Fusic 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Fusic 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロースおよび福証Q-Board上場のFusicは、DX事業を展開するテクノロジー企業です。クラウド技術やAI、IoTを活用したシステム開発やコンサルティングを行い、2025年6月期は売上高19.5億円、経常利益2.7億円と増収増益を達成しました。


#記事タイトル:Fusic転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社Fusic の有価証券報告書(第22期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Fusicってどんな会社?


クラウドやAI、IoT等の技術を活用し、企業のDX推進を支援するテクノロジーカンパニーです。

(1) 会社概要


同社は2003年10月、九州大学大学院在学中に創業されました。2009年に人事課題解決システム「360度評価支援システム」をリリースし、2012年にはAWSの「APNコンサルティングパートナー」に認定されました。2017年に連絡サービス「sigfy」を開始し、2023年3月に東証グロース市場等へ上場しました。

2025年6月30日現在、単体の従業員数は120名です。筆頭株主は代表取締役社長の納富貞嘉氏、第2位は取締役副社長の濱﨑陽一郎氏で、両名とも創業メンバーです。第3位のNSMC株式会社は納富氏の資産管理会社です。

氏名 持株比率
納富 貞嘉 22.52%
濱﨑 陽一郎 22.52%
NSMC 11.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名、計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は納富貞嘉氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
納富 貞嘉 代表取締役社長 2003年10月Fusic設立取締役副社長。2005年3月より現職。
濱﨑 陽一郎 取締役副社長 2003年10月Fusic設立代表取締役社長。2005年3月より現職。


社外取締役は、安浦寛人(九州大学副学長等を歴任)です。

2. 事業内容


同社グループは、「DX事業」を展開しており、サービス区分として「クロステクノロジーサービス」「MSPサービス」および「その他サービス」を提供しています。

(1) クロステクノロジーサービス


クラウド環境構築やシステム開発、IoTによるデータ収集、AIデータ分析など、多様な技術を組み合わせてクライアントの課題解決を支援します。特定の技術に限定せず、顧客にとって最適な技術選定を行う点が特徴です。

収益は、主に準委任契約に基づくシステム開発やコンサルティングの対価として受領します。開発から運用・内製化支援までをワンストップで提供しています。運営は同社が行っています。

(2) MSPサービス


システムおよびクラウド環境の保守・運用を行うメンテナンスサービスと、AWS(Amazon Web Services)の再販売(リセール)サービスを提供しています。監視や障害対応、セキュリティ対策などを通じて顧客の運用負荷を軽減します。

収益は、メンテナンスサービスにおける準委任契約に基づく対価や、リセールサービスにおける従量課金に基づく利用料等から構成されるストック型のビジネスモデルです。運営は同社が行っています。

(3) その他サービス


自社開発システムから汎用性の高いものをプロダクト化したサービス群です。主なプロダクトとして、360度評価ツール「360(さんろくまる)」や、学校向け連絡網サービス「sigfy(シグフィー)」を展開しています。

収益は、サービスの利用量に応じた利用料や、導入企業・教育機関からのシステム利用料等を受け取るSaaS型のモデルとなっています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面では、2021年6月期は赤字でしたが、翌期以降は黒字化し、経常利益および当期純利益ともに成長を続けています。利益率も改善傾向が見られます。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 7.6億円 11.2億円 15.3億円 18.0億円 19.5億円
経常利益 -0.4億円 0.7億円 1.5億円 2.1億円 2.7億円
利益率(%) -5.6% 6.3% 9.7% 11.8% 14.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.3億円 0.4億円 1.0億円 1.5億円 1.9億円

(2) 損益計算書


前期と当期の損益計算書を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益および経常利益も前期を上回り、収益性が向上しています。当期純利益も増益となりました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 18.0億円 19.5億円
売上総利益 6.7億円 7.7億円
売上総利益率(%) 37.1% 39.6%
営業利益 2.1億円 2.7億円
営業利益率(%) 11.5% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比39.2%)、支払報酬が0.5億円(同10.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


