※本記事は、フラー株式会社 の有価証券報告書(第15期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フラーってどんな会社?
アプリ開発や分析などを通じて顧客のデジタル事業を支援する「デジタルパートナー事業」を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2011年にFULLERとして設立され、2014年にアプリ分析ツール「App Ape」のダッシュボード提供を開始しました。2017年には新潟県長岡市の花火公式アプリを開発し、クライアントワーク事業を本格化させました。2020年には柏の葉本社と新潟本社の二本社体制へと移行し、2025年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
従業員数は単体で190名です。筆頭株主はアプリ運営プラットフォームを提供する事業会社で、第2位は広告代理店グループの事業会社であり、両社とは資本業務提携を行っています。第3位は同社の創業者で取締役会長を務める人物です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヤプリ | 21.55% |
| 電通グループ | 21.16% |
| 渋谷 修太 | 11.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は山﨑将司氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山﨑 将司 | 代表取締役社長 | 富士通デザインを経て2015年に同社入社。執行役員CDO、共創事業本部長、COO等を歴任し、2020年9月より現職。 |
| 渋谷 修太 | 取締役会長 | グリーを経て2011年に同社を設立し代表取締役社長CEOに就任。2020年より代表取締役会長、2024年9月より現職。 |
| 櫻井 裕基 | 取締役CDO兼デザイングループ長 | 2012年に同社入社。取締役CDO、代表取締役COO、副社長等を歴任し、2024年9月より現職。 |
| 宮毛 忠相 | 取締役CFO兼経営管理グループ長 | 富士銀行、楽天銀行等を経て、アセット・インベスターズ取締役CFOなどを歴任。2017年に同社入社し、2020年9月より現職。 |
社外取締役は、長屋洋介(うるる取締役)、庵原保文(ヤプリ代表取締役社長CEO)、安田裕美子(電通デジタル執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルパートナー事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) デジタルパートナー事業(クライアントワーク)
顧客のデジタル領域全般における課題解決のため、スマートフォンアプリ開発、事業開発コンサルティング、UI/UXデザインなどを提供しています。大手企業を中心に、企画から開発、運用までを一気通貫で支援する点が特徴です。
収益は、顧客からの受託開発費用やコンサルティング料、デザイン料などから得ています。また、システム開発における保守・運用業務も収益源となっています。運営は主に同社が行っています。
■(2) デジタルパートナー事業(アプリ分析サービス)
スマートフォンアプリ市場における利用状況を集計・分析するサービス「App Ape」を提供しています。市場のアプリ利用動向を可視化し、顧客のアプリビジネスにおける意思決定や競合調査などを支援しています。
収益は、同サービスを利用する顧客からのサービス利用料(サブスクリプション収入など)や、個別のカスタマイズ分析レポートの作成費用から得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は着実な右肩上がりを続けており、第11期の10億円から第15期には20.1億円へと倍増しました。利益面では、第14期に利益率が一時低下したものの、第15期には経常利益1.9億円、利益率9.2%とV字回復し、過去最高水準の利益を達成しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 10億円 | 12億円 | 15億円 | 15億円 | 20億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | 1.7億円 | 1.1億円 | 0.2億円 | 1.9億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 13.3% | 7.2% | 1.2% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.6億円 | 2.3億円 | 1.2億円 | 0.3億円 | 2.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の大幅な増加に伴い、各利益段階での収益性が大きく改善しています。特に営業利益は前期の0.1億円から当期は1.9億円へと急増し、営業利益率も0.9%から9.4%へと大幅に向上しました。事業拡大に伴う増収効果が利益増に直結していることがわかります。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 15億円 | 20億円 |
| 売上総利益 | 6.3億円 | 8.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.4% | 42.5% |
| 営業利益 | 0.1億円 | 1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.5億円(構成比38.4%)、賞与が0.8億円(同12.8%)を占めています。売上原価においては、労務費が8.2億円(構成比70.3%)、外注費が2.2億円(同18.7%)を占めており、人件費中心のコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス別の売上構成を見ると、主力のクライアントワークが前期比35.4%増と大きく伸長し、全売上の約95%を占めています。一方、アプリ分析サービスは微減となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| クライアントワーク | 14億円 | 19億円 |
| アプリ分析サービス | 1.2億円 | 1.1億円 |
| 連結(合計) | 15億円 | 20億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「積極型」です。本業で稼いだキャッシュに加え、銀行借入や株式発行によって資金を調達し、現預金を厚くしています。投資キャッシュ・フローのマイナス幅は小さく、成長に向けた人材採用や運転資金の確保に重点を置いていると考えられます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.1億円 | 2.7億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | 2.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「世界一、ヒトを惹きつける会社を創る。」というユメ(ビジョン)を掲げています。また、ミッションとして「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」を定めており、技術だけでなく、その先にいる人間に向き合い、本当に必要なものを提供し続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「頼られる存在になろう。」という価値観を掲げています。これは、「プロフェッショナルであること」「人の和を大切にすること」「当事者意識を持つこと」の3要素で構成されています。顧客の最高のパートナーとして、メンバー全員が高い当事者意識を持ち、共に価値創造を行う姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、経営上の重視する指標として「売上高」「営業利益」「売上高営業利益率」を掲げています。これらは市場からの評価や営業活動の成果・効率性を表す重要な指標と位置付けていますが、具体的な数値目標については記載がありません。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「デジタルパートナー事業」の成長を通じて企業価値を向上させる方針です。具体的には、販売ルートの拡大やソリューション提供能力の向上による収益基盤の拡大、および優秀なクリエイティブ人材の確保と育成に注力します。また、地方拠点(柏の葉・新潟)の活用や、提携企業との連携強化も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「ヒト」の力を事業成長の生命線と位置づけ、エンジニアやデザイナー等の専門人材(クリエイティブ人材)の採用と育成を最重要課題としています。新卒採用や地方拠点での採用を強化するとともに、ワークライフバランスや「人の和」を重視した企業文化、リモートワーク等の環境整備により、人材を惹きつける会社を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 31.4歳 | 3.6年 | 6,000,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) スマートフォン関連市場
同社はスマートフォン関連事業を主力としています。市場は成長を続けていますが、新たな規制の導入やプラットフォーマーの方針転換、予期せぬ要因により市場環境が変化した場合、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保
同社の事業は専門性の高いクリエイティブ人材に支えられています。少子化やDX人材需要の高まりにより人材獲得競争が激化し、必要な人材の確保や育成が困難になった場合、事業の成長が阻害される可能性があります。同社は魅力ある職場環境作りや広報活動により人材確保に努めています。
■(3) 同業他社との競合
同社が提供するデジタルソリューション分野には、大手企業や新興企業など多くの競合が存在し、新規参入も予想されます。競争が激化した場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。同社は一気通貫のソリューション提供体制などの強みを活かして差別化を図る方針です。
■(4) 大規模プロジェクトの推進
大規模プロジェクトにおいては、顧客の方針変更やコミュニケーションの問題、不具合の発生など様々な不確実性が存在します。これらに起因してコスト増加や納期遅延、トラブル等が発生した場合、業績への悪影響や「期ずれ」による業績予想の修正が必要となる可能性があります。



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