メルカリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メルカリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するメルカリは、個人間取引CtoCマーケットプレイス「メルカリ」やスマホ決済「メルペイ」等の企画・開発・運営を行う企業です。2025年6月期の連結業績は、売上収益が1,926億円と増収し、営業利益も278億円と前期比約59%増の大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社メルカリ の有価証券報告書(第13期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. メルカリってどんな会社?


フリマアプリ「メルカリ」の運営を主軸に、スマホ決済「メルペイ」等のFintech事業も展開するテック企業です。

(1) 会社概要


2013年に設立され、同年フリマアプリ「メルカリ」の提供を開始しました。2014年には米国子会社を設立し、2018年に東証マザーズへ上場を果たしています。2019年にはスマホ決済サービス「メルペイ」を開始し、2021年には暗号資産関連子会社を設立するなど事業を拡大しました。2022年には東証プライム市場へ移行しています。

2025年6月30日現在の連結従業員数は2,159名(単体1,543名)です。筆頭株主は創業者の山田進太郎氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も同様に信託銀行の信託口となっています。

氏名 持株比率
山田 進太郎 22.08%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.88%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性7名の計14名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表執行役 CEO(社長)は山田進太郎氏が務めています。取締役12名のうち8名が社外取締役であり、社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
山田 進太郎 取締役会議長指名委員報酬委員 代表執行役 CEO(社長) ウノウ代表取締役、Zynga Japanゼネラルマネージャー等を経て、2013年に同社設立。2017年4月より代表取締役会長兼CEO、2023年9月より現職。
小泉 文明 取締役 President(会長) 大和証券SMBC、ミクシィ取締役を経て2013年に入社。2014年取締役、2017年社長兼COOを歴任。2019年9月より現職。鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長を兼任。
江田 清香 取締役 執行役 SVP of Corporate 兼 CFO ゴールドマン・サックス証券を経て2021年に入社し執行役員CFOに就任。メルペイ取締役等を兼任し、2023年9月より現職。
栃木 真由美 取締役監査委員 J.P.モルガン証券、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン執行役員等を経て、2019年に同社入社。常勤監査役等を経て2023年9月より現職。


社外取締役は、篠田真貴子(元株式会社ほぼ日取締役CFO)、北川拓也(元楽天株式会社常務執行役員)、角田大憲(元MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社社外取締役)、冨山和彦(株式会社経営共創基盤IGPIグループ会長)、梅澤真由美(公認会計士梅澤真由美事務所代表)、金野志保(金野志保はばたき法律事務所弁護士)、花沢菊香(ファッションガールズ・フォー・ヒューマニティ理事長)、藤沢久美(株式会社国際社会経済研究所理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Japan Region」および「US」事業等を展開しています。

(1) Japan Region(Marketplace)


国内において、個人間取引(CtoC)のためのフリーマーケットアプリ「メルカリ」等の企画・開発・運営を行っています。誰でも簡単に不用品を売買できる独自の顧客体験を提供し、配送業者との提携による配送オプションも整備しています。

主な収益源は、商品の売買成立時に出品者から受け取る販売手数料(商品代金の10%)です。また、越境取引やBtoCマーケットプレイス「メルカリShops」の運営も行っています。運営は主にメルカリが行っています。

(2) Japan Region(Fintech)


スマホ決済サービス「メルペイ」や、クレジットカード「メルカード」、暗号資産取引サービスなどを提供しています。メルカリの利用実績に基づく独自のAI与信を活用したサービス展開が特徴です。

収益源は、加盟店からの決済手数料、利用者からの与信サービス(定額払い・分割払い等)の手数料、および暗号資産取引に関連する収益等です。運営は主にメルペイおよびメルコインが行っています。

(3) US


米国において、CtoCマーケットプレイス「Mercari」の企画・開発・運営を行っています。日本版と同様にスマートフォン等を通じて個人間で商品を売買できるプラットフォームを提供しています。

