サスメド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サスメド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場するサスメドは、治療用アプリの開発や臨床試験システムの提供を行っています。直近の業績は、売上収益が前期比35.1%増の4.6億円と伸長しました。利益面では研究開発投資の継続により営業損失が続いていますが、赤字幅は縮小傾向にあります。


#記事タイトル:サスメド転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、サスメド株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サスメドってどんな会社?


サスメドは、不眠障害などの治療用アプリを開発するほか、治験効率化システム等のプラットフォームを製薬企業等に提供する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は2015年に東京都文京区でサスメド合同会社として設立され、2016年に株式会社へ組織変更しました。2016年より不眠障害用アプリの臨床試験を開始し、2019年には機械学習自動分析システムの提供を始めました。2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2023年には不眠障害用アプリの製造販売承認を取得しています。

2025年6月末時点の従業員数は43名(単体のみ)です。筆頭株主は創業者の上野太郎氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は株式会社ヘルシアです。

氏名 持株比率
上野 太郎 41.33%
日本カストディ銀行(信託口) 6.79%
ヘルシア 4.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は上野太郎氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
上野 太郎 代表取締役社長 医師、医学博士。2015年サスメド合同会社創業、2016年より現職。
小原 隆幸 取締役 大和証券SMBC、ロンドンビジネススクール(MBA)、アイスタイル等を経て2020年入社。2021年より現職。
本橋 智光 取締役CTO 新日鉄ソリューションズ、リクルートライフスタイル等を経て2017年入社。2019年より現職。


社外取締役は、加賀邦明(元田辺三菱製薬代表取締役)、秋嶋由子(元エノテカ取締役)、長尾謙太(税理士法人グローイング代表社員)、山本麻記子(弁護士法人TMIパートナーズ パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「DTxプロダクト事業」および「DTxプラットフォーム事業」を展開しています。

(1) DTxプロダクト事業


不眠障害をはじめ、乳がん患者向け運動療法、慢性腎臓病などを対象とした治療用アプリ(デジタル治療:DTx)の開発を行っています。不眠障害用アプリについては製造販売承認を取得しており、保険収載に向けた手続きを進めています。

主な収益源は、製薬企業等との提携に基づく契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストン収入、および製品上市後の販売額に応じたロイヤリティです。運営はサスメドが行っています。

(2) DTxプラットフォーム事業


治療用アプリの開発過程で培ったノウハウを基に、ブロックチェーン技術を活用した汎用臨床試験システムや、機械学習による自動分析システムを提供しています。これにより、臨床試験の効率化や医療データの利活用を支援しています。

主な収益源は、製薬企業や医療機関等からのシステム利用料、受託分析サービス、およびシステムを活用したDTx開発支援に対する対価です。運営はサスメドが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上収益は変動がありつつも拡大傾向にあります。利益面では、治療用アプリの研究開発への先行投資が続いているため、各期とも経常損失および当期純損失を計上しています。ただし、直近の2025年6月期は増収効果等により赤字幅が縮小しました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上収益(または売上高) 1.2億円 3.2億円 5.3億円 3.4億円 4.6億円
経常利益 -2.7億円 -2.2億円 -0.4億円 -3.6億円 -2.9億円
利益率(%) -% -% -% -% -%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.8億円 -2.3億円 -0.5億円 -3.6億円 -3.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加しています。一方で、研究開発費や販売費及び一般管理費の負担が重く、営業段階での損失が継続しています。当期は前期に比べて売上収益が大きく伸長したことで、営業損失および経常損失の額は減少しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 3.4億円 4.6億円
売上総利益 3.3億円 4.5億円
売上総利益率(%) 96.6% 97.4%
営業利益 -3.6億円 -3.0億円
営業利益率(%) -% -%


同社の事業費用は「事業原価」「研究開発費」「販売費及び一般管理費」に分類されます。2025年6月期の事業費用全体のうち、販売費及び一般管理費が4.8億円(構成比62.5%)、研究開発費が2.7億円(同35.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、DTxプロダクト事業は提携先からのマイルストン収入等により大幅な増収増益となりました。DTxプラットフォーム事業もシステム採用件数の増加等により増収となり、セグメント利益は黒字転換を果たしました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
DTxプロダクト事業 2.0億円 3.0億円 0.6億円 1.2億円 39.4%
DTxプラットフォーム事業 1.4億円 1.6億円 -0.1億円 0.3億円 20.3%
調整額 - - -4.1億円 -4.5億円 -%
連結(合計) 3.4億円 4.6億円 -3.6億円 -3.0億円 -%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -2.3億円 -4.3億円
投資CF -0.1億円 -0.2億円
財務CF 0.4億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のためマイナスで市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は96.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ICTの活用によって持続可能な医療サービスを社会に提供し続けること」をミッションとし、「持続可能な医療(Sustainable Medicine)の実現」をビジョンに掲げています。医療現場のニーズに対し、IT技術を活用した新たなソリューションを提供することで、社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「サイエンスと専門性の融合によって新たな医療を切り拓く」をバリューとして定めています。また、行動指針として「常に社会的意義を考える」「本質的な成果にこだわる」「プロフェッショナルとして尊重する」等を掲げ、専門性の高い人材が協力し合う文化の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


現在、研究開発段階にあるため、数値的な経営指標は定めていません。DTxプロダクト事業では開発パイプラインの件数や臨床試験の進捗度合いを、DTxプラットフォーム事業では契約件数を重要な経営指標として位置付けています。

(4) 成長戦略と重点施策


DTxプロダクト事業では、不眠障害用アプリの保険収載と販売開始を最優先課題としつつ、シーズの探索や他社との連携による早期収益化を推進します。DTxプラットフォーム事業では、汎用臨床試験システムの普及による臨床試験コストの低減や、機械学習システムの機能拡充による顧客獲得を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、医療ニーズとIT技術を組み合わせて新しい医療をつくるため、医師や弁護士、博士号保有者など多様な分野のプロフェッショナルが協力し、専門性を高められる環境整備を重視しています。「プロフェッショナルとして尊重する」などの行動指針に基づき、互いの多様性を認め合いながら事業を推進できる組織づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 37.3歳 2.6年 8,649,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年休取得率(71.5%)、リモートワーク実施率(100%)、健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療機器の研究開発リスク


治療用アプリの開発には多額の投資と時間を要しますが、臨床試験の結果や規制当局の指導等により、開発の延期や中止を余儀なくされる可能性があります。これにより、同社の長期的な財務状況や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 不眠障害用アプリの販売計画


同社は不眠障害用アプリの製造販売承認を取得済みですが、保険収載や上市に至る過程で仕様変更や試験の再実施等が発生し、スケジュールに変更が生じる可能性があります。これは事業計画の前提となるため、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 小規模組織への依存


同社は小規模な組織であり、経営陣や少数の研究開発人員に事業運営が依存しています。人材の確保・育成が計画通り進まない場合や、主要な人材が流出した場合、事業活動に支障が生じる可能性があります。

(4) 治療用アプリ業界の競争環境


治療用アプリ市場では、海外企業の参入や製薬企業による導入が進み、競争環境が厳しくなりつつあります。開発パイプラインにおける競争の結果、上市が計画通りに進まない場合、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。