ブロードバンドセキュリティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ブロードバンドセキュリティ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する情報セキュリティ専門企業です。脆弱性診断や情報漏えい対策、コンサルティング等のセキュリティサービスをワンストップで提供しています。第26期は営業戦略の転換期にあたり、売上高61億円、経常利益2.5億円の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社ブロードバンドセキュリティ の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ブロードバンドセキュリティってどんな会社?


セキュリティ監査、脆弱性診断、情報漏えい対策支援を主軸に、独立系の強みを活かしたサービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社の源流は2000年に設立されたブロードバンド・エクスチェンジですが、実質的な事業開始は1999年設立のインターネットシーアンドオーに遡ります。2004年の合併を経て現在の事業基盤を確立し、2006年に現社名へ変更するとともにSBIグループの資本を受け入れました。その後、2018年にジャスダック(現・東証スタンダード)へ上場を果たし、2021年にはモーニングスター(現・SBIグローバルアセットマネジメント)よりゴメス・コンサルティング事業を承継するなど、事業拡大を続けています。

同社(単体)の従業員数は239名です。大株主の構成は、筆頭株主が同業で資本業務提携先の事業会社、第2位がシステムインテグレーターを傘下に持つ持株会社、第3位がSBIグループのインキュベーション企業となっています。

氏名 持株比率
グローバルセキュリティエキスパート 22.62%
IDホールディングス 21.57%
SBIインキュベーション 15.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は滝澤貴志氏が務めています。社外取締役比率は約45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
滝澤 貴志 代表取締役社長 IRIコミュニケーションズ(現同社)入社後、営業や管理部門の要職を歴任。管理本部長、COOを経て2021年より現職。
森澤 正人 専務取締役 ゴメス・コンサルティング(現SBIグローバルアセットマネジメント)CEO兼COOなどを経て、2025年より現職。
田仲 克己 専務取締役 新光証券(現みずほ証券)経営企画部長などを経て同社入社。セキュリティサービス本部長等を歴任し、2025年より現職。
岡田 俊弘 常務取締役 同社入社後、東日本営業本部長、情報漏えいIT対策ビジネス管掌などを歴任し、2024年より現職。
谷 直樹 取締役 日本コンピュウェアなどを経て同社入社。管理本部長、執行役員を経て2024年より現職。
齊藤 義人 取締役 ピアットコムなどを経て同社入社。セキュリティサービス本部長、上席執行役員を経て2025年より現職。


社外取締役は、田中喜一(サービス&セキュリティ監査役)、青柳史郎(グローバルセキュリティエキスパート社長)、竹原智子(インフォメーション・ディベロプメント取締役)、大内拓也(兼松エレクトロニクス上席執行役員)、上野宣(トライコーダ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「セキュリティサービス事業」の単一セグメントで事業を展開しており、サービスの内容により以下の3つに分類されます。

(1) セキュリティ監査・コンサルティングサービス


クレジットカード業界のセキュリティ基準「PCI DSS」の監査や、情報セキュリティ体制構築の支援を行います。現状分析から対策の抽出、社内ルールの策定までをトータルでサポートするほか、Webサイトのランキングや分析を行うゴメス・コンサルティングサービスも提供しています。

この事業の収益は、顧客企業から受け取る監査費用やコンサルティング料、調査分析料によって構成されています。運営は主にブロードバンドセキュリティが行っています。

(2) 脆弱性診断サービス


企業のWebサイトやシステムに対し、エンジニアが擬似的なサイバー攻撃を行うことで安全性を診断します。健康診断のように複数のメニューを用意し、複合的なアプローチで脆弱性を特定し、解決策を提案します。スマートフォンアプリやIoT機器などへの診断も実施しています。

収益は、診断対象となるシステムやWebサイトの規模・数に応じた診断サービス料として顧客企業から受領します。運営は主にブロードバンドセキュリティが行っていますが、一部業務は外注することもあります。

(3) 情報漏えいIT対策サービス


24時間365日体制でセキュリティ機器を監視・運用するマネージドサービスや、クラウド型メールセキュリティ、マルウェア検知・遮断サービスなどを提供しています。万が一の事故発生時に対応するデジタルフォレンジック(緊急駆けつけサービス)も含まれます。

