ユーザーローカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユーザーローカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、ビッグデータと人工知能(AI)を活用した業務支援ツールやマーケティング分析ツールをSaaS形式で提供しています。直近の業績は、生成AI関連サービスの需要増などが寄与し、売上高は前期比17.3%増、経常利益は同14.7%増と堅調な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ユーザーローカル の有価証券報告書(第20期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユーザーローカルってどんな会社?


同社はビッグデータとAIを活用した業務効率化・マーケティング支援ツールをSaaS形式で提供する企業です。

(1) 会社概要

2005年に設立され、アクセス解析ツール「User Insight」の提供を開始しました。その後、2012年にソーシャルメディア分析ツール「Social Insight」、2017年に業務支援システム「Support Chatbot」をリリースしています。2017年に東証マザーズへ上場し、2019年には東証一部へ市場変更を果たしました。

同社は単体で事業を展開しており、従業員数は112名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の伊藤将雄氏で、発行済株式の約38%を保有しています。第2位以降は、資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
伊藤 将雄 37.92%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.36%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.84%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は伊藤将雄氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤 将雄 代表取締役社長 楽天を経て2005年に同社設立。早稲田大学大学院での研究成果を基にアクセス解析事業を開始。2007年より現職。
渡邊 和行 取締役COOコーポレートセールス部長 楽天を経て2008年に同社入社。2010年コーポレートセールス部長、2014年より取締役COOとして事業を牽引。
岩本 大輔 取締役CFO管理部長 楽天、メタウォーターを経て2015年に同社入社。管理部長を務め、2016年より取締役CFOとして財務・管理部門を統括。


社外取締役は、松崎良太(きびだんご代表取締役)、伊藤拓(弁護士法人御堂筋法律事務所社員)、渡辺智美(元新日本有限責任監査法人)、中村賀一(エンバイオ・ホールディングス代表取締役)、田中裕幸(田中法律会計税務事務所代表)です。

2. 事業内容


同社は、「データクラウド事業」の単一セグメントにおいて、以下の主要サービスを展開しています。

(1) User Insight(ユーザーインサイト)

Webサイトの課題を発見する総合デジタルマーケティングツールを提供しています。ヒートマップ機能によるユーザー行動の可視化や、生成AIを活用したコンテンツ自動作成機能などを備え、顧客企業の意思決定やWebサイト改善を支援します。
収益は、主に顧客企業からのSaaS形態でのサービス利用料により獲得しています。運営は同社が行っています。

(2) Social Insight(ソーシャルインサイト)

ソーシャルメディアの運用を支援する管理・解析ツールを提供しています。クチコミ分析やSNSアカウント分析、投稿管理などの機能を持ち、企業のソーシャルマーケティングをサポートします。
収益は、主に顧客企業からのSaaS形態でのサービス利用料により獲得しています。運営は同社が行っています。

(3) Support Chatbot(サポートチャットボット)

AIを活用した自動応答システムにより、社内外からの問い合わせ対応業務を自動化・効率化するツールを提供しています。独自開発のAIによる高い回答精度や、生成AIとの連携による回答案作成機能が特徴です。
収益は、主に顧客企業からのSaaS形態でのサービス利用料により獲得しています。運営は同社が行っています。

(4) その他(生成AIツール等)

