ギックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ギックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のデータ分析・コンサルティング企業。データを経営判断に取り入れる「Data-Informed」事業を展開しています。第13期は大型案件でのコスト超過やのれん減損の影響により、売上高は前期比増収となるも、営業損益および最終損益は赤字に転落しました。


※本記事は、株式会社ギックス の有価証券報告書(第13期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ギックスってどんな会社?


人間の思考を補強するためのデータ活用「Data-Informed」を推進し、経営課題解決を支援するプロフェッショナル集団です。

(1) 会社概要


同社は2012年に設立され、データ分析に基づく経営支援を開始しました。2020年にはマーケティングツール「Mygru(マイグル)」の提供を開始し、2022年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。2023年には株式会社ギディアを設立し連結決算へ移行、2024年には株式会社GROWTH VERSEと資本業務提携を行うなど、事業拡大を進めています。

同社グループの従業員数は連結97名(単体91名)です。大株主構成は、筆頭株主が創業者の網野知博氏、第2位が共同創業者で取締役の花谷慎太郎氏、第3位も創業メンバーで上級執行役員の田中耕比古氏となっており、経営陣が株式の過半数を保有するオーナーシップの強い体制です。

氏名 持株比率
網野知博 35.52%
花谷慎太郎 13.92%
田中耕比古 12.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性4名の計8名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役CEOは網野知博氏が務めています。社外取締役比率は40.0%(取締役5名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
網野 知博 代表取締役CEO CSK、アクセンチュア、日本IBMを経て、2012年に同社を設立し現職。データ分析と戦略コンサルティングの領域で豊富な経験を持つ。
花谷 慎太郎 代表取締役COO 日本工営、IBMビジネスコンサルティングサービスを経て、2012年に同社設立に参画。取締役を経て2023年より現職。
渡辺 真理 取締役 アクセンチュア、ディー・エヌ・エーを経て2023年に同社入社。経営基盤強化本部長、執行役員を経て2024年より現職。


社外取締役は、田村誠一(ローランド・ベルガー シニアパートナー)、高阪のぞみ(Business Insider Japanブランド編集長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Data-Informed事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) Data-Informed事業


「Business Innovation」と「System Innovation」の2領域でサービスを提供しています。Business Innovationでは顧客理解に基づく戦略策定や、「Mygru」等のツールによるマーケティング支援を行います。System Innovationでは、データ分析基盤「Adaptable Data System (ADS)」の構築・運用を行い、クライアント企業のデータ活用を技術面から支えます。主な顧客はJR西日本などの大手企業です。

収益は、クライアント企業からのコンサルティングフィー、システム構築・運用に対する対価、プロダクトのライセンス利用料などから得ています。運営は主に同社が行っていますが、ブランディングデザイン領域などは子会社のギディアが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第12期から第13期にかけて、売上高は増加傾向にありますが、利益面では第13期に損失を計上しました。売上高は21億円から24億円へと成長していますが、コスト増や特別損失の計上により、経常損益および当期純損益は赤字となっています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 21.2億円 24.0億円
経常利益 1.3億円 -1.0億円
利益率(%) 6.3% -4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.9億円 -1.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高は約13%増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回ったため、売上総利益は減少しました。さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業損益は黒字から赤字へと転換しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 21.2億円 24.0億円
売上総利益 7.8億円 7.3億円
売上総利益率(%) 36.6% 30.5%
営業利益 1.3億円 -1.0億円
営業利益率(%) 6.3% -4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.9億円(構成比22%)、支払報酬が1.9億円(同22%)を占めています。売上原価においては、外注費が8.8億円(構成比56%)、労務費が5.7億円(同36%)を占めており、外部リソースへの依存度が高い構造となっています。

(3) セグメント収益


Data-Informed事業の単一セグメントですが、大型開発案件でのコスト超過や人員増強に伴う費用の増加により、全体として増収減益(赤字転落)となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
Data-Informed事業 21.2億円 24.0億円
連結(合計) 21.2億円 24.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -0.6億円 -3.2億円
投資CF -0.1億円 -1.1億円
財務CF -0.5億円 -1.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はマイナスで市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「あらゆる判断を、Data-Informedに。」をパーパスとして掲げています。これは、データだけで自動的に答えを出す「データドリブン」ではなく、人間の思考にデータも加えることで判断を高度化させる「データインフォームド」な社会の実現を目指すものです。

(2) 企業文化


データインフォームドの思想に基づき、生成AIなどのツールを思考の材料として活用し、人間がより深く考え判断することを重視しています。また、パーパスを基盤とした「行動指針」を定義し、高いマインドと実現力を持つプロフェッショナルとしての行動を従業員に求めています。

(3) 経営計画・目標


売上高の成長と利益ボラティリティの抑制を両立する体制構築を目指しています。営業利益を起点としたKPIツリーを作成し、以下の指標を重視して経営を行っています。

* 単体売上高(年間取引高区分別顧客・売上構成)
* 単体コア営業利益率(費用内訳・1人当たり売上高)
* 子会社売上高(各プロセス実施件数)

(4) 成長戦略と重点施策


「顧客理解No.1カンパニー」をビジョンに掲げ、長期契約の獲得やプロダクト領域の拡大、M&Aによる非連続的な成長を推進しています。特に、大手企業との関係深耕や、自社プロダクト「Mygru」等の拡販、エンジニア人材の確保に向けた体制強化に注力しています。また、成長投資と並行してコスト管理を徹底し、安定的な利益確保を目指す方針へと転換を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「アセットベースの人材育成」を掲げ、蓄積されたデータ分析のノウハウやツールを活用することで、短期間での人材育成を行っています。採用においては、性別や経歴を問わず多様な人材を求めており、フルリモートワークやポテンシャル採用などを導入して、居住地に左右されない採用活動を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.7歳 2.5年 7,610,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.0%
男性育児休業取得率 200.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.7%
男女賃金差異(正規) 76.7%
男女賃金差異(非正規) 97.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の売上先への依存


同社グループの売上高において、特定のクライアント企業(特に西日本旅客鉄道株式会社)への依存度が高くなっています。主要顧客の業績悪化や方針転換、取引関係の変化が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保・育成


高度なコンサルティング能力とデータサイエンスのスキルを併せ持つ専門人材の確保が事業成長の鍵となります。採用市場の競争激化等により、必要な人材の獲得や育成が計画通りに進まない場合、サービス提供体制や事業拡大に支障をきたす可能性があります。

(3) 情報セキュリティ


顧客企業の機密情報や重要なデータを多数取り扱う事業特性上、情報漏洩やシステム障害のリスクがあります。サイバー攻撃やヒューマンエラー等により情報の滅失や漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。