キュービーネットホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キュービーネットホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のキュービーネットホールディングスは、ヘアカット専門店「QB HOUSE」等を国内外で展開する企業です。2025年6月期は、国内の出店増や価格改定効果により売上収益は過去最高を更新し増収となりましたが、積極的な人財投資や戦略的コスト増により営業利益は減益となりました。


※本記事は、キュービーネットホールディングス株式会社の有価証券報告書(第11期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. キュービーネットホールディングスってどんな会社?


ヘアカット専門店チェーン「QB HOUSE」を運営し、短時間・低価格のサービスを提供するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1995年に設立され、翌1996年にヘアカット専門店「QB HOUSE」第1号店をオープンしました。2006年のオリックスによる資本参加、その後のファンドによる買収・再編を経て、2018年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。近年は海外展開を加速させ、2024年にはベトナムとマレーシアに子会社を設立しています。

同社グループの従業員数は連結2,552名、単体4名です。筆頭株主は海外ファンドのTVC MATSU FUNDで、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
TVC MATSU FUND 11.37%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.27%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 9.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表は代表取締役社長の北野泰男氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
北野 泰男 代表取締役社長 2005年キュービーネット入社。経営企画室長、管理本部長等を経て、2009年同社代表取締役社長に就任。2016年より現職。
壁谷 勝吉 取締役管理本部長 2009年キュービーネット入社。管理本部経営管理部長、統括部長等を経て、2023年取締役管理本部長に就任。2023年より現職。
山本 祐樹 取締役 1995年良品計画入社。海外事業部中国担当部長、MUJI Korea社長等を経て、2023年同社入社。2025年より現職。
江藤 貴祥 取締役 1994年HEADS入社。2006年キュービーネット入社。教育研修室長、事業推進本部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、菊地唯夫(ロイヤルホールディングス代表取締役会長)、戸谷圭子(明治大学専門職大学院教授)、播磨奈央子(公認会計士)、岡田奉典(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内事業」および「海外事業」を展開しています。

(1) 国内事業


「QB HOUSE」「QB PREMIUM」「FaSS」のブランドで、ヘアカットサービスを国内において展開しています。ヘアカット専門店として「お手軽で安心なヘアカットサービス」を提供するほか、より「自分らしさ」を追求するブランドや、スタイリング専門サロンなども運営しています。

収益源は主に顧客からのカット料金収入であり、フランチャイズ加盟店からはロイヤリティ収入等を得ています。運営は主にキュービーネットが行っています。

(2) 海外事業


香港、シンガポール、台湾、米国、カナダ、ベトナム、マレーシアにおいて、「QB HOUSE」および「QB PREMIUM」ブランドでヘアカットサービスを展開しています。日本で培ったノウハウを活かし、各国市場に合わせた店舗展開を行っています。

収益源は各店舗における顧客からのカット料金収入です。運営はQB House (Hong Kong) LimitedやQB NET INTERNATIONAL PTE. LTD.などの各国の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は5期連続で増加しており、成長基調を維持しています。一方、利益面では第9期にピークを迎えましたが、直近の第11期は人件費増や戦略的投資の影響等により、税引前利益、当期利益ともに減益となりました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 189億円 206億円 227億円 248億円 255億円
税引前利益 3億円 13億円 20億円 20億円 15億円
利益率(%) 1.5% 6.1% 8.7% 7.9% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 9億円 14億円 13億円 10億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。人件費の増加などが利益を圧迫しており、営業利益率は低下傾向にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 248億円 255億円
売上総利益 58億円 57億円
売上総利益率(%) 23.5% 22.4%
営業利益 21億円 17億円
営業利益率(%) 8.5% 6.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が23億円(構成比56%)、支払手数料が5億円(同12%)を占めています。また、売上原価においては、店舗スタッフ等の人件費が118億円(構成比60%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


国内事業は来店客数の回復や価格改定により増収となりましたが、利益は減少しました。海外事業は増収となり、セグメント利益も大幅に増加して黒字幅を拡大しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
国内事業 201億円 206億円 21億円 15億円 7.4%
海外事業 47億円 49億円 0.4億円 2億円 3.2%
連結(合計) 248億円 255億円 21億円 17億円 6.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 51億円 43億円
投資CF -8億円 -13億円
財務CF -41億円 -23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は42.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「我々はお客さまに「ありがとう」と言われる、均一で安心感のあるお手軽なサービスを提供し、世界一多くのお客さまから必要とされるヘアカットチェーン店を目指します。」という経営理念を掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「共に働く仲間とは、時間の価値を高めあう存在である。」とし、顧客や仲間から信頼・尊敬される人間へ成長し、最高の笑顔(感謝)で世界をなごます組織へ進化することを目指しています。また、「言葉・態度・表情・思考」において、顧客や仲間から選ばれるための行動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画「NEXUS」を策定し、以下の目標(2029年6月期)を掲げています。

* 売上収益:355億円
* 営業利益:34億円
* 期末連結店舗数:966店舗

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「人財計画の強化」「顧客接点の強化」「海外事業の強化」「体系的な事業運用」の4つを重点テーマとしています。特に海外事業では、既存国のシェア拡大に加え、新規国への進出や、北米での少店舗・高価格帯ビジネスの展開を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業成長の源泉であるスタイリストに選ばれる会社となることを目指しています。人財育成拠点「ロジスカット プロフェッショナル スタイリスト スクール」の拡充や、価格改定を原資とした待遇改善、労働環境の向上に取り組み、国内外での人員確保と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 47.0歳 3.3年 10,383,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 84.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.0%
男女賃金差異(正規) 86.4%
男女賃金差異(非正規) 88.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(国内)(6.8%)、離職率(海外)(15.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人財の確保


理容師・美容師資格者の減少や労働環境の変化により、必要な人財の確保が困難になるリスクがあります。同社は教育研修施設の増設や待遇改善等で対応していますが、計画通りに人財を確保できない場合、出店計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済状況、法的規制


経済環境の変動に伴う人件費や賃料の上昇、また理容師法・美容師法等の法令改正による新たな設備投資負担などが、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。特に人件費の上昇は、労働集約型のビジネスモデルである同社にとって重要なリスク要因となります。

(3) 海外事業


海外事業においては、各国の政情、経済、法規制、ビジネス慣習等の違いによるカントリーリスクや、模倣サービスの出現などのリスクがあります。事業計画の遅延や想定外のコスト発生により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。