収益源は、取引成立時に発生する手数料等です。米国市場における認知度向上とサービス利便性の向上に注力しています。運営はMercari, Inc.が行っています。

(4) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、プロサッカークラブの運営等を行っています。

プロサッカークラブ「鹿島アントラーズ」の運営など、スポーツビジネスを展開しています。運営は主に鹿島アントラーズ・エフ・シーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上収益は順調に拡大傾向にあります。利益面では、2023年6月期に税引前利益および当期利益ともに黒字化を達成し、以降も利益率の改善が続いています。特に2025年6月期は増収に加え、利益率が大きく向上しており、収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 1,720億円 1,874億円 1,926億円
税引前利益 164億円 179億円 291億円
利益率(%) 9.5% 9.5% 15.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 131億円 135億円 261億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率も前期と比較して大きく改善しています。効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 1,874億円 1,926億円
売上総利益 1,297億円 1,383億円
売上総利益率(%) 69.2% 71.8%
営業利益 175億円 278億円
営業利益率(%) 9.3% 14.5%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が399億円(構成比36%)、支払手数料が244億円(同22%)を占めています。売上原価については、従業員給付費用が161億円(構成比30%)を占めています。

(3) セグメント収益


Japan Regionは売上・利益ともに増加し、全社の業績を牽引しています。US事業は減収となったものの、黒字転換を果たしており、収益構造の改善が見られます。その他事業は規模は小さいものの、黒字を確保しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
JapanRegion 1,381億円 1,498億円 306億円 349億円 23.3%
US 437億円 364億円 -53億円 7億円 2.0%
その他 72億円 82億円 1億円 4億円 4.7%
連結(合計) 1,874億円 1,926億円 175億円 278億円 14.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはマイナス、投資CFもマイナス、財務CFはプラスとなっており、本業の営業活動による資金流出と投資活動を、財務活動による調達で賄っている「勝負型」の状態です。なお、同社は金融・決済事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業債権及びその他の債権の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -433億円 -119億円
投資CF -9億円 -314億円
財務CF 321億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションを掲げています。インターネットの力で個人をつなぎ、資源を大切にする社会を作るという創業の想いから、テクノロジーを活用して人々の可能性を広げる(Unleashする)存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


ミッション達成のための行動指針として、「Go Bold(大胆にやろう)」、「All for One(全ては成功のために)」、「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」、「Move Fast(はやく動く)」の4つのバリューを定めています。これらは経営判断から日々の業務に至るまで、同社に関わる全ての意思決定の基礎となっています。

(3) 経営計画・目標


2026年6月期に向け、AI-Native Companyとしての組織基盤構築等を通じて、グループとしての力強い成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。

* 連結売上収益:2,000-2,100億円
* 連結コア営業利益:280-320億円

(4) 成長戦略と重点施策


「増益を伴うトップライン成長」を掲げ、AI等の先進技術活用とグループシナジー創出を推進します。Marketplaceではプロダクト体験の強化と越境取引の拡大、Fintechでは決済・与信利用の増加、USでは黒字維持と再成長を目指します。

* Marketplace:GMV成長率 YoY +3-5%、コア営業利益320-360億円
* Fintech:コア営業利益50-75億円
* US:通期でのGMV YoYプラス成長

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織を体現」を大方針に、I&D(インクルージョン&ダイバーシティ)を推進しています。多様な視点とスキルを持つ人材が活躍できる環境整備や、AI活用による業務生産性の向上、積極的な人材の抜擢・登用を通じて、ミッション達成に向けた組織づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 36.3歳 3.8年 11,763,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.0%
男性育児休業取得率 84.8%
男女賃金差異(全労働者) 32.0%
男女賃金差異(正規) 30.6%
男女賃金差異(非正規) 28.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める外国籍の社員の割合(29.7%)、全社員に占めるエンジニア職社員の割合(38.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界の成長性について


中古品市場やEコマース市場の成長鈍化、法規制、景気動向等の変化により、同社の主力であるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」の流通取引総額が拡大しない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、スポットワーク市場等の新規参入分野においても、市場動向の影響を受けるリスクがあります。

(2) 競合について


CtoCサービス、決済・金融関連事業、スポットワーク市場のいずれにおいても、多数の競合他社が存在し競争が激化しています。より魅力的なサービスや競争力のある条件を提供する他社の出現等により、ユーザー離れや手数料水準の低下が生じた場合、同社の事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制について


資金決済法、割賦販売法、職業安定法など、事業に関連する多様な法規制の適用を受けています。これらの法令遵守はもちろん、将来的な法改正や規制強化への対応が適切に行えない場合、行政処分や事業制約を受ける可能性があり、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) サービスの健全性の維持について


プラットフォーム上で知的財産権侵害や詐欺等の不正行為が行われた場合、同社の信頼性が低下しユーザー離れにつながる恐れがあります。また、「全額補償サポートプログラム」等による対策を行っていますが、想定を超える補償支出やトラブルが発生した場合、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。