ジェイテックコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイテックコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、放射光施設向けの超高精度X線ミラーや自動細胞培養装置、理化学機器の開発製造を手掛けています。第32期の連結業績は、主力製品の納入遅れや先行投資に伴う費用増により、売上高は前期比4.2%減、営業利益は60.2%減の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社ジェイテックコーポレーション の有価証券報告書(第32期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェイテックコーポレーションってどんな会社?


X線ナノ集光ミラーや自動細胞培養装置など、産学連携によるオンリーワン技術を核とした製品開発を行う研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は1993年12月に設立され、翌年にはバイオ自動機器の開発に着手しました。2005年には大阪大学等との連携によりX線ナノ集光ミラーの事業化を開始し、現在の主力事業の基盤を築いています。2018年2月に東証マザーズへ上場し、2021年5月には電子科学を完全子会社化して分析機器分野へも事業領域を拡大しました。直近では2022年4月に東証プライム市場へ移行するなど、技術力を背景に成長を続けています。

現在の従業員数は連結76名、単体58名という少数精鋭の体制です。筆頭株主は社長の津村尚史氏で42.16%を保有しています。第2位は創業時の共同出資者である大阪コンピュータ工業(6.11%)、第3位はカストディアンである常任代理人の三菱UFJ銀行(1.35%)となっており、経営陣と創業に関わる法人が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
津村 尚史 42.16%
大阪コンピュータ工業 6.11%
JP JPMSE LUX RE CITIGROUP GLOBAL MARKETS L EQ CO 1.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は津村尚史氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
津村 尚史 代表取締役社長 1981年4月倉敷紡績入社。1993年12月同社設立に伴い代表取締役社長に就任(現任)。2021年電子科学代表取締役社長を経て同社会長も兼任より現職。
金岡 政彦 取締役営業部長 2003年4月ニコン入社。2017年栃木ニコン出向を経て、2019年10月同社入社。2020年7月営業部長、同年9月取締役就任より現職。
日谷 哲也 取締役管理部長 1990年4月大和証券入社。エス・ピー・ネットワーク執行役員等を経て2018年同社入社。内部監査室長、監査室長を経て2023年3月管理部長就任より現職。
辻岡 正憲 取締役 1982年4月住友電気工業入社。日本アイ・ティ・エフ専務取締役等を経て2022年同社顧問。2023年9月取締役就任より現職。


社外取締役は、川﨑望(テクノ高槻取締役相談役)、松見芳男(伊藤忠商事理事)、長谷川功宏(character代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) オプティカル事業


大型放射光施設「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設「SACLA」などで使用される、超高精度X線ミラー(集光ミラー、高調波カットミラー等)を製造・販売しています。主な顧客は国内外の国立研究機関や大学の研究者であり、ナノレベルの表面形状精度を持つカスタムメイド製品を提供しています。

収益は、研究機関や大学等の顧客からの製品販売代金および関連する設計・開発費等から構成されています。運営は主に同社が行っています。

(2) ライフサイエンス・機器開発事業


ライフサイエンス分野では、iPS細胞用自動培養装置「MakCell」や「CellPet」シリーズ等の製造販売、および再生医療向け機器開発を行っています。機器開発分野では、半導体基板等の表面加工を行うプラズマ援用研磨装置(PAP)等の次世代加工装置の実用化を進めています。顧客は製薬企業、研究機関、半導体関連企業などです。

収益は、自動培養装置や加工装置の販売代金、メンテナンス料、および受託開発費等から得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) その他事業


子会社の電子科学が手掛ける昇温脱離分析装置(TDS)の製造・販売事業です。半導体や液晶、素材業界向けに、試料から放出される微量ガス成分を高感度で分析する装置を提供しています。また、受託分析業務や大型工事・メンテナンス業務も行っています。

収益は、分析装置の販売代金、受託分析料、メンテナンス・工事代金等から構成されています。運営は電子科学が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第30期から第32期にかけて、売上高は19億〜20億円前後で推移しています。第30期には高い利益率を記録しましたが、第32期にかけて利益面では減少傾向にあります。特に当期は、売上高が微減にとどまったものの、利益率は大きく低下しており、先行投資やコスト増の影響が見受けられます。親会社株主に帰属する当期利益も減少傾向が続いています。