クロステクノロジーサービスは大手顧客の深耕により単価が上昇し増収となりました。その他サービスも案件大型化等により増収です。一方、MSPサービスは円安による利用抑制等の影響で減収となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
クロステクノロジーサービス 8.7億円 10.6億円
MSP 8.1億円 7.4億円
その他 1.2億円 1.5億円
連結(合計) 18.0億円 19.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業である営業活動でキャッシュを稼ぎ出し、それを原資として投資活動や借入金の返済などを行っている、財務的に安定した状態と言えます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 0.6億円 1.3億円
投資CF -1.0億円 -0.3億円
財務CF -0.2億円 -0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「個性をかき集めて、驚きの角度から世の中をアップデートしつづける。」というVision(あるべき姿)を掲げています。また、「OSEKKAI × TECHNOLOGY」というブランドスローガンのもと、テクノロジーによる価値創出を通じて社会課題の解決や新たな価値創造に取り組んでいます。

(2) 企業文化


「自立」「個性」「協働」を求める人材像として重視しています。社員の自由な技術習得を奨励し、技術探究を行う合宿や研究費用支援など、学習機会を支援する制度を展開しています。新技術への高い関心と学び続ける姿勢を持ち、多様な個性が議論を重ねることで最適なソリューションを提供する風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業拡大と収益性向上の指標として、売上高成長率および営業利益成長率を重視しています。また、これらを高めるための指標として、以下の3つを重視し、企業価値と株主価値の向上を図っています。

* エンジニア一人当たり売上高
* 顧客平均単価
* 取引顧客数

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な高成長を実現するため、生成AI等の新技術への対応や市場拡大が見込まれる領域への進出を掲げています。具体的には、AIコーディングツールへの投資による開発プロセスの生産性向上や、宇宙産業関連ソフトウェア市場での地位確立を目指します。

* AI-Nativeな開発プロセスへの全面移行と大幅な人員拡充
* 宇宙産業関連ソフトウェア市場でのプレゼンス向上
* 教育・人材関連プロダクト(360、sigfy)の再構築
* 積極的なM&Aの実施

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自立」「個性」「協働」を体現する人材の確保と育成を重視しています。新卒・中途向けのOJTや勉強会に加え、リファラル採用の強化や、多様な技術に触れる機会を提供することでエンジニアの知的好奇心に応える環境を整備しています。また、リモートワークやフルフレックス等の柔軟な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 33.4歳 4.4年 5,982,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.0%
男女賃金差異(正規) 77.6%
男女賃金差異(非正規) -


※男女賃金差異(非正規)の「-」は男性の対象者がいないため算出できないことを示しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員の割合(5.0%)、入社3年以内離職率(新卒)(28.6%)、入社3年以内離職率(中途)(15.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) クラウド市場の動向について


DX進展に伴いクラウド市場は成長していますが、経済情勢悪化等により企業の投資が低迷した場合、業績に影響する可能性があります。同社はMSPサービス等のストックビジネスを拡大し、収益基盤の強化に努めています。

(2) AWSへの依存について


同社はAWSのリセール等を主力としており、AWS市場の拡大に依存しています。市場縮小やAWS側の戦略変更があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はマルチクラウド化の推進等によりリスク分散を図っています。

(3) 技術革新への対応について


生成AI等の技術革新が急速に進む中、新技術や顧客ニーズの変化への対応が遅れた場合、競争力が低下する恐れがあります。また、対応のためのコスト増が利益を圧迫する可能性もあります。同社は最新技術の習得に積極的に取り組んでいます。

(4) 特定の取引先への売上高占有率の上昇について


主要取引先である株式会社まちのわ、株式会社内田洋行の2社への売上依存度が3割超となっています。これらとの取引関係に変化があった場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は他顧客の開拓により分散を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。