※本記事は、株式会社デュアルタップ の有価証券報告書(第19期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. デュアルタップってどんな会社?
東京23区での資産運用型マンション開発を主軸に、海外事業や管理事業も展開する不動産企業です。
■(1) 会社概要
2006年に設立され、翌年には自社ブランドマンション「XEBEC」の販売を開始しました。2012年にはマレーシアに現地法人を設立し海外事業へ進出。2016年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場を果たしました。その後、2018年に株式会社建物管理サービスを完全子会社化し管理事業を強化、2025年には名古屋証券取引所メイン市場へも上場しています。
2025年6月末時点の連結従業員数は219名、提出会社(単体)では23名です。筆頭株主は創業者である臼井貴弘氏の資産管理会社で、第2位は臼井貴弘氏本人、第3位は資産管理業務を行う証券会社となっています。経営権は創業者およびその関係先に安定的に保持されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社Dimension | 30.81% |
| 臼井 貴弘 | 4.52% |
| 三菱UFJeスマート証券株式会社 | 2.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は臼井貴弘氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 臼井 貴弘 | 代表取締役社長 | 1996年光通信入社、2000年フレッグインターナショナル入社。2006年同社設立とともに代表取締役社長に就任し、グループ各社の代表を歴任。現在もトップとして経営を牽引する。 |
| 藤村 由美 | 取締役開発事業部長 | 1985年アイリス館入社、井原住販などを経て2008年同社入社。開発部長、営業部長などを歴任し、2020年より現職。開発事業の中核を担う。 |
| 大野 慎也 | 取締役経営企画室長 | 2002年オリックス入社。同社投資銀行本部、リスク管理本部などを経て、オリックス自動車社長室シニアマネージャー等を歴任。2024年同社入社、同年9月より現職。 |
社外取締役は、篭原一晃(公認会計士)、酒井康弘(メディア工房取締役)、木呂子義之(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産販売事業」「不動産管理事業」「海外不動産事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 不動産販売事業
東京23区を中心に、資産運用型マンション「XEBEC(ジーベック)」の企画・開発・分譲を行っています。主な顧客は個人投資家のほか、リート、不動産ファンド、企業法人など多岐にわたります。「23区・駅近・高機能マンション」をコンセプトとし、中古マンションや中古オフィスビルの売却も手掛けています。
収益は、開発したマンションや不動産の販売代金として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。
■(2) 不動産管理事業
分譲した「XEBEC」やその他資産運用型マンションの賃貸管理、仲介、建物管理を行っています。オーナーからのサブリース(借上げ)、家賃集金代行、契約管理などを提供し、高い入居率維持に努めています。
収益は、オーナーからの管理委託手数料や、入居者からの賃料収入(サブリースの場合)として受け取ります。運営は同社のほか、株式会社デュアルタップコミュニティや株式会社建物管理サービスが行っています。
■(3) 海外不動産事業
海外投資家が購入した同社物件の窓口業務やアフターサービスを提供しています。また、マレーシア(ジョホール、クアラルンプール)を拠点に、日本品質の建物管理事業を展開し、住宅や商業施設の管理を行っています。現地の管理戸数は1万8000戸を超えています。
収益は、海外投資家からのコンサルティング料や、現地の建物管理に伴う管理料として受け取ります。運営は株式会社デュアルタップアセットマネジメントや、マレーシアの現地子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は変動がありますが、第19期は84億円まで回復しています。利益面では第18期に赤字を計上しましたが、第19期には黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 108億円 | 86億円 | 52億円 | 84億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | 1.0億円 | 2.7億円 | -3.3億円 | 1.0億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 0.9% | 3.2% | -6.4% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.1億円 | 0.6億円 | 1.9億円 | -3.9億円 | 1.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期比で大幅に増加し、売上総利益も拡大しました。これに伴い、営業損益は前期の赤字から黒字へと転換し、収益性が改善しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 84億円 |
| 売上総利益 | 8.4億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.3% | 13.3% |
| 営業利益 | -2.6億円 | 1.7億円 |
| 営業利益率(%) | -4.9% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.8億円(構成比30%)、広告宣伝費が1.2億円(同12%)を占めています。売上原価については、土地代金や建築費が主要な構成要素です。
■(3) セグメント収益
不動産販売事業が売上高の大部分を占め、前期比で大幅な増収・黒字転換を達成し、全社業績を牽引しました。不動産管理事業は安定的に推移し、増益となりました。海外不動産事業は売上が微増したものの、若干の赤字となっています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産販売事業 | 37億円 | 69億円 | -2.9億円 | 1.0億円 | 1.5% |
