テスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、「再生可能エネルギーの主力電源化」等を掲げ、エンジニアリング事業およびエネルギーサプライ事業を展開しています。直近の業績は、売上高が増加した一方で、デリバティブ評価損等の影響により経常損益が赤字となり、最終利益も減益となりました。


※本記事は、テスホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テスホールディングスってどんな会社?


再生可能エネルギー発電所の開発・運営や省エネ設備のエンジニアリング事業を展開し、脱炭素社会の実現に向けた総合的なエネルギーソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


1979年に前身となる阪和熱水工業(現テス・エンジニアリング)が設立され、省エネルギー設備のエンジニアリングを開始しました。2009年にテス・テクノサービス(現同社)が設立され、2018年に持株会社体制へ移行し現商号へ変更しました。2021年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年にプライム市場へ移行しました。

連結従業員数は471名、単体では65名です。大株主構成は、筆頭株主が役員の資産管理会社である合同会社ストーンサイド、第2位が取締役会長の石脇秀夫氏、第3位が役員の資産管理会社である合同会社たかおか屋となっており、創業者および経営陣による保有比率が高いのが特徴です。

氏名 持株比率
合同会社ストーンサイド 7.37%
石脇 秀夫 6.80%
合同会社たかおか屋 6.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は山本 一樹氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
石脇 秀夫 取締役会長取締役会議長 2004年テス・エンジニアリング入社。2009年同社社長。2012年当社社長。2022年9月より現職。
山本 一樹 代表取締役社長 1993年テス・エンジニアリング入社。同社取締役、エナジーアンドパートナーズ代表等を経て、2022年9月より現職。
髙崎 敏宏 専務取締役 1995年テス・エンジニアリング入社。2017年同社社長(現任)。2022年9月より現職。
吉田 麻友美 取締役ESG・女性活躍推進担当兼人財戦略本部長 米国日本旅行北米販売センター、中央青山監査法人等を経て、2022年当社入社。2024年1月より現職。
藤井 克重 取締役(監査等委員) エム・ティー・サービスを経て、1987年阪和熱水工業(現テス・エンジニアリング)入社。同社取締役等を経て2021年9月より現職。


社外取締役は、大倉 博之(元三菱UFJ銀行)、井上 正基(元岡谷鋼機)、濱本 晃郎(元三菱重工業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンジニアリング事業」「エネルギーサプライ事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) エンジニアリング事業


コージェネレーションシステム、太陽光発電システム、蓄電システム及びユーティリティ設備等の設計、調達、施工(EPC)を行っています。省エネルギー領域と再生可能エネルギー領域を主たる事業領域とし、工場の省エネ診断や設備の提案を行っています。

収益は、顧客から受領する設備工事代金等が主な源泉です。案件ごとの都度受注(フロー)型ビジネスモデルです。運営は主にテス・エンジニアリングや共立エンジニアリングが行っています。

(2) エネルギーサプライ事業


再生可能エネルギー発電所の所有・運営・売電、オペレーション&メンテナンス(O&M)、電気の小売供給及び資源循環型バイオマス燃料供給を行っています。これらは長期安定的な収益が見込めるストック型ビジネスとして位置づけられています。

収益は、電力会社等への売電収入、顧客からのO&M委託料、電気料金、燃料販売代金等が源泉です。運営はテス・エンジニアリング、テス・アセットマネジメント、プライムソーラー等の連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にありますが、利益面では2025年6月期に経常損失を計上するなど変動が見られます。当期利益についても、2023年6月期をピークに減少傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 342億円 349億円 344億円 306億円 367億円
経常利益 38億円 47億円 55億円 77億円 -6億円
利益率(%) 11.2% 13.3% 16.0% 25.0% -1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 27億円 36億円 12億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益率は低下しました。営業利益は確保したものの、為替予約に係るデリバティブ評価損等の営業外費用が増加した影響で経常損益が悪化しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 306億円 367億円
売上総利益 66億円 75億円
売上総利益率(%) 21.4% 20.3%
営業利益 24億円 25億円
営業利益率(%) 7.7% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比26%)、支払手数料が6億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


エンジニアリング事業は省エネルギー系設備のEPC等が好調で大幅な増収増益となりました。エネルギーサプライ事業も新規発電所の連結子会社化や売電収入の増加により増収増益を達成しました。全体として営業利益ベースでは両セグメントとも好調に推移しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
エンジニアリング事業 132億円 167億円 0.3億円 4億円 2.2%
エネルギーサプライ事業 175億円 200億円 17億円 24億円 12.3%
連結(合計) 306億円 367億円 24億円 25億円 6.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -0.4億円 78億円
投資CF -155億円 -92億円
財務CF 184億円 38億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Total Energy Saving & Solution」を経営理念として掲げています。顧客重視・顧客満足を第一に考え、ESGとコンプライアンスを経営の根幹に置くことでSDGsの実現に貢献し、世界的なエネルギーの脱炭素化に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「顧客重視・顧客満足」を企業理念とし、すべてのステークホルダーを顧客と捉える文化があります。また、誰にとっても働きやすく、誰もが働きがいを感じ続けられる環境を目指しており、チャレンジを恐れず持続的に成長・進化し続ける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「TX2030」において、2030年6月期を目標とした数値目標を設定しています。注力事業分野への成長投資と経営リソースの集中により、高収益化と企業価値の向上を目指しています。

* 売上総利益:215億円
* 営業利益:134億円
* ROE:11.7%

(4) 成長戦略と重点施策


「再生可能エネルギーの主力電源化」「省エネルギーの徹底」及び「エネルギーのスマート化」を注力領域としています。具体的には、系統用蓄電所の開発、FIT太陽光発電所のFIP制度への移行と蓄電池併設、資源循環型バイオマス燃料事業の拡大などに取り組む方針です。

* 累積施工容量(系統用蓄電所):700MW
* 自社FIP転再エネ容量:113MW
* バイオマス燃料供給量:50万t/年

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「脱炭素のリーディングカンパニー」の実現に向け、多様な視点や価値観を尊重し、経験・技能・キャリアが異なる人材を積極的に採用する方針です。人材育成においては「現場力」「知識力」「ひらめき力」の3つを重視し、体系的な研修制度を通じて組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 37.1歳 8.1年 5,739,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金(通勤手当を除く)を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 54.6%
男女賃金差異(正規雇用) 52.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.7%


※女性管理職比率については、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(23.2%)、有給休暇取得率(68.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制の変更リスク


建設業法、電気事業法、再エネ特措法等の法的規制を受けて事業を行っています。これらの法令等の改廃や予期せぬ規制強化、あるいはFIT制度における買取価格の引き下げ等の制度変更があった場合、事業活動の制約や収益性の低下など、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業投資に関するリスク


再生可能エネルギー発電所の開発や取得等の事業投資を継続的に実施しています。これらの投資において、想定通りに事業が進展しない場合や開発資金が不足する場合、または未認識の瑕疵等が判明した場合には、減損損失の計上等により業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 資金調達及び金利変動リスク


事業資金の多くを金融機関からの借入により調達しており、有利子負債の割合が高い水準にあります。金利が上昇した場合や信用力の低下により柔軟な資金調達が困難になった場合、金利負担の増加や事業活動の制約が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 価格変動リスク


建築資材や燃料価格、電力取引価格の変動リスクがあります。特に電気の小売供給事業においては、卸電力取引所からの調達価格が高騰した場合、相対取引や販売価格への転嫁で吸収しきれず、業績が悪化する可能性があります。また、バイオマス燃料等の調達価格変動も収益に影響します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。