※本記事は、コーア商事ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コーア商事ホールディングスってどんな会社?
ジェネリック医薬品の原薬輸入販売と製剤の製造販売・受託製造を一貫して手掛ける医薬品企業グループです。
■(1) 会社概要
1991年にジェネリック医薬品原料等の輸入販売を目的としてコーア商事が設立されました。2015年に持株会社体制へ移行し、コーア商事ホールディングスを設立。2016年には連結子会社が蔵王新工場を新設し、高薬理活性注射剤の製造能力を強化しました。2018年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2020年には同市場第一部(現プライム市場)へ指定替えを果たしています。
同社グループの連結従業員数は304名(単体21名)です。筆頭株主は土師(42.33%)、第2位は創業者が設立した首藤奨学財団(10.92%)、第3位は創業者の首藤利幸氏(5.03%)であり、創業家および関連団体が株式の過半数を保有する安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 土師 | 42.33% |
| 首藤奨学財団 | 10.92% |
| 首藤 利幸 | 5.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は首藤 利幸氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 首藤 利幸 | 代表取締役社長 | 1991年コーア商事設立。同社社長、会長を経て2015年より現職。首藤奨学財団代表理事。 |
| 大塚 里津子 | 取締役副社長 | 2008年コーア商事入社。コーアバイオテックベイ社長等を経て2025年より現職。 |
| 廣野 敏博 | 取締役副社長 | 元小林製薬工業取締役副社長。コーアイセイ社長等を経て2025年より現職。 |
| 小山 登志憲 | 専務取締役 | 元アイロムホールディングス会長。2014年コーア商事入社、2018年より現職。 |
| 小松 美代子 | 常務取締役 | 2006年コーア商事入社。財務経理部長等を経て2025年より現職。 |
| 田中 輝幸 | 取締役 | 元日本化薬医薬事業本部GE戦略部長。2017年入社、2019年より現職。 |
社外取締役は、平尾禎孝(元アルフレッサファーマ取締役常務執行役員)、木下洋(公認会計士)、林恭子(グロービス経営大学院教授)、山岸勇紀(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「原薬販売事業」および「医薬品製造販売事業」を展開しています。
■原薬販売事業
ジェネリック医薬品を製造するための原材料である「原薬」の輸入販売を行っています。商社機能に加え、自社で分析機能を有しており、顧客の研究開発段階からの提案や技術的なサポートも提供しています。主な顧客はジェネリック医薬品メーカーです。
収益は、主にジェネリックメーカーへの原薬販売代金から得ています。運営は主にコーア商事が行っています。
■医薬品製造販売事業
医療用医薬品(ジェネリック医薬品)や一般用医薬品の製造販売、仕入販売および受託製造を行っています。特に高度な技術と設備が必要な高薬理活性注射剤の生産に強みを持っています。主な顧客は医療機関やドラッグストア、製薬メーカー(受託製造)です。
収益は、製品の販売代金および製薬メーカーからの製造受託料から得ています。運営は主にコーアイセイおよびコーアバイオテックベイが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに増加傾向にあります。特に直近の2025年6月期は売上高233億円、経常利益54億円といずれも過去最高を更新し、増収増益基調が継続しています。利益率も20%前後と高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 178億円 | 204億円 | 221億円 | 221億円 | 233億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 38億円 | 41億円 | 44億円 | 54億円 |
| 利益率(%) | 19.1% | 18.4% | 18.6% | 19.7% | 23.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 24億円 | 27億円 | 29億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに伸長しています。営業利益率は前期の19.8%から当期は23.0%へ上昇しており、収益性がさらに向上しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 221億円 | 233億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 77億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.0% | 33.1% |
| 営業利益 | 44億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 19.8% | 23.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.7億円(構成比24.4%)、役員報酬が2.4億円(同10.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は両セグメントともに増収増益となりました。原薬販売事業は売上高146億円、利益32億円で、医薬品製造販売事業は売上高87億円、利益21億円といずれも好調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 原薬販売事業 | 137億円 | 146億円 | 28億円 | 32億円 | 22.0% |
| 医薬品製造販売事業 | 84億円 | 87億円 | 17億円 | 21億円 | 24.6% |
| 連結(合計) | 221億円 | 233億円 | 44億円 | 54億円 | 23.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の一部を投資(投資CFマイナス)に回し、同時に借入返済や配当支払い(財務CFマイナス)を行っていることから、健全な財務運営が行われている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 38億円 |
| 投資CF | -15億円 | -13億円 |
| 財務CF | 8億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「加速する“超高齢社会”で必要とされる医薬品企業であり続けるために」というビジョンのもと、「ジェネリックのベストパートナー」を企業理念として掲げています。医薬品専門商社と特長ある注射剤トップメーカーを目指し、全く新しいタイプの医薬品企業グループを作り上げていくことを経営方針としています。
■(2) 企業文化
「New Business Model Innovation」をコーポレートスローガンに掲げ、安全・安心・安価なジェネリック医薬品の安定的供給を使命としています。また、人材育成においては「考動力(自ら学び、考え、想像力を働かせ、乗り越えていける力)」をコンセプトとし、自律的な成長を促す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けての10カ年長期事業計画を策定し、以下の財務目標を掲げています。
* 連結売上高:400億円
* 連結営業利益:80億円
■(4) 成長戦略と重点施策
長期事業計画の実現に向け、原薬販売事業では「原薬輸入商社から医薬品専門商社へ」、医薬品製造販売事業では「特長のある注射剤国内トップメーカーへ」の進化を目指しています。具体的には、海外医薬品の輸入販売やライセンスイン活動の推進、蔵王工場の生産能力強化やCDMO(医薬品開発製造受託機関)戦略の推進に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「考動力」をコンセプトに従業員の成長を促し、多様性を尊重できる人材の育成を目指しています。採用においてはキャリア採用を積極的に行い、属性にとらわれない人材登用を推進しています。また、社内コミュニケーションの活性化によりエンゲージメント向上と生産性向上を図る方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 49.0歳 | 5.0年 | 7,168,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原薬の調達に関するリスク
医薬品原薬は主に海外から継続的に調達しており、市況や為替相場の変動により仕入価格が急激に変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外サプライヤーの事情や現地政情等により調達が遅延・困難となった場合も同様の影響が懸念されます。
■(2) 市場および顧客動向の変化
特定の取引先への依存度が比較的高く、顧客の販売戦略変更や在庫調整等の影響を受ける可能性があります。特に腎臓疾患用治療製剤への依存度が高いため、技術革新や代替製剤の出現により需要が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 品質問題の発生
医薬品の製造・輸入において品質管理には万全を期していますが、予期せぬ不具合や異物混入等により製品回収(リコール)や販売中止、損害賠償が発生した場合、社会的信用の失墜とともに業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) 薬価改定の影響
医療用医薬品の公定価格である薬価は定期的に改定(引き下げ)されるため、販売価格の低下や利益率の縮小が生じる可能性があります。政府による医療保険制度の抜本的な見直し等も含め、制度変更が業績に影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。