※本記事は、株式会社壽屋 の有価証券報告書(第72期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 壽屋ってどんな会社?
フィギュアやプラモデル、雑貨などホビー関連品の企画・製造・販売を一貫して行う製販一体型のメーカーです。
■(1) 会社概要
1953年に有限会社壽屋として設立され、1984年に自社初のオリジナルガレージキットを発売しました。1995年には「新世紀エヴァンゲリオン」のフィギュア化で注目を集め、2009年にオリジナルプラモデルシリーズ「フレームアームズ」を展開開始。2017年に東証JASDAQ(現スタンダード)へ上場しました。
同社(単体)の従業員数は192名です。筆頭株主は事業会社のテレビ朝日、第2位は代表取締役社長の清水一行氏、第3位は事業会社の立飛ホールディングスとなっており、創業家と事業パートナーが主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| テレビ朝日 | 15.10% |
| 清水 一行 | 10.93% |
| 立飛ホールディングス | 10.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は清水一行氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清水 一行 | 代表取締役社長 | 1978年同社入社。1986年より現職。グループ会社役員も兼任。 |
| 清水 浩代 | 取締役副社長 | 1979年同社入社。1996年専務取締役を経て、2013年より現職。 |
| 村岡 幸広 | 常務取締役管理本部長 | 信用組合を経て2008年同社入社。経理部長、管理本部長等を歴任し、2020年より現職。 |
| 亀井 貴文 | 取締役 | 2003年同社入社。企画営業部長、企画本部長、経営企画室長を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、村山正道(立飛ホールディングス社長)、角南源五(元テレビ朝日社長)、大和哲夫(公認会計士・税理士)、佐々木孝(ファースト代表)、宗田勝(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホビー関連品(フィギュア・プラモデル等)」および「その他」事業を展開しています。
■ホビー関連品(フィギュア・プラモデル等)
人気アニメやゲーム、映画のキャラクター、および自社オリジナルキャラクターのフィギュア、プラモデル、雑貨等の企画・製造・販売を行っています。ホビーファンを顧客とし、精密な造形や可動ギミック、デザイン性にこだわった高付加価値製品を提供しています。
収益は、国内外の卸売業者への製品販売、自社直営店舗およびECサイトを通じた一般消費者への販売から得ています。また、自社IP(知的財産)のライセンス供与によるロイヤリティー収入も含まれます。運営は主に同社が行い、製造は中国等の協力工場へ委託するファブレス形態をとっています。
■その他
上記ホビー関連品の製造販売以外の事業として、同社が保有する不動産の賃貸等を行っています。
収益は、賃借人からの不動産賃貸収入等から構成されています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は95億円から165億円へと大きく拡大しました。利益面では、2023年6月期に経常利益25億円、当期純利益18億円のピークを記録した後、直近2期は調整局面となっていますが、依然として高い利益水準を維持しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 95億円 | 143億円 | 181億円 | 164億円 | 165億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 23億円 | 25億円 | 16億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 10.4% | 16.3% | 14.1% | 9.8% | 9.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 16億円 | 18億円 | 11億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
2024年6月期と2025年6月期を比較すると、売上高は微増ながら、売上原価の減少により売上総利益は増加しました。一方で、販売費及び一般管理費が増加した結果、営業利益は若干減少しました。売上総利益率は30%台前半で推移しており、安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 164億円 | 165億円 |
| 売上総利益 | 52億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.7% | 32.5% |
| 営業利益 | 17億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | 9.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比21%)、荷造運賃が6億円(同15%)を占めています。また、売上原価においては、経費(主に外注費)が95億円(構成比85%)と大半を占めており、ファブレスメーカーとしての特徴が表れています。
■(3) セグメント収益
「ホビー関連品製造販売事業」では、国内およびアジア地域での販売が堅調に推移し増収となりました。「その他」事業は不動産賃貸収入等であり、全体に占める割合は極めて小さいものの、安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| ホビー関連品製造販売事業 | 163億円 | 164億円 |
| その他 | 0.8億円 | 0.9億円 |
| 連結(合計) | 164億円 | 165億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、本業で得た現金を借入返済や投資に回す健全な財務状態を示しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 20億円 |
| 投資CF | -14億円 | -17億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「社会に貢献し、感謝される分野において常に感動と驚きを提供する健全なる№1企業であり続ける」という企業理念を掲げています。既存のマーケットにとらわれず、柔軟な事業展開を推進し、ホビーを通じて世界の人々と幸せを共有することを目指しています。
■(2) 企業文化
「仕事を通じて人生を豊かにする為に、常に人間尊重精神を以って切磋琢磨する創造的な意欲溢れる組織であり続ける」ことを重視しています。また、「高品質な商品を提供し続ける為に、常に開拓精神を以って挑戦し続ける」姿勢を持ち、感動と驚きのサービスを提供し続けることをミッションとしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、主要な経営指標として「売上高経常利益率」を重視しており、これを安定的に10.0%以上とすることを目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後はエンターテインメント分野全般へのシフトを目指し、以下の重点課題に取り組む方針です。自社IPの拡充による収益力強化、海外展開およびEC機能の強化による市場拡大、サプライチェーンの拡充による安定供給体制の構築、そして新領域(ハンドモデル等)の確立による事業拡大を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
活力を持ち働くことができる個性豊かな職場を成長の原動力と捉え、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。特に将来を担う人材の確保・育成を最重要テーマとし、階層別・テーマ別の育成プログラムや人事制度の拡充により、従業員のエンゲージメント向上と人的資本の充実に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 38.2歳 | 11.2年 | 5,305,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異につきましては、公表項目として同社が選択しなかったため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(62.5%)、外国人比率(6.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 版権管理に関するリスク
同社製品の多くは他社が保有する版権を利用しており、版権元との契約継続やロイヤリティー条件が事業の重要要素です。ロイヤリティーの値上げや契約解除、また海外版権元との契約解釈の相違によるトラブルなどが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 海外事業展開のリスク
北米やアジア市場への展開を進めていますが、為替リスクに加え、各国の政治・経済情勢、法制度や税制の変更、模倣品等の知的財産リスクが存在します。これら外部環境の急激な変化は、同社の業績や事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) ファブレス型製造の依存リスク
製造を主に中国の委託工場に依存するファブレス形態をとっているため、特定の委託先への依存度が高くなっています。委託先の方針変更や経営悪化、品質問題、または中国の地政学的リスクや人件費上昇などが生じた場合、安定供給やコスト面に影響が出る可能性があります。



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