※本記事は、株式会社ファイバーゲート の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファイバーゲートってどんな会社?
集合住宅向けのインターネット接続サービスや、観光施設・店舗向けのフリーWi-Fiサービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年に設立され、2003年に現在の商号となりました。2004年に集合住宅向けインターネット無料サービスを開始し、主力事業へと成長させました。2018年に東証マザーズへ上場し、2019年には東証一部へ市場変更を果たしました。その後、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行し、2025年にはスタンダード市場へ変更しています。
現在のグループ全体の従業員数は239名(連結)、単体では227名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は代表取締役の資産管理会社であり、第2位は代表取締役個人となっています。第3位には信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| MIコーポレーション | 23.60% |
| 猪又 將哲 | 13.88% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は猪又將哲氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 猪又 將哲 | 代表取締役社長執行役員 | 1987年興亜火災海上保険(現損害保険ジャパン)入社。1995年マイネット代表取締役などを経て、2003年より現職。 |
| 石川 大輔 | 取締役副社長執行役員営業統括兼北海道営業本部長 | 2012年同社入社。営業推進本部レジデンスWi-Fi営業部長、執行役員営業推進副本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 濱渦 隆文 | 取締役専務執行役員経営企画本部長 | 2000年エリアクエスト入社。ベンチャー・リンク、オリックス・キャピタル等を経て2011年同社入社。2024年より現職。 |
| 金子 尚 | 取締役常務執行役員エネルギー事業推進本部長 | 1989年青梅信用金庫入社。大阪有線放送(現USEN)、UCOMを経て2013年同社入社。2025年より現職。 |
| 石丸 美枝 | 取締役執行役員経営管理本部長 | 1997年朝日監査法人入所。公認会計士・税理士として活動し、電算取締役等を歴任。2024年より現職。 |
| 立田 哲朗 | 取締役(常勤監査等委員) | 1973年北海道銀行入行。マルキタ代表取締役社長、キョクイチホールディングス専務取締役等を経て、2021年より現職。 |
社外取締役は、篠田信幸(元ロフト取締役執行役員)、島畑知可子(社労士事務所Pirika Office代表)、小幡朋弘(弁護士法人PLAZA総合法律事務所代表社員)、鎌田啓志(オフィスK.代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホームユース事業」「ビジネスユース事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ホームユース事業
マンション・アパート等の賃貸物件オーナー向けに、全戸一括で入居者が利用できるインターネット接続サービス(レジデンスWi-Fi)を提供しています。入居促進や退去防止のための設備として導入され、学生寮などでも需要があります。
収益は、機器設置時の一時金および長期契約に基づく月額利用料をオーナーから受け取るストック型モデルです。運営は主にファイバーゲートが行い、グループ会社が回線取次や機器開発、コールセンター業務を担っています。
■(2) ビジネスユース事業
観光施設、店舗、商店街、商業施設などの運営者向けに、フリーWi-Fiサービス「Wi-Fi Nex」等を提供しています。また、法人向けにVPN等のネットワーク構築や、病院・介護施設向けのWi-Fi環境構築も行っています。
収益は、Wi-Fi設備の構築や機器販売による一時収益と、保守・運営サポートによる継続的な料金収入等から構成されています。運営は主にファイバーゲートが行っています。
■(3) 不動産事業
不動産の売買および賃貸事業を展開しています。回転期間の短い不動産の売買を行う販売事業が含まれます。
収益は、不動産の売却代金および賃貸料収入です。運営はFGスマートアセットが行っています。
■(4) その他事業
再生可能エネルギー関連事業として、集合住宅等への太陽光パネルや蓄電池等の設置工事を行っています。
収益は、設備の設置工事代金等です。運営はオフグリッドラボ等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移です。売上高は着実な成長を続けており、130億円規模に達しています。経常利益は2024年6月期まで増加傾向にありましたが、直近の2025年6月期では減益となりました。利益率は15%前後の高い水準を維持しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 106億円 | 128億円 | 126億円 | 131億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 16億円 | 23億円 | 24億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 18.2% | 15.1% | 17.9% | 19.0% | 14.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 9億円 | 14億円 | 13億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しています。売上総利益率は46.1%から41.5%へ、営業利益率は18.9%から15.0%へと低下しており、収益性の面で調整局面にあることがうかがえます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 126億円 | 131億円 |