項目 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 19.1億円 20.1億円 19.3億円
経常利益 3.6億円 3.1億円 1.0億円
利益率(%) 19.1% 15.5% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.4億円 2.0億円 0.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は4.2%減少し、売上総利益も減少しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期の約4割の水準まで低下しています。営業利益率も14.2%から5.9%へと大きく下がっており、収益性の低下が見られます。売上原価率は前期の37.7%から38.8%へと微増しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 20.1億円 19.3億円
売上総利益 12.5億円 11.8億円
売上総利益率(%) 62.3% 61.2%
営業利益 2.9億円 1.1億円
営業利益率(%) 14.2% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が2.8億円(構成比27%)、給料及び手当が1.4億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


オプティカル事業は売上高が横ばいですが、人員増によるコスト増で減益となりました。ライフサイエンス・機器開発事業は、顧客の予算変更等の影響で売上が減少し、赤字幅が拡大しています。その他事業は装置販売が好調で増収となりましたが、体制強化の費用増により減益となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
オプティカル事業 12.4億円 12.3億円 6.0億円 5.3億円 42.7%
ライフサイエンス・機器開発事業 3.2億円 2.2億円 -0.3億円 -0.5億円 -23.6%
その他事業 4.5億円 4.7億円 0.5億円 0.4億円 8.7%
連結(合計) 20.1億円 19.3億円 2.9億円 1.1億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 0.6億円 2.9億円
投資CF -1.6億円 -1.0億円
財務CF -0.8億円 -0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療などの先端技術の研究・実用化を促進することで、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針としています。

(2) 企業文化


同社は産学連携を中心に技術開発、製品開発を推進する文化を持っています。大学や研究機関との共同研究を通じて得られた成果を基に、独自のナノ加工・計測技術を確立し、世界的な科学技術の発展に寄与することを目指しています。また、持続可能な社会づくりへの貢献を意識し、環境、社会、経済のすべてにおいて持続可能な状態を実現する経営を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、10~20年先に目指すべき企業像を明確にした長期成長戦略「Innovation2030」を掲げ、その実現に向けた課題に取り組んでいます。具体的な数値目標として、以下の指標が示されています。

* 女性管理職の登用率:2027年6月期目標 20%以上
* 育児休業制度の取得率(男女):2027年6月期目標 90%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Innovation2030」の実現に向け、グループ共通の課題として人的資本の向上、業務効率化・DX化、IR強化、経営基盤の強化を掲げています。オプティカル事業では生産性向上と半導体・宇宙分野への展開を、ライフサイエンス・機器開発事業では次世代半導体加工技術の実用化や海外市場開拓を推進します。電子科学においては、海外展開と新製品開発による収益拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、グローバル・ニッチトップ・イノベーターとして、経営理念を体現できる高い専門性と技術力、豊かな実務経験を有した人材を求めています。性別・国籍等に関わらず能力を発揮できる環境整備や、新人事制度導入によるモチベーション向上、ハイレベルな外部人材の採用を推進しています。また、即戦力かつ若手育成の担い手として、シニア世代の人材登用にも力を入れています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 44.6歳 4.6年 6,379,450円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は常時雇用される従業員が100名以下の事業規模であり、女性活躍推進法等の規定による公表をしておりません。そのため女性管理職比率、男性育児休業取得率及び男女賃金差異の記載を省略いたします。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職の登用率(10%)、育児休業制度の取得率(0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 個別受注契約及び売上検収時期の変動


同社グループの製品はユーザーごとの個別受注生産が基本であり、高額かつ長期間の開発・製造を要します。開発要素の多さや製造遅延、顧客による仕様変更などの要因により、売上検収時期が計画から変動する場合があり、その際は業績に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 技術の陳腐化リスク


オプティカル事業の製造技術は、大阪大学独自のナノ加工・計測技術を基盤としており、現在は高い優位性を保持しています。しかし、将来的に同等以上の精度を実現する新たな製造技術が確立された場合、価格競争力の低下などにより、事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 国内外政府の施策とその影響


主力製品であるX線ミラー等は、国内外の公的研究機関や大学等の放射光施設で使用されます。これらの施設の多くは公的資金で運営されているため、各国の科学技術政策や研究事業の実施方針、予算制度等に大きな変更があった場合、受注状況に影響し、業績が変動する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。