※本記事は、株式会社グリッド の有価証券報告書(2025年6月期、2024年7月1日 ~ 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
グリッドは、社会インフラにイノベーションを起こし、インフラ全体の最適化を目指すAI開発事業を展開しています。電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力し、AI技術を用いた計画最適化サービスを提供しています。
単体従業員数は109名です。セグメントはAI開発事業の1つです。
グリッドは、社会インフラのオペレーションにおける属人性を排除し、AI技術を活用して最適な計画を短時間で提供する計画最適化事業を本体で展開しています。電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力しています。
同社は2021年6月期にエネルギーソリューション事業から撤退し、AI開発事業への事業転換を完了しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
グリッドは、AI開発事業を通じて社会インフラの最適化を目指す企業です。従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すため、柔軟な働き方や充実した育成制度を導入しています。このような環境で、どのような給与水準や働き方が実現されているのか、具体的なデータから見ていきましょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、比較的若い年齢層の従業員で構成されており、平均勤続年数から見ると、人材の流動性がある組織であることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,452,000円 |
| 平均勤続年数 | 3.1年 |
| 平均年齢 | 38.1歳 |
| 単体従業員数 | 109人 |
なお、退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
グリッドは、「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」を企業理念とし、社会インフラにイノベーションを起こし、インフラ全体の最適化を目指すことをミッションとしています。このミッション達成において、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。多様性に富んだ優秀な人材を積極的に採用し、その能力を最大限発揮できる環境の整備を継続して進める方針です。
具体的には、優秀な人材の採用と定着を目的として、コアタイムなしのフレックス制度やリモートワークを取り入れた勤務制度を採用しています。これにより、場所や時間に対する裁量を拡大し、従業員個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にしています。また、多様性に富んだ組織として最大限の力を発揮するため、積極的に外国籍の従業員を採用し、国籍を問わず適材適所の登用を行っています。
入社後の育成については、プロジェクトマネジメントや開発のスキルアップを目的としたエンジニア研修、会計・人事・経営をテーマにしたマネジメント研修を実施しています。加えて、量子コンピュータや最適化について、大学教授等の専門家とアドバイザリー契約を締結することで、従業員が専門家に直接相談できる体制を構築し、一人ひとりが意欲をもって成長できる環境を整備しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金の差異は、女性活躍推進法に基づく公表項目として選択しておらず、公表されていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性労働者の育児休業取得率 | 71.0% |
指標及び目標
男性の育児休業取得率は、年度内に育児休業を取得した男性社員数を、年度内に配偶者が出産した男性社員数で除して算出されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 71.0% |
| フレックス制度の利用率 | 100.0% |
| リモートワークの利用率 | 100.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
株式会社グリッドは、AI開発事業を単一セグメントとして展開しています。社会インフラにイノベーションを起こし、全体の最適化を目指すことをミッションとしています。電力、物流、サプライチェーンといった社会インフラ領域における計画最適化事業を通じて、顧客の課題解決に貢献しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社は、AI技術と数理最適化技術を応用し、社会インフラ領域における計画最適化サービスを提供しています。電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力しており、各顧客の計画対象業務を数式化し、シミュレータを開発することで、デジタル空間上で業務のシミュレーションを再現します。
このシミュレーション結果から得られるデジタルデータを基に、KPIの最大化や計画の最適化を可能とするアルゴリズムを開発し、業務システムに組み込んでいます。AIエンジンの開発を中心に、コンサルティングからシステム実装、運用・サポートまで一貫したサービスを提供することで、顧客との中長期的な関係を構築し、安定的な収益に繋げるビジネスモデルです。
同社の顧客は、電力、石油元売り、プラント、物流、都市交通といった社会インフラ分野の大手企業が中心となっています。明確な経済的導入効果やCO2削減効果を提示できる点が、大手企業に受け入れられている要因と考えられます。
売上高は電力・エネルギー分野が全体の過半数を占め、物流・サプライチェーン分野が約3割を占める構成となっています。また、既存顧客からの継続的な受注が売上全体の8割以上を占めており、顧客との長期的な関係性が収益基盤を支えています。海外の外部顧客への売上高はありません。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社の売上高は、直近の事業年度において前期から2割強の増加となりました。営業利益および経常利益も前期に比べて増加傾向を示しています。
