※本記事は、株式会社アイリックコーポレーション の有価証券報告書(第30期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年09月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイリックコーポレーションってどんな会社?
来店型保険ショップ「保険クリニック」の運営と、独自開発の保険分析システムの外販を主軸とする企業です。
■(1) 会社概要
1995年に設立され、1999年に日本初の来店型保険ショップ「保険クリニック」を開始しました。2004年には独自の保険分析・検索システム「保険IQシステム」を完成させ、FC展開を開始。2018年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。その後、2023年にはライフアシストを子会社化し、店舗網を拡大しています。
現在の連結従業員数は643名(単体408名)です。大株主構成については、筆頭株主は投資を事業目的とする海外法人で、第2位は同社創業者で社長の勝本竜二氏、第3位は大手生命保険会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Nihon IFA Partners Ltd. | 29.63% |
| 勝本 竜二 | 14.20% |
| 住友生命保険相互会社 | 6.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは勝本竜二氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 勝本 竜二 | 代表取締役社長CEO | メットライフ生命等を経て1995年同社設立。2025年より現職。 |
| 建部 賢二郎 | 取締役副社長 | SOMPOひまわり生命等を経て2005年同社入社。2025年より現職。 |
| 紀伊 保宏 | 取締役COO | プレジデンツ・データ・バンク等を経て2022年同社入社。2025年より現職。 |
| 半澤 勝広 | 取締役CCO | AIG損害保険等を経て2012年同社入社。2025年より現職。 |
| 勝本 伸弘 | 取締役CTO | カシオヒューマンシステムズ等を経て2005年同社入社。2025年より現職。 |
| 相原 尚昭 | 取締役CFO | みずほ証券等を経て2005年同社入社。2025年より現職。 |
社外取締役は、髙橋 和之(元メットライフ生命保険代表執行役社長)、丹保 人重(元三井住友海上あいおい生命保険社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「保険販売事業」、「ソリューション事業」および「システム事業」を展開しています。
■(1) 保険販売事業
来店型保険ショップ「保険クリニック」の直営店運営および法人営業、訪問販売を行っています。独自の「保険IQシステム」を活用し、顧客の加入保険の分析や最適な商品の検索・比較・提案を行うコンサルティング販売が特徴です。
収益源は、提携する保険会社の商品を販売することで得られる保険手数料です。運営は主にアイリックコーポレーションと、子会社のライフアシストが行っています。
■(2) ソリューション事業
金融機関や保険代理店、企業代理店に対し、保険販売支援システム「ASシステム」や「AS-BOX」を提供しています。また、「保険クリニック」のフランチャイズ(FC)本部として、加盟店へのシステム提供や教育・研修、店舗運営サポートを行っています。
収益源は、システム導入企業からの登録料・月額利用料、およびFC加盟店からの初期登録料・基本料金・店舗料金・ロイヤリティ等です。運営は主にアイリックコーポレーションが行っています。
■(3) システム事業
保険分析・販売支援システムの受託開発や、AI技術を活用した非定型帳票対応のOCR(光学的文字認識)システム「スマートOCR」の開発・販売を行っています。
収益源は、システム・ソフトウェアの受託開発費や、「スマートOCR」等の提供先企業からのサブスクリプション方式またはリカーリング方式による使用料です。運営は主に子会社のインフォディオが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に右肩上がりで推移しており、直近5期間で約2倍の規模に成長しています。利益面でも、一時的な変動はあるものの回復傾向にあり、直近では経常利益率も8.0%まで改善しています。事業規模の拡大とともに収益性も高まっており、順調な成長トレンドにあると言えます。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 46億円 | 52億円 | 60億円 | 79億円 | 94億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 4億円 | 2億円 | 5億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 8.1% | 8.3% | 3.2% | 6.8% | 8.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 0.2億円 | 4億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約19%増加し、売上総利益も順調に伸長しています。営業利益は約5億円から約7億円へと大幅に増加し、営業利益率は6.3%から7.9%へ改善しました。売上の拡大が利益の押し上げに寄与しており、収益構造が強化されていることがわかります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 94億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 74億円 |
| 売上総利益率(%) | 78.6% | 78.2% |
