テクニスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクニスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する精密加工部品メーカー。ヒートシンク製品やガラス製品の製造販売を主力とし、産業機器や自動車市場等へ展開しています。直近の業績は、中国市場の悪化や在庫廃棄、減損損失の計上などが響き、売上高は前期比で大幅に減収、利益面でも赤字幅が拡大する厳しい結果となりました。


※本記事は、株式会社テクニスコ の有価証券報告書(第57期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テクニスコってどんな会社?


切る・削る・磨く等の加工技術を組み合わせた「クロスエッジ®Technology」を強みとする精密加工部品メーカーです。

(1) 会社概要


1970年に精密切断研究所として設立され、翌年テクニスコへ商号変更しました。2005年に中国子会社を設立し生産体制を強化。2014年にはMBOによりディスコグループから独立を果たしました。その後、2023年7月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場し、独自の技術力を背景に事業拡大を続けています。

連結従業員数は265名、単体では191名体制です。筆頭株主は代表取締役社長である関家圭三氏の資産管理会社で、発行済株式の約55%を保有しています。第2位は創業家出身の関家圭三氏本人、第3位は信託銀行の信託口となっており、経営陣による安定的な持株比率が特徴です。

氏名 持株比率
合同会社XEホールディングス 54.69%
関家 圭三 5.89%
野村信託銀行株式会社(信託口2052276) 2.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長CEOは関家圭三氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
関家 圭三 代表取締役社長CEO 1989年ディスコ入社。同社常務を経て2005年テクニスコ取締役、2009年より社長。2023年9月より現職。
村上 友孝 専務取締役CBOグローバルビジネス本部長 1984年ディスコ入社。2015年テクニスコ入社、ビジネス開発室長などを経て2025年9月より現職。
相原 正行 常務取締役CFO経営サポート本部長 1985年ディスコ入社。2008年テクニスコ出向、業務部長などを経て2023年9月より現職。
曺 明煥 取締役CTO 1990年LG Electronics入社。2016年THE GOODSYSTEM創業。2025年9月より現職。
吉岡 豊吉 取締役広島事業所長 1978年テクニスコ入社。広島工場精密部品製造部長、専務取締役技術開発本部長などを経て2024年9月より現職。


社外取締役は、齊藤琢磨(元野村證券株式会社)、市川ルミ(弁理士法人ATEN所長)、内山秀(元レーザーテック株式会社常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「精密加工部品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ヒートシンク製品・ガラス製品等


「切る」「削る」「磨く」「メタライズ」「接合」の5つの加工技術を組み合わせた「クロスエッジ®Technology」を活かし、電子部品用のヒートシンク(放熱部品)やガラス製品を製造・販売しています。主な顧客は産業機器、自動車、光・無線通信、ライフサイエンス市場のメーカーです。

収益は、顧客ごとの仕様に基づき製造した精密加工部品の販売代金です。テクニスコが製品開発や製造の中核を担い、中国子会社(TECNISCO (SuZhou) CO.,Ltd.)およびシンガポール子会社(TECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.)も製造・販売を行っています。

(2) その他


各種金属材料、シリコン材料、セラミック材料などの加工製品や、ガラス・セラミック加工用のダイヤモンドツールを提供しています。独自の切断・切削技術を活かした受託加工サービスも含まれます。

収益は、加工製品の販売代金や受託加工料です。運営は主にテクニスコが行っており、顧客の多様な微細加工ニーズに応えることで収益を獲得しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年6月期の55億円をピークに減少傾向にあり、特に当期は34億円まで落ち込みました。利益面でも、売上の減少や固定費の負担、減損損失の計上などにより赤字幅が拡大しており、厳しい経営状況が続いています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 43億円 55億円 53億円 47億円 34億円
経常利益 4億円 9億円 3億円 -3.2億円 -16億円
利益率(%) 8.1% 16.2% 6.2% -6.8% -48.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 8億円 2億円 -6.0億円 -30億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益が大きく縮小しています。これに加え、販売費及び一般管理費の負担が重くのしかかり、営業損失が拡大しました。特に当期は売上総利益率が著しく低下しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 47億円 34億円
売上総利益 12億円 1億円
売上総利益率(%) 25.1% 3.9%
営業利益 -5億円 -14億円
営業利益率(%) -10.2% -42.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.3億円(構成比33%)、試験研究費が2.3億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが含まれますが、売上の減少に対して固定費の削減が追いついていない状況です。

(3) セグメント収益


全事業における売上が減少しました。特に主力のヒートシンク製品は中国市場の悪化や価格競争の影響を受け、前期比で大幅な減収となりました。ガラス製品も欧米向けの需要変動により売上を落としています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
ヒートシンク製品 25億円 14億円
ガラス製品 13億円 11億円
その他 8億円 9億円
連結(合計) 47億円 34億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

テクニスコのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に減損損失や税金等調整前当期純損失の計上により、使用超過となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預け入れと払い戻し、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加と長期借入金の返済による支出が影響しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -4億円 -3億円
投資CF -4億円 -2億円
財務CF 21億円 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「The TECNISCO WAY」を掲げ、社会的使命として「高度なクロスエッジ®Technologyへの継続的なチャレンジによって人びとの喜びの実現の一助となる」ことを目指しています。また、永続的な目標として「いつの時代にも人びとから『次も』期待される存在となる」ことを掲げ、顧客ニーズに応えるモノづくりに取り組んでいます。

(2) 企業文化


「誠実な企業として生きる 独創の企業として生きる」という姿勢を重視しています。顧客が困ったときに相談したいと思える存在になることを目指し、独自の加工技術の組み合わせによる解決策の提案や、世の中の快適につながる技術開発を進める風土があります。

(3) 経営計画・目標


2030年6月期に向けた「VISION 2030」を策定し、景気の波に左右されず着実に成長するビジネスモデルの構築を目指しています。売上高や利益などの定量目標だけでなく、新規の独創的な製品が一定ボリュームで量産化されている状態など、定性的な到達点も定義しています。当面は売上総利益率の向上と経常利益の拡大を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「どうやって作るか(HOW)」の受託加工中心から、「何を作るか(WHAT)」を主眼とした自社素材・製品開発へのビジネスモデル転換を進めています。特にヒートシンク製品では新素材や複合加工技術の開発、ガラス製品ではライフサイエンス向けの高信頼性製品開発に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「クロスエッジ®Technology」を進化させ成長を続けるため、優秀な人材の確保を重要課題としています。経験者の積極的な採用に加え、ハラスメント防止や労働環境改善、健康経営による働き方改革を推進し、社員一人ひとりが独創的な挑戦を継続できる企業風土の醸成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 44.3歳 15.3年 520万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況及び海外展開について


連結売上高の約5割を海外が占めており、各国の経済状況や為替変動の影響を強く受けます。特に中国市場の市況悪化や競合との価格競争が業績に大きな影響を与えており、予期せぬ景気後退や需要減少が発生した場合、業績が悪化する可能性があります。

(2) 有利子負債と財務制限条項について


多額の営業損失計上に伴い、一部金融機関との借入契約における財務制限条項(純資産維持や損益要件など)に抵触している状況があります。継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象が存在していますが、資金繰り等の対策により不確実性は認められないと判断されています。

(3) 原材料価格の変動及び調達について


金属、ガラス、貴金属などを原材料として使用しており、市況変動による価格高騰や調達難のリスクがあります。複数社購買や在庫確保等の対策を講じていますが、大幅な変動や調達困難が生じた場合、生産活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。