一方で、当期純利益は前期から2割強の減少となりました。これは主に、繰越欠損金の解消に伴う法人税、住民税及び事業税、並びに法人税等調整額の増加が影響しています。
同社は2021年6月期以降、AI開発事業の売上高が堅調に推移しており、売上高成長率は20%台後半、営業利益率は20%台前半で推移しています。2021年6月期から2025年6月期にかけての売上高年平均成長率(CAGR)は40%台半ばとなっており、事業の拡大が続いています。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
グリッドは、本業で安定した資金を創出し、財務基盤を堅固にしています。事業活動で得た資金を将来の成長投資に充て、持続的な発展を目指している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
グリッドの財務基盤は、自己資本比率が高く、手元資金も厚い状態です。自己資本比率はプライム市場平均(製造業46.8%・非製造業24.2%)と比較して高い水準にあり、安定した経営基盤を示しています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均(9.4%)を下回っていますが、本業で得た利益を内部に蓄積し、財務の健全性を維持していることがうかがえます。
| 指標 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 36.4億円 | 39.4億円 |
| 自己資本比率 | 88.7% | 89.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 11.1% | 7.6% |
| 現金及び預金 | 29.0億円 | 31.9億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
グリッドは、本業の営業活動で安定的に資金を獲得し、それを将来の成長に向けた投資に充てている状況です。営業活動によるキャッシュフローは前期に比べて増加しており、本業で着実に資金を生み出していることが示されています。投資活動によるキャッシュフローは、無形固定資産の取得などにより資金を使用しています。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入金の返済などにより資金を使用する結果となりました。
当期は営業活動で獲得した資金が投資活動による支出を上回っており、フリーキャッシュフローはプラスとなっています。これは、本業で稼いだ資金で投資を賄い、さらに余剰資金を生み出している状態を示しています。このようなキャッシュフローの状況は、同社が安定した事業運営を継続しつつ、将来の成長に向けた投資も行える財務的な余力があることを示しています。
| 項目 | 2024年6月期(前期) | 2025年6月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 285百万円 | 405百万円 |
| 投資CF | △37百万円 | △46百万円 |
| 財務CF | 1,980百万円 | △62百万円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 248百万円 | 359百万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社は、事業を展開するAI技術を用いた計画最適化市場が拡大すると予想される一方で、景気による影響や各種新技術の発展による影響を受ける可能性があります。経済情勢やAI関連技術の技術革新等への対応が遅れた場合には、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、将来の成長が期待される市場であり、国内外の事業者がこの分野に参入してくる可能性があります。十分な差別化が図られなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社は、今後さらなる成長を成し遂げていくため、優秀な人材の確保と育成を重要課題の一つと位置付けています。優秀な人材を十分に採用できない場合や、採用後の育成が十分に進まなかった場合、あるいは在職中の従業員が退職する等した場合には、受注するプロジェクトの開発に制約が発生することや、受注したプロジェクトの品質・利益率の低下を招き、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
グリッドは、「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」を企業理念に掲げ、アルゴリズムとテクノロジーの力で社会インフラに革新をもたらすことを目指しています。持続可能な社会の実現に貢献するため、人材を最も重要な経営資源と捉え、多様な働き方を尊重する企業風土を築いています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社は「INFRASTRUCTURE+LIFE+INNOVATION」を企業理念に掲げ、アルゴリズムとテクノロジーでこれまでのインフラを再定義し、未来の社会を支えるインフラを創造していくことをミッションとしています。テクノロジーでインフラを進化させ、その先も続く持続可能な社会をつくることを目指しています。
社会インフラ領域で人々の生活に変革をもたらすことを目標とし、主にAIアルゴリズムの技術を用いた「計画最適化」の研究開発と社会実装を通じて、様々な社会問題を解決し、より良い未来の実現に貢献することを目指しています。電力・エネルギー分野、物流・サプライチェーン分野、都市交通・スマートシティ分野の3分野に注力しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社は、事業の拡大自体が環境負荷を低減し、持続可能な社会を実現するための重要な手段になると認識しており、これをサステナビリティに関する最重要課題としています。この課題解決のために最も重要な経営資源を人材と捉え、多様性に富んだ優秀な人材を積極的に採用し、その能力を最大限発揮できる環境の整備を継続して進めています。
優秀な人材の採用と定着を目的として、コアタイムなしのフレックス制度やリモートワークを取り入れた勤務制度を採用し、従業員個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にしています。また、多様性に富んだ組織として最大限力を発揮するため、積極的に外国籍の従業員を採用し、国籍問わず適材適所の登用を行っています。