| 営業利益 | 5億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 7.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が28億円(構成比43%)、地代家賃が8億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となりました。主力である保険販売事業は売上が約10億円増加しましたが、先行投資等により減益となりました。一方、ソリューション事業とシステム事業は増収増益を達成しており、特にシステム事業は大幅な増収により黒字転換を果たし、全体の利益成長に大きく貢献しました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 保険販売事業 | 48億円 | 58億円 | 6億円 | 5億円 | 8.6% |
| ソリューション事業 | 22億円 | 22億円 | 6億円 | 7億円 | 33.3% |
| システム事業 | 9億円 | 14億円 | -0.1億円 | 2億円 | 12.1% |
| 連結(合計) | 79億円 | 94億円 | 5億円 | 7億円 | 7.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アイリックコーポレーションは、営業活動で得た資金を増加させ、事業を拡大しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金が潤沢であることを示しています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資や事業買収を行っています。財務活動では、株主への配当や借入金の返済など、資金調達と返済のバランスを取っています。これらの活動を通じて、同社は安定的な資金繰りを実現しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 11億円 |
| 投資CF | -7億円 | -5億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「三者利益の共存」を企業理念として掲げています。これは、お客様、保険会社(メーカー)、代理店(ディーラー)の三者が協力し合い、お客様の利益を最大限確保することを目指すものです。代理店としての生産性を高め、顧客本位の運営を行うことで、保険会社の収益やブランド価値向上にも貢献する姿勢を示しています。
■(2) 企業文化
同社は、保険の総合コンサルティング企業として、最良のサービス提供を通じて保険流通を「良循環化」させ、真のお客様利益を守ることを重視しています。また、全従業員の物心両面の幸せを追求し、誇りを持てる会社であり続けることを目指しており、個人の専門性向上と働きやすい環境づくりを推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年6月期を初年度とする「3か年計画」を策定しています。事業拡大と企業価値向上を目指し、売上高および営業利益を重要な経営指標として位置づけています。
* 2026年6月期 売上高:112億8800万円
* 2026年6月期 営業利益:8億4400万円
* 2026年6月期 経常利益:8億4800万円
■(4) 成長戦略と重点施策
更なる成長と資本効率の両立を目指し、「保険クリニック」ブランドでの店舗数、成約件数、顧客満足度の向上を図ります。また、システム事業の「ASシリーズ」を保険業界特化型のバーティカルSaaSとして確立するため、課題解決型プロダクトの開発を推進します。これらにより増収増益を見込んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を企業価値向上の重要な資本と位置づけ、適正な人事評価により働きがいを高める方針です。専門知識・スキルの向上を通じて人材総合力の底上げを図り、顧客満足度を高めることを目指しています。また、柔軟な働き方や健康保持・増進に取り組みやすい職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 41.2歳 | 5.7年 | 5,392,436円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.4% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 45.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(6.8時間)、女性管理職者数(27人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 保険会社による保険手数料率変更
保険販売事業の主たる収入は保険手数料ですが、保険会社の手数料規定の変更により、受領する手数料率が変動する可能性があります。保険会社の営業政策や評価基準の変更があった場合、同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) システムセキュリティ
顧客情報を扱う「保険IQシステム」等はセキュリティ対策を行っていますが、外部攻撃や人為的ミスにより情報漏洩が発生する可能性があります。万一漏洩が生じた場合、信用の失墜や損害賠償請求により、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 競合及び市場規模
来店型保険ショップ市場への異業種参入による競争激化や、少子高齢化による保険市場全体の伸び悩みがリスクとして挙げられます。魅力的なサービス提供ができずに顧客が減少した場合、事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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