※本記事は、DNホールディングス株式会社の有価証券報告書(第4期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. DNホールディングスってどんな会社?
社会資本整備を支える総合建設コンサルタントグループです。橋梁・道路設計や地質調査を主力としています。
■(1) 会社概要
2021年に大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントの共同株式移転により設立され、東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)に上場しました。2023年には子会社のダイヤコンサルタントがエーシーイー試錐工業を子会社化し、同年7月に大日本コンサルタントがダイヤコンサルタントを吸収合併して「大日本ダイヤコンサルタント」が発足しました。2024年にはウエルアップを完全子会社化するなど、組織再編とM&Aを進めています。
同グループの連結従業員数は1,447名ですが、持株会社である同社単体には専属の従業員はいません。筆頭株主はDNホールディングス社員持株会で、第2位は事業会社の光通信、第3位はDNホールディングス社友持株会となっており、従業員持株会が上位を占める安定的な株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| DNホールディングス社員持株会 | 10.03% |
| 光通信 | 7.11% |
| DNホールディングス社友持株会 | 5.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は新井伸博氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新井 伸博 | 代表取締役社長執行役員 | 1980年大日本コンサルタント(現大日本ダイヤコンサルタント)入社。同社構造事業部長、技術統括担当、代表取締役社長等を経て、2021年7月より現職。 |
| 野口 泰彦 | 代表取締役副社長執行役員 | 1978年通商産業省入省。三菱マテリアル執行役員、ダイヤコンサルタント(現大日本ダイヤコンサルタント)代表取締役社長等を経て、2021年7月より現職。 |
| 原田 政彦 | 取締役副社長執行役員 | 1985年大日本コンサルタント(現大日本ダイヤコンサルタント)入社。同社常務執行役員、経営企画本部長等を経て、2023年7月同社代表取締役社長(現任)。2024年9月より現職。 |
| 吉村 実義 | 取締役(監査等委員) | 1982年ダイヤコンサルタント(現大日本ダイヤコンサルタント)入社。同社ジオエンジニアリング事業本部長、取締役等を経て、2021年7月より現職(常勤)。 |
社外取締役は、林田和久(公認会計士・税理士)、井上毅(元日本経済研究所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合建設コンサルタント事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建設コンサルタント事業
橋梁、道路、河川、砂防などの社会資本整備に関する調査、計画、設計、工事監理などのコンサルティングサービスを提供しています。主な顧客は国土交通省や地方自治体、高速道路会社などの官公庁および公的機関です。
収益は、顧客からの業務委託契約に基づく報酬として受け取ります。運営は主に中核事業会社である大日本ダイヤコンサルタント株式会社が行っており、株式会社ウエルアップなども事業を担っています。
■(2) 地質調査事業
地質、地盤、地下水、資源に関する調査および解析業務を提供しています。土木設計や防災対策の基礎データとなる地質情報の収集・分析を行い、インフラ整備や資源開発を支援しています。
収益は、調査・解析業務の対価として顧客から受け取ります。運営は主に大日本ダイヤコンサルタント株式会社および有限会社エーシーイー試錐工業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は321億円から370億円へと順調に拡大しています。経常利益も増減はあるものの、直近では27億円と高い水準を記録しており、利益率も7%台を維持しています。全体として、事業規模の拡大とともに利益創出能力も向上している傾向にあります。
| 項目 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 321億円 | 326億円 | 341億円 | 370億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 24億円 | 20億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 7.2% | 5.8% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 18億円 | 16億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上原価率は微減傾向にあり、利益率の改善に寄与しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、営業利益および営業利益率は前期間を上回っており、収益性が高まっていることが分かります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 341億円 | 370億円 |
| 売上総利益 | 107億円 | 120億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.4% | 32.5% |
| 営業利益 | 19億円 | 27億円 |
