unerry 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

unerry 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のunerryは、生活者行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営する企業です。リテールDXやスマートシティ領域でサービスを展開し、直近の業績は売上高37億円(前期比31.4%増)、経常利益3.2億円(同133.4%増)と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社unerry の有価証券報告書(第10期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. unerryってどんな会社?


生活者行動ビッグデータをAI解析し、実社会をデータ化するプラットフォーム「Beacon Bank」を運営する企業です。

(1) 会社概要


2015年に設立され、同年12月に位置情報IoTプラットフォーム「Beacon Bank」のβ版をリリースしました。2020年に「ショッパーみえーる」を提供開始し、2021年には三菱商事と資本業務提携を締結しています。2022年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

同社の従業員数は連結・単体ともに91名です。筆頭株主は創業社長の内山英俊氏で、第2位は資産管理会社と思われる株式会社UC AIR、第3位は資本業務提携先である総合商社の三菱商事です。

氏名 持株比率
内山 英俊 28.50%
UC AIR 14.10%
三菱商事 8.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員CEOは内山英俊氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
内山 英俊 代表取締役社長執行役員CEO 日本アイ・ビー・エム、A.T.カーニーを経て、2015年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2019年より現職。
鈴木 茂二郎 取締役副社長執行役員COOセールス&オペレーション部長 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、エヌリンクス取締役などを歴任。2019年より同社執行役員COO。2022年より現職。
斎藤 泰志 取締役執行役員CFOコーポレート部長 経営共創基盤取締役、ネクステックカンパニー長、ファーストロジック取締役などを歴任。2019年より現職。
内山 麻紀子 取締役執行役員CMOマーケティング・PR部長 日本アイ・ビー・エム、サニーサイドアップを経て、2016年に同社入社。2020年より現職。


社外取締役は、八十川祐輔(元スパークス証券社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Beacon Bank事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 分析・可視化サービス


位置情報データを活用し、小売事業者や自治体等にカスタマイズした行動分析レポートや、ダッシュボードツール「ショッパーみえーる」を提供しています。商圏把握や競合比較、来店客の属性分析などを可能にし、マーケティング施策の意思決定を支援します。

収益源は、クラウド方式で提供するSaaSツールの月額課金(店舗数等に応じた料金)および分析レポート作成の対価です。運営は主にunerryが行っています。

(2) 行動変容サービス


生活者行動ビッグデータのAI解析により、来店可能性が高い顧客群を特定し、SNSや動画等で広告配信を行う「Beacon Bank AD」などを提供しています。店頭ビーコン等を活用して来店・購買効果を計測し、PDCAサイクルを実現できる点が特徴です。

収益源は、デジタルチラシ配信料として毎月受領する月額料金や、イベント等に応じてスポットで受領する広告配信料です。運営は主にunerryが行っています。

(3) One to Oneサービス


小売事業者等向けにオリジナルアプリの開発や顧客データ基盤(CDP)の構築を行い、個々の顧客に最適な情報を届けるシステムソリューションを提供しています。「Beacon Bank 1to1」として、リアルとデジタルの行動データを統合・分析し、パーソナライズされた体験を実現します。

収益源は、システム・アプリ等の構築対価に加え、構築後の運用・保守対価です。運営は主にunerryが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、直近5期間で継続的な増収を達成しています。利益面では、第6期は赤字でしたが、第7期以降は黒字化し、直近の第10期では利益率が大きく向上しました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 8億円 14億円 21億円 28億円 37億円
経常利益 -1.6億円 0.7億円 0.3億円 1.3億円 3.2億円
利益率(%) -20.7% 5.0% 1.7% 4.8% 8.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.6億円 1.4億円 0.1億円 0.7億円 3.3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 28億円 37億円
売上総利益 11億円 15億円
売上総利益率(%) 37.6% 39.3%
営業利益 1.8億円 3.1億円
営業利益率(%) 6.3% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.4億円(構成比38%)、業務委託費が1.3億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては媒体費が13.2億円(原価構成比58%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


Beacon Bank事業単一セグメントのため、全社の売上成長がそのまま事業の成長を示しています。特に行動変容サービスが大きく伸長し、全体を牽引しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
Beacon Bank事業 28億円 37億円
連結(合計) 28億円 37億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスであり、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 1.8億円 2.3億円
投資CF -0.1億円 -0.6億円
財務CF 3.6億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「心地よい未来を、データとつくる。」をミッションに掲げています。実社会のデータを解析し、リアルとデジタルが融合した「環境知能」を実装することで、社会課題の解決や生活のUX向上を目指しています。

(2) 企業文化


「未来のメガネで社会を見つめ、より多様な選択肢や出会いにあふれる時代の“うねり”をつくりだします。」という姿勢を重視しています。また、「電気・ガス・水道・unerry」をスローガンに、あらゆる場所に同社の行動データが活用された環境知能が実装される「unerry, everywhere」の実現を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2028年6月期に売上高100億円の達成を中期目標として掲げています。この目標実現に向け、データの拡充やパートナー連携、プロダクト連携の強化、人的資本への投資を推進する方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


「Data Scaling Law 戦略」によりデータの幅と量を拡充し、競争優位性を強化します。また、「重点パートナー戦略」で協業を拡大し新規顧客を獲得するとともに、「フライホイールプロダクト戦略」で複数プロダクトの連携によるリカーリング顧客化を推進します。さらに、組織体制強化と人材育成による生産性向上も図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


急速な事業成長に対応するため、組織体制の強化と人材育成を両軸で進めています。特にデータ関連人材を中核人材と捉え、採用・育成に注力しています。また、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の浸透や、ダイバーシティの推進、挑戦を称える文化の醸成にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.1歳 2.3年 7,457,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.8%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規雇用) 66.1%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男性育児休業取得率は、当事業年度において配偶者が出産した男性労働者がいなかったため「-」となっています。非正規雇用についても該当者がいない等の理由により記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、eNPS(職場に対する推奨度)(△30.7%)、データ専門職比率(64.8%)、外国籍比率(7.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


位置情報データの利活用において、個人情報保護法等の規制強化や、個人情報保護委員会・公正取引委員会等の動向により、データの取得・分析・広告配信等の収益機会に制約がかかる可能性があります。同社は業界ガイドラインへの準拠やLPマーク取得等の対応を行っています。

(2) レピュテーションリスクについて


位置情報データの取得・活用に対し、一般ユーザーから不快感や懸念が示され、否定的な風評が広がるリスクがあります。これによりデータ利活用企業が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はユーザー許諾プロセスの導入等により透明性の確保に努めています。

(3) 競合との競争激化によるリスク


位置情報マーケティング市場への参入障壁は高くなく、大手企業を含む競合の参入により競争が激化し、価格競争やシェア低下を招く可能性があります。また、革新的な技術を持つ競合の登場により優位性が低下する恐れもあります。同社はSaaS製品の開発や独自データの活用により差別化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。