日本情報クリエイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本情報クリエイト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する同社は、不動産業界向けに「仲介ソリューション」および「管理ソリューション」等の業務支援クラウドサービスを提供しています。直近の業績は、ストック型収益の積み上げにより売上高は前期比14.4%増、経常利益は35.5%増と増収増益を達成しています。


※本記事は、日本情報クリエイト株式会社 の有価証券報告書(第31期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本情報クリエイトってどんな会社?


不動産業界のDXを推進するIT企業です。管理会社や仲介会社向けに、業務効率化や集客支援を行うクラウドサービスを一気通貫で提供しています。

(1) 会社概要


1994年に宮崎県都城市で設立され、建築見積システムや賃貸物件総合管理システム「賃貸革命」を発売しました。その後、不動産仲介業務支援サービスなどを拡充し、2020年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。2022年には株式会社リアルネットプロを完全子会社化(2024年に吸収合併)するなど、事業基盤の拡大を進めています。

現在の連結従業員数は306名、単体でも306名です。筆頭株主は同社代表取締役会長である米津健一氏の資産管理会社で、第2位は米津氏本人となっており、創業家が過半数の株式を保有するオーナー企業です。

氏名 持株比率
NJC 40.97%
米津 健一 29.97%
後藤 吉行 1.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は辻村都雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
米津 健一 代表取締役会長 1994年8月に同社を設立し代表取締役社長に就任。2023年9月より現職。
辻村 都雄 代表取締役社長 元リクルート執行役員、元メイテックフィルダーズ代表取締役社長。2023年7月に同社入社し、同年9月より現職。
丸田 英明 取締役開発・コーポレート統括サポート部長 2009年同社入社。開発部長、DX推進部長、人事部長等を歴任し、2025年7月より現職。
瀬之口 直宏 取締役開発・コーポレート統括管理部長 2010年同社入社。管理部長等を歴任し、2025年7月より現職。
渡邉 良 取締役事業統括 事業部長 元リクルート、元メディアハウスホールディングス執行役員。2023年9月に同社入社し、2024年7月より現職。


社外取締役は、山元理(山元経営診断事務所代表)、三浦洋司(公認会計士)、古瀨智子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「仲介ソリューション」「管理ソリューション」および「その他」事業を展開しています。

(1) 仲介ソリューション


不動産仲介会社に対し、物件情報の仕入れから集客、申込、契約に至る業務全体を支援するクラウドサービス群を提供しています。主な製品には、業者間物件流通サービス「リアプロBB」「リアプロ」や、自社ホームページ制作支援ツール「WebManagerPro」、電子入居申込サービス等があります。

収益は、サービスの利用料や初期導入費用等として、主に不動産仲介会社から受領しています。運営は主に日本情報クリエイトが行っています。

(2) 管理ソリューション


不動産管理会社に対し、賃貸管理業務全体を支援するクラウドサービス群を提供しています。主力製品の「賃貸革命」は、契約情報や入出金管理、オーナー送金等の業務を自動化・一元管理するシステムです。その他、入居者・オーナー向けアプリやAIを活用したオーナー提案支援サービスも展開しています。

収益は、ソフトウェアのライセンス料、クラウドサービスの月額利用料、保守サービス料等として、不動産管理会社から受領しています。運営は日本情報クリエイトが行っています。

(3) その他


上記ソリューションに含まれないサービスを提供しています。具体的には、不動産データの活用や一部のオプションサービスなどが含まれます。

収益は、サービスの利用料等として顧客から受領しています。運営は日本情報クリエイトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第28期より連結決算を開始しており、直近4期間の推移を見ると、売上高は毎期増加を続けています。利益面でも、第29期に一時的な減少が見られましたが、その後は回復・成長傾向にあり、直近では経常利益率が約20%に達しています。当期純利益も増益基調を維持しています。