法人向け生成AIプラットフォーム「ユーザーローカル ChatAI」などを提供しています。セキュリティに配慮した環境で複数の大規模言語モデル(LLM)を活用でき、議事録作成や文書要約などの業務効率化を支援します。
収益は、主に顧客企業からのSaaS形態でのサービス利用料により獲得しています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に売上高は毎期着実に増加しており、経常利益率も40%前後の高い水準を維持しています。SaaSビジネスモデル特有の安定的な収益基盤と、AI需要の取り込みによる成長性がうかがえます。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 21億円 27億円 33億円 39億円 46億円
経常利益 9億円 10億円 14億円 17億円 20億円
利益率(%) 40.7% 37.9% 41.3% 44.0% 43.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 10億円 12億円 14億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は90%近い極めて高い水準を維持しており、収益性の高さが際立っています。営業利益率も40%を超えており、効率的な事業運営が行われていることが分かります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 39億円 46億円
売上総利益 36億円 41億円
売上総利益率(%) 91.3% 89.9%
営業利益 17億円 20億円
営業利益率(%) 44.2% 43.0%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が7.5億円(構成比34.7%)、給料及び手当が3.3億円(同15.2%)を占めています。売上原価については、労務費が1.9億円(構成比40.2%)、経費が2.8億円(同59.8%)となっています。

(3) セグメント収益

同社はデータクラウド事業の単一セグメントですが、サービス認知度の向上や営業活動の強化により、売上高は前期比で17.3%増加しました。既存サービスの拡販に加え、生成AI関連の新規需要の取り込みが進んだことが増収に寄与しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
データクラウド事業 39億円 46億円
連結(合計) 39億円 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 15億円 18億円
投資CF -2.0億円 -3億円
財務CF -0.4億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「ビッグデータ×人工知能で世界を進化させる」という経営理念を掲げています。データ分析と人工知能技術を活用して多様な課題を解決し、誰もが自動化・効率化のメリットを享受できる社会を目指すとともに、世界を進化させるためのサービス創出に取り組んでいます。

(2) 企業文化

同社は、世の中のニーズに合ったサービスを創出し、より使いやすく提供することを重視しています。経営理念に基づき、顧客にとって導入しやすく低価格なSaaS形態でのサービス開発を推進しています。また、コンプライアンスや社会課題解決にも積極的に取り組み、サステナブルな経営を推進する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標

同社は具体的な数値目標としての経営計画は開示していませんが、中長期的な視点で、ビッグデータ解析の知見とAI技術を組み合わせた事業展開を進める方針です。持続的な成長を目指し、付加価値の高いサービス提供や優秀な人材の確保・育成に注力することを掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策

生成AI技術の世界的広がりを背景に、これまで培った技術開発力を活かし、多様化する顧客ニーズに対応する方針です。具体的には、「自社AIアルゴリズム拡充」「既存サービスへのAIアルゴリズム実装」「AIサービスの新規開発」の3点に注力し、競争優位性の維持とサービス品質の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

事業の安定的成長のため、企業理念に合致し高い専門性を持つ優秀な人材の確保を不可欠としています。特にAIエンジニアやデータサイエンティストの採用・育成を重要課題と位置づけています。また、長期的なキャリアパスを見据えた研修制度の充実や教育体制の整備を進め、既存人材の能力向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 28.7歳 4.5年 6,528,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システムトラブルの発生リスク

事業基盤をインターネット通信網に依存しているため、大規模なシステムトラブルやサイバー攻撃等によりサービス提供が妨げられた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、サーバーの監視体制構築やバックアップ、システムの二重化等の対策を講じています。

(2) 情報取得への制限リスク

SNS等のビッグデータを自動収集または購入していますが、プラットフォーム側の方針転換や法的規制により情報取得が制限されたり有償化されたりする可能性があります。データの入手が困難になった場合、サービス品質の低下やコスト増につながる恐れがあります。

(3) 事業規模の拡大に伴うリスク

従業員数が比較的少ない規模であるため、事業拡大に伴い人材確保が追いつかない場合や、内部管理体制の構築が遅れるリスクがあります。特にAIエンジニア等の専門人材の確保や、システムインフラの増強において、十分な対応ができない場合、成長の制約要因となる可能性があります。

(4) 新規事業推進に係るリスク

ビッグデータやAIを活用した新規サービスの開発を継続的に進める方針ですが、これらが計画通りに進捗しない、あるいは十分な収益を生まない可能性があります。新規事業が想定通りの成果を上げられない場合、投資コストの回収ができず、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。