トライアルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トライアルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場。流通小売事業としてディスカウントストア「TRIAL」を運営するほか、リテールAI事業で店舗のスマート化を推進しています。2025年6月期の連結売上高は8,038億円(前期比12.0%増)、営業利益は211億円(同10.2%増)となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社トライアルホールディングス の有価証券報告書(第11期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トライアルホールディングスってどんな会社?


同社は、IT技術を活用したディスカウントストアの運営と、流通小売業向けAIソリューションの開発を行う企業です。

(1) 会社概要


1974年に家電販売業として創業し、1992年にディスカウントストア「トライアル」1号店を開店しました。2015年に持株会社体制へ移行し、2018年にはリテールAI事業を担う子会社を設立しています。2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ株式を上場しました。

連結従業員数は7,080名(単体117名)です。筆頭株主は創業者の親族資産管理会社であるティー・エイチ・シーで、第2位も同様に資産管理会社のHeroic investment、第3位は創業者の永田久男氏です。

氏名 持株比率
ティー・エイチ・シー 53.97%
Heroic investment 7.67%
永田 久男 1.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永田洋幸氏が務めています。取締役4名のうち社外取締役は2名で、比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
永田 洋幸 代表取締役社長 2009年トライアルカンパニー入社。Retail AI代表取締役CEO、同社取締役、カンパニーコミュニケーション部長を経て、2025年4月より現職。
石橋 亮太 取締役 1999年ティーアールイー入社。トライアルカンパニーにて販売本部小型フォーマット事業部長、取締役副社長等を歴任し、2018年6月より同社代表取締役社長および現職。


社外取締役は、立本博文(筑波大学ビジネスサイエンス系教授)、張相秀(亜細亜大学都市創造学部専任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「流通小売事業」、「リテールAI事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 流通小売事業


「TRIAL」ブランドのディスカウントストアを全国に展開し、生鮮食品や加工食品、日用消耗品から家電、アパレルまで豊富な商品を取り扱っています。大型のメガセンターから小型店まで多様なフォーマットを出店し、24時間営業やワンストップショッピングの利便性を提供しています。

店舗での商品販売により一般消費者から収益を得ています。運営は主に株式会社トライアルカンパニーが担い、グループ内に食品製造や物流機能も有しています。

(2) リテールAI事業


小売事業者やメーカーに対し、店舗オペレーションの効率化や買い物体験向上に資するプロダクトを提供しています。主力製品のスマートショッピングカート「Skip Cart」やAIカメラ、データ分析基盤などを開発・導入しています。

プロダクトの月額利用料やライセンス利用料等を小売事業者等から受け取っています。開発・運営は主に株式会社Retail AIが担当しています。

(3) その他


リゾート関連事業として、旅館施設やゴルフ場の運営などを行っています。「食」のブランディングを通じて流通小売業の顧客ロイヤリティ向上を図っています。

施設利用者からの利用料等を収益源としています。運営は株式会社トライアルゴルフ&リゾート等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、毎期増収を達成しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに増加傾向にあり、事業規模の拡大に伴い収益性も維持・向上しています。

項目 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 5,955億円 6,531億円 7,179億円 8,038億円
経常利益 127億円 144億円 198億円 222億円
利益率(%) 2.1% 2.2% 2.8% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 81億円 114億円 118億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益率も改善傾向にあり、効率的な店舗運営やコスト管理が進んでいることが窺えます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 7,179億円 8,038億円
売上総利益 1,424億円 1,648億円
売上総利益率(%) 19.8% 20.5%
営業利益 192億円 211億円
営業利益率(%) 2.7% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、雑給が468億円(構成比32%)、給料及び手当が248億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の流通小売事業が増収増益を牽引しており、既存店の好調や新規出店が寄与しています。リテールAI事業は増収となり、セグメント利益も黒字転換を果たしました。その他事業も大幅な増収増益となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
流通小売 7,149億円 7,998億円 219億円 237億円 3.0%
リテールAI 9億円 10億円 -5億円 1億円 5.6%
その他 20億円 27億円 -0億円 6億円 23.5%
調整額 1億円 3億円 -22億円 -33億円 -
連結(合計) 7,179億円 8,038億円 192億円 211億円 2.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**パターン:勝負型**
本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続している状態です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 595億円 -44億円
投資CF -260億円 -359億円
財務CF 345億円 208億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世界の誰もが『豊かさ』を享受できる社会をつくる。」をPurpose(存在目的)とし、「テクノロジーと、人の経験知で、世界のリアルコマースを変える。」をVision(目指す姿)として掲げています。

(2) 企業文化


ビジョン実現のための価値観として、「効率化された店舗網で、モノを流通させる力」と「データとIoTを駆使する力」をValueとしています。また、社名の「トライアル」には「挑戦し続ける仲間たち」という意味が込められており、失敗は財産であるという文化のもと、従業員一人ひとりが挑戦できる環境づくりを進めています。

(3) 経営計画・目標


経営上の目標達成状況を判断する指標として、連結売上高成長率、既存店売上高成長率、連結売上高営業利益率、新規出店数等のKPIを重視し、成長性と収益性の向上を目指しています。また、流通小売業界に存在する「ムダ・ムラ・ムリ」の削減を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


流通小売事業では、新規出店による店舗網拡大に加え、生鮮食品など「食」の強化や店舗改装による集客力・収益性の向上を図ります。リテールAI事業では、プロダクトの新規開発や機能改善を進め、小売企業やメーカーへの提供価値を高めていきます。

* 流通小売事業において、生鮮食品売上構成比を高める。
* 2025年6月期は19店舗を改装、今後も毎年30店舗程度の改装を見込む。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


競争優位の源泉を「人材」と位置づけ、多様な人材が活躍できる環境整備や教育制度の充実に注力しています。ダイバーシティー&インクルージョンプロジェクトを推進し、女性、外国人、シニア層など多様な人材の活躍を支援するとともに、経営理念の浸透や次世代経営者の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.5歳 2.0年 10,251,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 36.4%
男女賃金差異(全労働者) 45.1%
男女賃金差異(正規雇用) 65.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 76.8%


※データは主要子会社である株式会社トライアルカンパニーのものです。なお、提出会社は公表義務の対象ではないため、女性管理職比率の記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 店舗拡大等の事業規模拡大と人材確保


成長戦略として新規出店や改装を進めていますが、競合激化や不動産価格の上昇等により計画通りに進まない可能性があります。また、労働人口減少の中で人材確保や育成が遅れたり、人件費が上昇したりすることで、出店ペースの鈍化や費用増加が生じる可能性があります。

(2) 競合による影響


少子高齢化による市場縮小が見込まれる中、同業他社やスーパーマーケット、ドラッグストア等との競争が激化しています。IT活用やローコスト運営で差別化を図っていますが、競争環境の変化により業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) システムトラブル・情報セキュリティ


事業運営において多くの情報資産を扱っていますが、自然災害やサイバー攻撃、システム障害等が発生した場合、社会的信用の毀損や業務の停止を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) リテールAI事業の先行投資


リテールAI事業では新規プロダクト開発等への先行投資を行っていますが、開発や普及が計画通りに進まない場合や、技術革新により想定以上の投資が必要となる可能性があります。事業計画が未達となった場合、投資回収ができず財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。