項目 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 31億円 38億円 44億円 51億円
経常利益 5億円 4億円 7億円 10億円
利益率(%) 17.6% 10.0% 16.7% 19.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 2億円 4億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は60%台後半で安定的に推移しており、営業利益率も前期の16.0%から当期は19.8%へと改善しています。販管費は増加していますが、増収効果がそれを上回っています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 44億円 51億円
売上総利益 29億円 35億円
売上総利益率(%) 65.5% 69.5%
営業利益 7億円 10億円
営業利益率(%) 16.0% 19.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比31%)、のれん償却費が1億円(同4%)を占めています。売上原価においては、外注加工費が6億円(構成比41%)、クラウド経費が6億円(同38%)となっています。

(3) セグメント収益


仲介ソリューション、管理ソリューションともに増収となりました。特に仲介ソリューションは前期比20.4%増と大きく伸長しています。管理ソリューションもストック収益の積み上げにより堅調に推移しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
仲介ソリューション 17億円 20億円
管理ソリューション 27億円 30億円
その他 0.5億円 0.5億円
連結(合計) 44億円 51億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入返済を行いつつ、投資は手元資金で賄っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 6億円 8億円
投資CF -5億円 -10億円
財務CF -3億円 -0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と未来とデジタル技術を結ぶ真の価値を創造し、社会に貢献する」を経営理念に掲げています。また、中期ビジョンとして「テクノロジーで不動産領域に革新的プラットフォームを創造する」ことを目指し、不動産業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

(2) 企業文化


「全員経営」「共に育つ環境」「挑戦できる環境」を組織運営方針として掲げています。また、経営理念に基づく行動指針として「クレド」を制定し、社員の共通の価値観として運用しています。これらを通じて、各個人の主体的な行動と組織全体の価値観の統一を図っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(FY2025-FY2027)については、サービス統合に伴う影響等を考慮し、最終年度の数値目標は非公表としています。しかし、中期的な成長戦略に変更はなく、今後も増収増益を図っていく方針です。重要な経営指標として、売上高および経常利益の対前年増加額を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


仲介ソリューションでは業者間物件流通サービスのシェア拡大を図り、顧客基盤を強化して関連サービスのクロスセルを推進します。管理ソリューションでは「賃貸革命」をベースに新規開拓と既存顧客への提案強化を行います。また、AIやビッグデータを活用した新規事業の開発や、エリア戦略・顧客細分化による営業効率の向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全員経営」を目指し、社員一人ひとりの強みを活かしたキャリア形成とエンパワーメントを図っています。KPIによる目標管理やキャリア申告制度、HRシステムによる適性分析を活用し、個人の成長と組織の発展を両立させる育成方針をとっています。また、エンゲージメント調査や表彰制度を通じて、働きがいのある環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.5歳 6.4年 5,300,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.9%
男女賃金差異(正規雇用) 61.0%
男女賃金差異(非正規) 35.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者の年次有給休暇の年間平均取得率(71.51%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界および顧客の動向に関するリスク


同社の顧客は不動産業界に集中しているため、同業界の景気変動やIT投資意欲の減退が経営成績に影響を与える可能性があります。また、不動産業界に対する法規制の変化や、業界各社の対応の変化も業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社や技術革新による陳腐化


技術革新のスピードが速い業界であり、想定以上の新技術やサービスの普及により、同社製品が陳腐化する恐れがあります。また、競合他社との競争激化による価格下落や、競合製品の性能強化が進んだ場合、市場シェアや収益性に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保に関するリスク


事業の継続的な発展には優秀な技術者や営業担当者の確保が不可欠です。人材採用が困難になったり、既存の人材が流出したりした場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。また、人材確保・育成費用の増加が利益を圧迫する可能性もあります。

(4) システム障害に関するリスク


同社のサービスはインターネット環境に依存しており、自然災害やサイバー攻撃等によりシステム障害が発生した場合、事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。代替的なサービス提供手段の確保が困難な場合、業績への悪影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。