従業員一人ひとりが意欲をもって成長できる環境を整備するため、量子コンピュータや最適化について、大学教授等の専門家とアドバイザリー契約を締結し、従業員が直接相談できる体制を構築しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社は、安定的かつ着実な事業拡大を図る上で、開発体制の強化を重要な課題としています。優秀な人材の積極採用、開発プロセスの継続的見直し、社内におけるノウハウ共有や教育訓練の実施、エンジニアが能力を十分に発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
営業体制の強化も課題の一つであり、コンサルティング営業人材の積極採用や、情報・ノウハウのシェア、一元管理を効率的・効果的に行う営業組織の仕組み化を進めています。事業拡大に向けて、経営管理体制の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保することで、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでいます。
情報セキュリティの強化も継続的な課題であり、情報セキュリティ管理規程等に基づき管理を徹底するとともに、社内教育・研修の実施やシステムの整備を継続しています。新技術への対応として、AI関連技術の研究開発を活発に行い、特に量子コンピュータ上で動作する量子アルゴリズムの研究開発を進め、複数の特許を出願しています。
脱炭素社会実現への貢献も重点テーマであり、同社が注力する電力・エネルギー分野、物流・サプライチェーン分野、都市交通・スマートシティ分野において、計画最適化により化石燃料の消費を削減し、顧客のコスト削減と環境保護に貢献することを目指しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
グリッドは、株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人を設置する体制を採用しています。取締役会は社外取締役を含み、監査役会も社外監査役で構成されており、経営の健全性と効率性を確保する体制が整っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の株主構成を見ると、筆頭株主は代表取締役社長である曽我部完氏が100%保有する資産管理会社であるWeです。このことから、創業家が同社の経営に強い影響力を持っていることがうかがえます。その他、日本カストディ銀行や日本マスタートラスト信託銀行といった機関投資家が上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| We(注)2 | 54.90% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.43% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.55% |
なお、前事業年度末において主要株主であった三井物産は、2025年6月30日現在では主要株主ではなくなりました。
また、りそなアセットマネジメントは2025年1月31日現在で409,500株(8.65%)を所有している旨が大量保有報告書に記載されていますが、同社として実質所有株式数の確認ができないため、上記大株主の状況には含められていません。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性8名・女性1名)で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は曽我部完氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 曽我部 完 | 代表取締役社長 | 1997年日比谷花壇入社、イーフローラ取締役、清長代表取締役を経て、2009年10月同社設立代表取締役に就任。We代表取締役、AIビジネス推進コンソーシアム代表理事も務める。 |
| 照井 一由 | 取締役執行役員 | 1999年伊藤忠テクノソリューションズ入社。ITOCHU Techno-Solutions America.Inc. Vice President、伊藤忠テクノソリューションズAIビジネス推進部部長を経て、2020年2月同社入社。2024年7月より取締役執行役員。 |
| 中村 秀樹 | 取締役執行役員 | 1996年日立建設設計入社。都市デザインシステム、オナーズヒル軽井沢取締役、ARICA代表取締役を経て、2009年10月同社設立取締役に就任。2024年7月より取締役執行役員。 |
| 曽我部 東馬 | 取締役 | マックスプランク微構造物理研究所博士研究員、ケンブリッジ大学客員博士研究員を経て、2009年10月同社設立取締役に就任。東京大学特任准教授、電気通信大学准教授を経て、2020年9月より同社非常勤取締役。2024年4月より電気通信大学教授。 |
社外取締役は、田中謙司氏(東京大学大学院工学系研究科教授)、竹内純子氏(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員)です。
同社は監査役会設置会社であり、株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人を設置しています。社外取締役2名、社外監査役2名が選任されており、東京証券取引所に独立役員として届け出ています。社外役員は客観的かつ中立な立場から経営監視機能を果たしています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、固定の金銭報酬のみで構成されています。常勤取締役の報酬額は、役割や責任の難易度、保有スキル、キャリアなどを総合的に考慮して決定されます。非常勤取締役の報酬も固定されており、通常の業務や準備時間を考慮した基準額が原則とされています。同社では業績連動報酬制度は採用していません。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 85百万円 | 17.1百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 8百万円 | 7.5百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 15百万円 | 3.9百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。