収益は、機器の販売代金や初期導入費用のほか、月額課金形式の監視運用サービス料、ライセンス利用料などから構成されます。運営は主にブロードバンドセキュリティが行っており、セキュリティ機器やソフトウエアの一部は外部メーカーから仕入れています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は拡大傾向にありましたが、直近の第26期では減少に転じました。経常利益と当期純利益についても、第25期までは増加トレンドでしたが、第26期は減益となっています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 43.4億円 52.2億円 59.0億円 64.6億円 61.0億円
経常利益 2.0億円 5.0億円 5.3億円 6.9億円 2.5億円
利益率(%) 4.5% 9.5% 8.9% 10.8% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.2億円 3.5億円 4.2億円 4.6億円 1.4億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益、営業利益ともに減少しています。特に営業利益は前年比で大きく低下しており、利益率も低下しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 64.6億円 61.0億円
売上総利益 20.7億円 17.5億円
売上総利益率(%) 32.1% 28.7%
営業利益 6.9億円 2.6億円
営業利益率(%) 10.7% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.0億円(構成比33%)、業務委託費が1.8億円(同12%)を占めています。売上原価においては、労務費が16億円(構成比36%)、外注費が12億円(同27%)を占めており、人件費と外部リソースへの支出が費用の主要部分となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、サービス区分別の売上高を見ると、全区分で前年を下回っています。特に主力の情報漏えいIT対策サービスや脆弱性診断サービスの減少が全体の減収に影響しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
セキュリティ監査・コンサルティングサービス 17.0億円 16.0億円
脆弱性診断サービス 17.7億円 16.1億円
情報漏えいIT対策サービス 29.9億円 28.9億円
連結(合計) 64.6億円 61.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ブロードバンドセキュリティは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の状況を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却といった活動による資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する活動による資金の動きを示しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 9.0億円 1.0億円
投資CF -2.3億円 -3.0億円
財務CF -1.2億円 -2.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「便利で安全なネットワーク社会を創造する」というビジョンを掲げています。利便性と安全性というトレードオフの関係にある課題に対し、便利でありながら安全を担保できるネットワーク社会の創造に貢献するという決意が込められています。また、お客様の情報資産を守り成長を支援することなどを価値と位置付けています。

(2) 企業文化


同社は、特定のメーカー系列に属さない「独立系」であることを強みとし、制約を受けずに最適なサービスを提供する姿勢を重視しています。また、セキュリティ機器等の効果を最大化するために、十分なスキルを持った人員によるサービス提供(組織的な運用・監視体制)を徹底することを重要な戦略としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、収益性の向上に重点を置き、「売上高営業利益率」の向上を掲げています。具体的な数値目標は記載されていませんが、一人当たりの生産性向上や、標準勤務時間を6.5時間とすることによる社員満足度向上などを通じて、利益率の改善に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中期的な事業戦略として、既存事業の継続的拡大と利益率向上、人的資本への積極投資、新規事業への参入と収益化の3本柱を掲げています。具体的には、監査・コンサルティング営業を強化し、そこから派生する診断や対策サービスへの展開を図る総合ソリューション提案への転換を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、専門性と多様性を重視した採用を行い、適材適所の配置を進めています。人材育成においては、東北セキュリティ診断センターを中核とし、1日の所定労働時間を6.5時間として残りの1時間を「みらい時間(学習・資格取得等)」に充てる制度を導入しています。また、株式給付信託によるインセンティブ付与も行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 42.0歳 7.6年 7,449,127円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性育児休業取得率、男女賃金差異については、公表基準に該当していないため、記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者比率(18.9%)、採用比率における女性の割合(16.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応に関するリスク


サイバー攻撃の手法は日々進化しており、標的型メール攻撃やランサムウェアなど新たな脅威が出現しています。同社はこれらに対抗する新サービスや技術の導入に努めていますが、対応が遅れて他社に先行された場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品のバグや欠陥の発生によるリスク


同社が提供するマネージドサービス等は海外製品を利用したプラットフォーム上で提供されることがあります。十分な検証を行っていますが、サービス開始後に重大なバグや欠陥が発生し、顧客に著しい損害を与えた場合、契約解除や売上減少につながる可能性があります。

(3) 人材の確保・育成に関するリスク


同社のサービスは技術者の役務提供に依存しており、事業成長には人材確保が不可欠です。しかし、セキュリティ分野のエンジニアは不足しており、採用競争が激化しています。十分な人材を確保・育成できない場合、中長期的な事業計画の達成が困難になる可能性があります。

(4) 当社情報セキュリティに関するリスク


サービス提供の過程で顧客の機密情報を扱うため、情報漏えいは重大なリスクとなります。教育やアクセス権限管理等の対策を講じていますが、万が一顧客情報の漏えいが発生した場合、信用失墜や損害賠償により、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。