| 不動産管理事業 | 11億円 | 11億円 | 0.4億円 | 0.7億円 | 5.9% |
| 海外不動産事業 | 3.2億円 | 3.4億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | -3.7% |
| 連結(合計) | 52億円 | 84億円 | -2.6億円 | 1.7億円 | 2.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で借入返済を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8.3億円 | 10億円 |
| 投資CF | -12億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | 11億円 | -7.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「笑顔創造企業」を企業理念として掲げています。不動産の販売を通じて顧客の幸福に貢献し、一人でも多くの顧客の笑顔を創造することで社会の発展に寄与することを目指しています。また、資産運用型マンションの企画・開発・販売を主要事業と位置づけ、顧客の資産価値最大化に努める方針です。
■(2) 企業文化
同社は、持続的な成長のために「ガバナンス」および「リスク管理」を最重要課題とする文化を持っています。定期的に「サステナビリティ会議」を開催し、リスクや機会を管理する体制を整備しています。また、社員の専門性やスキル向上に投資を惜しまず、多様な人材が能力を発揮できる職場環境づくりや、法令遵守・コンプライアンスの徹底を重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的な安定成長を基本方針とし、社会情勢や業界環境の変化に迅速に対応しながら、健全かつ着実な事業拡大を目指しています。経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高営業利益率:3%~5%
* 自己資本比率:20%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「安定基盤の強化」「新たな主軸の企画・構築」「財務目標の達成」「企業価値向上」を重要戦略としています。主力事業の不動産販売では、販売チャネルの拡大やWeb集客の強化を図ります。また、不動産管理事業では管理戸数の増加と資産性向上、海外事業では日本品質の管理サービスの普及を進めます。
* 「XEBEC」のブランド価値向上と認知度拡大
* DX推進による業務効率化と新規サービス導入(マンション管理相談サイト等)
* 財務基盤の維持・拡大(手許流動性の確保、自己資本比率の維持)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的成長のために高い専門性や技術力を持つ人材の確保・育成が重要であると考えています。社員の業務知識習得やスキルアップに重点を置き、一級建築士や宅地建物取引士などの専門資格取得を奨励しています。また、性別や属性に関係なく能力を発揮できる人事制度や、女性管理職登用、男性育休の推奨など、多様な働き方を支援する環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 45.3歳 | 6.9年 | 9,182,056円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 33.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | -% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | -% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | -% |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男女の賃金の差異の記載がありません。なお、上記数値はサステナビリティ指標としての実績値です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(48.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資産運用型マンションの販売に関するリスク
主力の資産運用型マンション販売において、入居率悪化や金利上昇などの投資リスクについて顧客への説明が不十分な場合、訴訟等により信頼が損なわれる可能性があります。また、販売チャネルが既存顧客の紹介や買増に依存しているため、信頼低下は新規販売に影響します。さらに、不動産関連税制の変更により顧客の購買意欲が減退するリスクもあります。
■(2) 仕入に関するリスク
東京23区内を中心に物件を仕入れていますが、地価や建築費の高騰により仕入コストが上昇し、価格転嫁できない場合は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、販売期間が長期化し資金決済期間を超えた場合、資金・在庫負担が発生します。激しい仕入競争や災害等により、計画通りに用地を取得できないリスクもあります。
■(3) 建築に関するリスク
建築工事を外部の建設会社に委託していますが、建設会社の倒産や工事中の事故、品質問題、契約不適合責任の不履行などが発生した場合、計画遅延や想定外の費用負担が生じる可能性があります。また、近隣住民からの反対運動による工事遅延や、建築資材・人件費の高騰による建築コスト増も業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 金利上昇および資金調達に関するリスク
用地取得や建築費等の資金を主に金融機関からの借入で調達しており、有利子負債への依存度が高い傾向にあります。金融情勢の変動により金利が上昇した場合、支払利息の増加が利益を圧迫する可能性があります。また、金融機関の融資姿勢の変化等により資金調達が困難になった場合、事業活動に支障をきたす恐れがあります。



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