| 営業利益率(%) | 5.7% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が54億円(構成比58%)、従業員給料及び手当が34億円(同37%)を占めています。売上原価においては、原価の詳細は記載されていませんが、技術者の人件費や外注費が主要な構成要素であると考えられます。
■(3) セグメント収益
建設コンサルタント事業は売上高が増加し、グループ全体の成長を牽引しています。地質調査事業は売上高が減少しており、事業ごとの明暗が分かれています。全体としては建設コンサルタント事業の好調により増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 建設コンサルタント事業 | 321億円 | 356億円 |
| 地質調査事業 | 51億円 | 49億円 |
| 連結(合計) | 341億円 | 370億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金及び設備投資資金を内部資金及び銀行借入で調達しています。
営業活動では、本業で獲得した資金が大幅に増加しました。投資活動では、設備投資や有価証券取得等で資金を使用しましたが、一部回収もありました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等で資金を使用しました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -19億円 | 30億円 |
| 投資CF | -1億円 | -5億円 |
| 財務CF | -1億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「大地と空間、人と社会の可能性を引き出し、未来を拓く」を企業理念として掲げています。この理念のもと、「価値観」に基づき、「ビジョン」の実現をグループとしての基本目標としています。「信頼のもと、社会になくてはならない企業グループに」なることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「誠実に、現場、人、失敗から学び、社会に貢献する」という価値観を共有しています。この価値観に基づき、法令遵守や社会的良識に則った事業活動を推進し、健全で公正・透明な経営を行う風土があります。また、多様性を尊重し、社員が個性と能力を発揮できるプロフェッショナルな集団を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、「中期経営計画2026」において、継続的な成長と経営基盤の強化を目指しています。2026年6月期の経営目標として以下の数値を設定しています。
* 自己資本利益率(ROE):10%以上
* 連結配当性向:30%以上
* 自己資本比率:50%程度
* 固定比率:80%以下
* 女性採用比率:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
サステナビリティ社会の実現とDX推進、マーケットリーダーの地位強化、人材価値の最大化、グループガバナンスの強化を基本方針としています。構造分野や地質・地盤分野での地位を盤石にしつつ、エネルギー関連やインフラマネジメント等の成長分野へ経営資源を配分します。
* DX戦略推進部の新設による全社的なDX推進
* 旧大日本コンサルタントと旧ダイヤコンサルタントの融合(システム・拠点統合)
* 原子力関連施設や自衛隊施設の強靱化対策への注力
* 洋上風力発電等のエネルギー関連事業の拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」を最大の財産と位置づけ、社員がプロフェッショナルとなれるよう多様性を尊重する風土づくりに取り組んでいます。リファラル採用やインターンシップを活用した人材確保に加え、階層別研修や技術士資格取得支援などの育成制度を充実させています。また、女性活躍推進やテレワーク環境の整備など、多様な働き方の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | -歳 | -年 | -円 |
※同社の事業は子会社である大日本ダイヤコンサルタント株式会社の従業員が兼務しており、専属の従業員がいないため記載していません。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 78.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 65.0% |
※女性管理職比率は、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性比率(42.6%)、有給休暇取得率(81.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営環境の変化
受注の大部分を国や地方自治体等の官公庁に依存しているため、公共事業予算の削減や政策転換があった場合、受注高が減少し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギー関連業務における原子力政策の変更もリスク要因です。民間や海外事業の拡大による取引先の分散化に取り組んでいます。
■(2) 人材の確保・育成
事業遂行には高度な専門性を持つ技術者が不可欠ですが、少子高齢化による人材獲得競争が激化しています。優秀な人材の確保や後継者の育成が計画通りに進まない場合、生産性が低下し業績に影響を与える可能性があります。リファラル採用やキャリア採用の強化、教育訓練の充実等で対応しています。
■(3) 成果品に対する契約不適合責任
提供した成果品のミスにより重大な不具合が生じた場合、多額の損害賠償請求や指名停止処分を受ける可能性があります。これは業績や社会的信用に深刻な影響を与えます。ISO9001に基づく品質管理体制の強化や損害賠償責任保険への加入により、リスクの低減を図っています。



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