※本記事は、株式会社JDSC の有価証券報告書(第7期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JDSCってどんな会社?
AIやデータサイエンスを活用したソリューション開発、ファイナンス助言、DM発送代行などを展開する企業です。
■(1) 会社概要
2018年に設立され、データサイエンスやAIを活用したシステム開発を開始しました。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしています。その後、M&A戦略を推進し、2022年にファイナンス・プロデュースを子会社化してフィナンシャル・アドバイザリー事業を開始、2023年にはメールカスタマーセンターを子会社化し、マーケティング支援事業へと領域を拡大しました。
従業員数は連結で163名、単体で124名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の加藤聡志氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 加藤 聡志 | 29.28% |
| 特定金外信託受託者 株式会社SMBC信託銀行 | 13.01% |
| 淵 高晴 | 7.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は加藤聡志氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 聡志 | 代表取締役 | P&G、マッキンゼー等を経て2013年日本データサイエンス研究所(現同社)設立。2018年より現職。 |
| 作井 英陽 | 取締役 | UBS証券、メリルリンチ日本証券、Azit執行役員等を経て2020年同社入社。CFO、コーポレート部門長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 吉井 勇人 | 取締役 | アクセンチュアを経て2020年同社入社。2022年執行役員DXソリューション事業部長に就任し、2023年4月より現職。 |
社外取締役は、出路貴規(スパークス・グループ執行役員)、田中謙司(東京大学大学院工学系研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AIソリューション事業」、「フィナンシャル・アドバイザリー事業」および「マーケティング支援事業」を展開しています。
■(1) AIソリューション事業
各産業の大手企業と連携し、データサイエンスやAIを活用して産業共通課題を解決するサービスを開発・提供しています。需要予測や配送最適化、フレイル検知など、企業の枠を超えたソリューションを展開しています。
収益は、共同研究開発や初期導入フェーズにおけるコンサルティング、PoC(実証実験)、システム実装等によるフロー収益と、導入後の運用保守料やサービス利用料、ライセンス料などのストック収益から成ります。運営は主に同社が行っています。
■(2) フィナンシャル・アドバイザリー事業
企業買収(M&A)や資金調達などのファイナンス領域において、大手企業やスタートアップに対する助言・支援を行っています。社会変革をもたらす事業の創出をファイナンス面からプロデュースすることを目指しています。
収益は、アドバイザリー業務に係る固定報酬(リテーナーフィー)と、資金調達やM&A成立時に発生する成功報酬を受け取るモデルです。運営は主に株式会社ファイナンス・プロデュースが行っています。
■(3) マーケティング支援事業
ダイレクトメール(DM)の企画、制作、発送代行などのマーケティングサービスを提供しています。AI活用やDX推進により、DMの高付加価値化を図り、顧客企業のマーケティング課題の解決を支援しています。
収益は、顧客企業または代理店から受託するダイレクトメールの制作費や発送代行費等を受け取るモデルです。運営は主にメールカスタマーセンター株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第7期にかけて売上高は急拡大しています。第5期までは20億円規模でしたが、M&A等により第6期に160億円台、第7期には230億円台へと成長しました。利益面では第6期に一時的な損失を計上しましたが、第7期は黒字化し、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 19億円 | 165億円 | 231億円 |
| 経常利益 | 0.2億円 | -0.1億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | -0.1% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.3億円 | -3.3億円 | 4.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大幅に増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約10%で推移しています。営業利益率は前期の0.3%から2.5%へと改善しており、事業規模の拡大に伴い収益性が向上している様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 165億円 | 231億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.8% | 10.1% |
| 営業利益 | 0.5億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 0.3% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比37%)、採用費が2億円(同10%)を占めています。売上原価においては、マーケティング支援事業に関連する費用が多額を占めていると考えられます。
■(3) セグメント収益
AIソリューション事業は横展開やアップセルにより増収増益となりました。フィナンシャル・アドバイザリー事業も案件獲得により成長しています。マーケティング支援事業は通年寄与と新規案件獲得により、売上の大半を占める主力事業として業績を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AIソリューション事業 | 19億円 | 28億円 | -0.8億円 | 4億円 | 14.5% |
| フィナンシャル・アドバイザリー事業 | 2億円 | 4億円 | 0.1億円 | 1億円 | 34.4% |
| マーケティング支援事業 | 144億円 | 199億円 | 1億円 | 0.5億円 | 0.2% |
| 連結(合計) | 165億円 | 231億円 | 0.5億円 | 6億円 | 2.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、自己資金、金融機関からの借入、社債及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としています。
営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上と売上債権の減少により、資金を獲得しました。
投資活動では、投資有価証券の取得により資金を支出しました。
財務活動では、長期借入金の返済により資金を支出しました。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「UPGRADE JAPAN」をミッションとして掲げ、「AIでデータの真価を解き放ち産業の常識を塗り替える」というヴィジョンの実現を目指しています。個社ごとの課題解決にとどまらず、産業全体の共通課題の解決やSDGsの実現に向けて、データサイエンスやAI技術を社会実装することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、ビジネスデベロップメント、データサイエンス、エンジニアリングの「三位一体」のチーム体制を重視しています。また、東京大学の研究室との密接な連携や、Kaggleなどの技術コンペティションへの参加を通じて、最先端の技術を探求し続ける風土があります。単なる技術提供にとどまらず、実際の利益やキャッシュ・フロー等の定量的な改善効果を創出することにこだわる姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、フロー型(非継続)の収益に加え、運用保守やライセンス利用などのストック型(継続)収益の拡大を目指しています。経営目標の達成状況を判断する指標として、基礎的な財務数値に加え、年間顧客数、顧客ごとの売上単価、継続顧客による売上比率を重視しています。具体的な数値目標としては、AI市場やSDGs市場の拡大を捉え、継続的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「共同研究開発(Joint R&D)」と「産業全体への横展開」の2フェーズによる成長戦略を掲げています。大手企業との共同開発で得た知見やデータを基にAIアルゴリズムを強化し、それを自社プロダクトとして産業内外の他企業へ横展開することで、収益性と生産性の向上を図っています。また、M&Aやファイナンス領域の知見を活用した非連続な成長や、将来的なグローバル展開も見据えています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、技術面とビジネス面の双方に優れた人材の確保と育成を最重要課題としています。ビジネス、データサイエンス、エンジニアリングの三位一体体制を維持するため、インターンや社員紹介、資格取得支援等を推進しています。また、性別や国籍等を問わない多様な人材の確保に努め、エンゲージメント調査等を通じて働きがいのある環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 36.3歳 | 1.6年 | 9,606,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先に対する売上比率
同社グループは大手企業との共同開発フェーズにある案件が多く、特定の取引先への売上依存度が高くなる傾向があります。当期の上位3社の売上比率は28.8%を占めており、主要顧客との取引内容に変更が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。横展開による顧客基盤の分散を進めていますが、依然として重要なリスク要因です。
■(2) 今後の非連続な成長のための投資等
同社はM&Aを含む戦略的投資を成長のために重要視しています。しかし、買収した企業の業績が悪化した場合、のれんの減損処理が発生し、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特にメールカスタマーセンター株式会社の買収に伴い多額ののれん等を計上しており、事業計画との乖離が生じた場合のリスクが存在します。
■(3) マーケティング支援事業の環境変化
主力のマーケティング支援事業は紙のダイレクトメール発送代行が中心です。顧客のプロモーション手法がデジタルへ急激にシフトした場合や、郵便制度・料金の改正があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はAI活用による高付加価値化や価格の柔軟な変更等で対応を図っています。



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