| 売上総利益 | 58億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.1% | 41.5% |
| 営業利益 | 24億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 18.9% | 15.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比31%)、販売手数料が10億円(同28%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力のホームユース事業が増収となったものの減益となり、これが全体の利益率低下の要因となっています。ビジネスユース事業は微増収ながら減益となりました。不動産事業は減収増益、その他事業は再生可能エネルギー関連で売上が伸長しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ホームユース事業 | 104億円 | 109億円 | 29億円 | 26億円 | 24.3% |
| ビジネスユース事業 | 17億円 | 17億円 | 5億円 | 3億円 | 19.4% |
| 不動産事業 | 5億円 | 4億円 | 1億円 | 1億円 | 15.2% |
| その他 | 0.3億円 | 1億円 | 0.1億円 | 0億円 | 0.0% |
| 連結(合計) | 126億円 | 131億円 | 24億円 | 20億円 | 15.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「『ありがとう』を集める。」を経営理念として掲げています。株主、取引先、社員等の全てのステークホルダーから信頼される企業であり続けるために、透明性の高い企業経営を目指し、コンプライアンスの徹底を経営の基本と位置付けています。
■(2) 企業文化
同社グループは、利益追求だけでなく信用と信義を第一に据えた「先義後利」の精神を重視しています。企業の成長においては、お客様の事業に貢献することでビジネス上の「ありがとう」を集めることが重要であると考え、自社の発展だけでなく社会全体の発展にも貢献できる企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営基盤の強化と安定した成長を実現するために、期間損益成長ピッチの回復と構内インフラ・インテグレーターとしての地歩固めを行い、中期的に経常利益50億円を目指す体制構築を目標としています。
* 2026年6月期 売上高:141億円
* 2026年6月期 営業利益:20億円
* 2026年6月期 経常利益:20億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「構内インフラ・インテグレーター(通信×エネルギー)」への進化を目指しています。ホームユース事業では既築案件の掘り起こしや新ビジネスモデルの展開、ビジネスユース事業では業務利用需要の開拓を進めるとともに、通信とエネルギーのシナジー訴求や迅速な施工能力の確保を推進しています。
* 戦略投資:今後2年間で50~60億円を想定
* 設備投資:2年間累計で30~40億円を見込む
* 株主還元:2年累計で10億円を見込む
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、製品開発からサポートまでをワンストップで行う「職種ダイバーシティ」を特徴としており、一人が複数の業務に対応できる「多刀流人材の育成」を目指しています。継続して社員の能力開発を行うとともに、社員の健康管理やスキルアップを通じた自己実現の支援、経営幹部候補の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 35.9歳 | 5.3年 | 5,544,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 62.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リモートワーク実施率(59%)、グローバル人材比率(11%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに係るリスク
同社グループはインターネットサービスを展開しており、セキュリティ強化に努めていますが、サイバー攻撃やシステム不具合、災害等により設備やネットワークが利用不能となった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 個人情報の管理に係るリスク
電気通信事業者として通信記録や個人情報を保有しており、情報保護体制を構築していますが、情報の漏洩や不正使用が発生した場合、監督官庁からの処分や損害賠償請求、信用の低下により、経営成績や事業展開に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制に係るリスク
電気通信事業法等の法的規制を遵守していますが、規制の変更や新たな法令の適用により事業活動が制限されたりコストが増加する可能性があります。また、登録や認定の取消しが生じた場合、主要な事業活動に支障をきたす可能性があります。
■(4) 知的財産権に係るリスク
技術革新やビジネス拡大に伴い知的財産権管理を強化していますが、予期せぬ権利侵害により訴訟や使用差止請求を受けた場合、金銭的負担が発生し、経営成績や事業展開に影響を与える可能性があります。



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