W TOKYO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

W TOKYO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。「東京ガールズコレクション(TGC)」の企画・運営を軸に、地方創生やSDGs推進などのプラットフォーム事業を展開しています。直近の業績は、イベント開催費用や人件費の増加等により、売上高39億円(前期比0.8%減)、当期純利益1.7億円(同47.2%減)の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社W TOKYO の有価証券報告書(第10期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. W TOKYOってどんな会社?


若年層向けファッションイベント「東京ガールズコレクション」のブランド力を活用し、地方創生や商品開発などのプロデュースを行う企業です。

(1) 会社概要


同社は2015年、ディー・エル・イーの100%子会社として設立されました。2017年に運営会社を吸収合併して現商号へ変更し、2019年にはMBO(マネジメント・バイ・アウト)により独立を果たしています。その後、地方開催やSDGs推進など事業領域を拡大し、2023年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。直近では2023年にWeb3関連の合弁会社を設立するなど、新規事業開発も進めています。

2025年6月30日時点で、同社(単体)の従業員数は54名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業社長の村上範義氏で、第2位はネット証券大手のSBI証券、第3位は人材・広告事業を展開するマイナビとなっています。

氏名 持株比率
村上範義 27.78%
SBI証券 9.60%
マイナビ 7.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役は村上範義氏が務めています。なお、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
村上 範義 代表取締役 リクルートメディアコミュニケーションズ等を経て、2014年より東京ガールズコレクション運営会社の代表取締役に就任。2016年9月より同社代表取締役として現職。
青木 充 取締役COO リクルート、吉本興業等を経て、2018年より同社取締役COOに就任。関連子会社の代表取締役も歴任し、2025年7月より子会社取締役を兼任して現職。
藤本 冬海 取締役CFO兼経営戦略統括局長 公認会計士・税理士。あずさ監査法人等を経て自身の事務所を開業。2017年に同社監査役に就任後、2020年9月より取締役CFOとして現職。


社外取締役は、井上北斗(IoT Bridge代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ブランディングプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) TGCプロデュース領域


「東京ガールズコレクション(TGC)」の東京開催および地方開催、シティプロモーション等を展開しています。若年層(10代~30代)を対象とした発信型プラットフォームとして、ファッションショーや音楽ライブ等のコンテンツを提供しています。

収益源は主に企業からの協賛金、チケット販売、ブランド出展料および地方自治体からの受託収入等です。運営は主に同社が行っています。

(2) コンテンツプロデュース・ブランディング領域


TGCで培ったノウハウやブランド力を活かし、企業の商材ブランディングやプロモーション支援を行っています。インフルエンサーやアーティストのキャスティング、広告クリエイティブの制作、商品開発コラボレーションなどを手掛けています。

収益は広告キャスティング料、クリエイティブ制作費、スクール事業の入会金・レッスン料、オリジナル商品のロイヤリティ等から得ています。運営は同社および関連会社等が担っています。

(3) デジタル広告領域


TGC公式メディア「girlswalker」の運営や、アフィリエイトサービス「アフィリエイトwalker」を展開しています。エンタメ情報の発信や広告配信プラットフォームを提供しています。

収益は広告主からのネットワーク広告収入、タイアップ広告収入、およびアフィリエイト広告の成果報酬等です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は20億円規模から約40億円まで拡大していますが、直近では横ばい傾向です。利益面では、第8期に経常利益6.2億円を記録しましたが、その後は減益傾向にあり、直近の第10期は経常利益3.4億円となっています。当期純利益も同様の推移をたどり、黒字を維持しているものの減少傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 20億円 21億円 36億円 40億円 39億円
経常利益 -2.0億円 0.9億円 6.2億円 5.0億円 3.4億円
利益率(%) -10.2% 4.3% 17.2% 12.5% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.2億円 1.3億円 4.1億円 3.3億円 1.7億円

(2) 損益計算書


売上高は微減で推移しています。コスト増加等の影響により、売上総利益および営業利益は前期と比較して減少しており、営業利益率は8%台まで低下しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 40億円 39億円
売上総利益 15億円 14億円
売上総利益率(%) 38.3% 35.2%
営業利益 5.1億円 3.5億円
営業利益率(%) 12.8% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が3.9億円(構成比38%)、給料手当及び賞与が3.2億円(同31%)を占めています。売上原価においては、外注費が20億円(構成比79%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


主力のTGCプロデュース領域は微増収を確保しましたが、コンテンツプロデュース・ブランディング領域およびデジタル広告領域は減収となりました。特にコンテンツプロデュース領域では、プロデュース案件の契約変更等が影響しました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
TGCプロデュース領域 29億円 30億円
コンテンツプロデュース・ブランディング領域 9億円 9億円
デジタル広告領域 0.7億円 0.6億円
連結(合計) 40億円 39億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や自己株式取得などの財務活動を行いながら、投資も実施している健全型のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 1.9億円 5.7億円
投資CF -0.3億円 -0.8億円
財務CF -2.0億円 -5.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%でグロース市場平均(2.9%)を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.8%でグロース市場非製造業平均(43.3%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「すべてのヒト・モノ・コト・地域が輝く世界をつくる」というビジョンを掲げています。このビジョンのもと、TGCブランドを活かした独自のプロデュースノウハウを軸に、ヒト・モノ・コト・地域のまだ見ぬ価値を共創し、その価値を最大化させることをミッションとして事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、サステナビリティやSDGsの推進活動に積極的に取り組むことで、社会のサステナビリティ実現を目指しており、これがビジョン・ミッションの追求そのものであると位置づけています。また、人材を最も重要な経営資源と捉え、チャレンジし続ける人材を評価する方針を発信し、個人の成長機会を提供する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、売上高、営業利益に加え、「調整後営業利益」および「調整後当期純利益」を採用しています。これらは、のれん償却額や商標権償却額を営業利益や当期純利益に足し戻した指標であり、同社の本来の収益力を測るために重視されています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、TGCのブランド力とネットワークを活用し、イベント以外のコンテンツプロデュースやブランディング事業を強化することで、利益率の高い収益基盤の構築を目指しています。また、地方自治体との連携による地方創生の推進や、アジア圏を中心とした海外事業展開により、市場の拡大を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の優位性を維持・向上させるため、トレンドに敏感で企画提案力に優れた優秀な人材の獲得と育成を重視しています。新卒・中途採用を積極的に展開するとともに、OJTや面談を通じた教育、リモートワークや時差出勤の導入、MVP表彰制度などを通じて、多様な人材が長期的に活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 33.3歳 5.8年 6,118,157円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率および男女賃金差異については有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) TGCブランド価値の低下


同社の事業はTGCブランドの認知度や発信力に大きく依存しています。不測の事態により適切な投資ができずブランド価値が低下した場合や、風評被害等によりブランドイメージが毀損された場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 地方開催における不確実性


地方開催は自治体等からの制作費収入等により運営されていますが、自治体側の事情や判断により開催の有無や規模が変動する可能性があります。中止や延期、規模縮小が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 業績の季節偏重


TGC東京開催の実施月を含む第1四半期および第3四半期に売上高・利益が偏重する傾向があります。開催時期の変更等があった場合、四半期ごとの業績が大きく変動する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。