べ低水準となっています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 輸入車ディーラー事業 | 477億円 | 542億円 | 24億円 | 25億円 | 4.6% |
| 中古車輸出関連事業 | - | 344億円 | - | 4億円 | 1.3% |
| 調整額 | - | -0億円 | -9億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 477億円 | 886億円 | 15億円 | 18億円 | 2.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | -13億円 |
| 投資CF | -39億円 | -5億円 |
| 財務CF | 46億円 | 26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「輸入車のある生活を提案し、より多くの皆様と豊かさ・楽しさ・喜びを分かち合い、関わるすべての人々を温かい笑顔に変えていく挑戦を続ける。」という経営理念の下、地域社会、株主、従業員など、すべてのステークホルダーにとって価値ある企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
「輸入車と共にある未来(=WILL)」にプラス(=PLUS)して「関わるすべての皆さまに喜びを」分かち合うことができるよう、成長し続ける企業グループでありたいと考えています。また、脱炭素化社会実現に貢献し、社会的責任を果たす輸入車ディーラーのリーディングカンパニーとなるべく、企業価値と社会的価値の両立を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
事業規模の拡大、収益力の強化、投資効率の向上を経営課題とし、これらを実現するための重要な経営指標として自己資本比率と株主資本利益率(ROE)を設定しています。
* 自己資本比率:20%以上40%未満
* 株主資本利益率(ROE):15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として「マルチブランド戦略」「エリア・ドミナント戦略」「M&A戦略」を掲げています。複数ブランドの取扱いや特定地域への集中出店、M&Aによる規模拡大を通じて安定成長を目指します。また、EV等の低炭素車販売比率向上や既存店舗の収益力強化、人材の確保・育成にも注力していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員一人ひとりが能力を十分に発揮できるよう、「働きやすい環境」と「働き甲斐のある職場づくり」を目指しています。役職定年の廃止や定年引き上げによるベテラン社員の活用、確定拠出年金や持株会等の資産形成支援を行っています。また、年2回の人事評価により、パフォーマンス次第で半期ごとに昇給・昇格が可能な制度を導入しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 40.6歳 | 6.2年 | 6,107,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 58.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 97.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、取締役の女性比率(12.50%)、管理職の女性比率(7.09%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 輸入車ディーラー事業における商品仕入れ
各ブランドのインポーターと正規ディーラー契約を締結し新車を仕入れていますが、ニューモデル発売等はインポーターの政策に左右されます。メーカーの生産停止やブランドイメージ毀損、長期的な円安による仕入価格への影響等が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 中古車輸出関連事業の市場環境
中古車輸出関連事業は、為替レートの変動、輸出対象国の法的規制の変化、海上輸送の状況等により影響を受ける可能性があります。特に円高への振れは輸出競争力の低下を招く恐れがあります。為替の平準化や事業バランスの最適化を図り、リスク低減に努めています。
■(3) M&A戦略に伴うリスク
成長戦略としてM&Aを実施していますが、事業が計画通り進捗しない場合や、PMI(統合プロセス)が円滑に進まない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、取得したのれんや固定資産について、収益性が低下した場合には減損損失が発生する可能性があります。
■(4) 有利子負債への依存
M&Aや店舗投資等の資金需要に対し銀行借入を活用しており、業容拡大に伴い借入金が増加する可能性があります。金利上昇による負担増や、信用力低下による資金調達困難化が、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。早期の投資回収と効率的な資金調達に努めています。



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