※本記事は、株式会社笹徳印刷 の有価証券報告書(第76期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 笹徳印刷ってどんな会社?
パッケージ、販促物、広告等の企画・製造・販売を行い、ワンストップソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1890年に杉山紙函店として創業し、1950年に笹徳紙器印刷(現笹徳印刷)として法人化しました。1999年にISO14001認証を取得するなど環境対応を進め、2004年には中国・無錫に現地法人を設立し海外展開を開始しました。2023年9月には東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場へ上場を果たしています。
2025年6月30日現在の連結従業員数は403名、単体では300名です。筆頭株主は王子ホールディングス子会社の王子マテリアで、第2位はすぐるラボ、第3位は笹徳印刷グループ従業員持株会となっています。王子マテリアとは原材料の仕入や製品の販売において取引関係があります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 王子マテリア | 17.81% |
| すぐるラボ | 11.04% |
| 笹徳印刷グループ従業員持株会 | 5.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は杉山昌樹氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉山 昌樹 | 代表取締役社長 社長執行役員 全社統括 | 1984年山崎製パン入社。1993年同社入社。生産本部長、海外事業本部長等を歴任し、2020年9月より現職。 |
| 杉山 卓繁 | 取締役会長 | 1977年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。1985年同社入社。1998年社長就任後、2015年会長となり2025年9月より現職。 |
| 加藤 功 | 取締役 常務執行役員 販売・企画・制作部門統括 | 1987年入社。第一営業本部長、本社営業統括、世徳印刷科技(無錫)有限公司董事長等を経て2025年7月より現職。 |
| 今尾 義忠 | 取締役 執行役員生産・製造統括 海外事業本部長 | 1988年入社。品質保証本部長、生産本部長、FFS本部長等を経て2025年7月より現職。 |
| 天野 利通 | 取締役 執行役員 管理部門統括管理本部長 | 1985年アイカ工業入社。同社執行役員等を歴任後、2022年同社入社。管理統括、広報・IR室長を経て2025年7月より現職。 |
| 箭原 良彦 | 取締役 常勤監査等委員 | 1982年入社。販売促進本部長、常務執行役員本社営業統括、調達管理室長等を経て2024年9月より現職。 |
社外取締役は、友添雅直(元トヨタ自動車専務役員)、山田雄一郎(トリプルアイズ代表取締役)、柴田和範(公認会計士)、村瀬桃子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷事業」の単一セグメントですが、商品分野別に「パッケージング分野」「コミュニケーション分野」等を展開しています。
■(1) パッケージング分野
紙器や軟包装などの包装資材パッケージについて、企画設計から印刷、加工までを一貫生産し提供しています。また、店頭什器や販促物、段ボール等の輸送包装箱も取り扱っています。さらに、商品の包装、キッティング作業から発送までを受託するフルフィルメントサービスも展開しています。
主な収益源は、顧客企業に対するパッケージ製品や関連サービスの販売対価です。運営は主に笹徳印刷が行うほか、中国においては世徳印刷科技(無錫)有限公司が製造・販売を行い、インドネシアではPT.SASATOKU INDONESIAが販売事業を行っています。
■(2) コミュニケーション分野
情報を表現し届けるためのプリントメディアとして、折込広告、パンフレット、ポスター、マニュアル、統合報告書などの企画・印刷・加工を手掛けています。また、Webサイトの構築・運用、動画コンテンツ制作、イベントの企画・運営、デジタルアセットマネジメントサービスなども提供しています。
収益は、企業や団体などの顧客からの各種制作物やサービスの提供対価によって得ています。運営は笹徳印刷が主体となって行うほか、連結子会社のサンライトがセールスプロモーションに関わる企画・制作およびマーケティングの企画事業を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年6月期から2025年6月期にかけての業績を見ると、売上高は119億円から130億円の範囲で推移しています。利益面では、2023年6月期に高い水準を記録しましたが、直近の2025年6月期にかけては減少傾向にあり、利益率は低下しています。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 124億円 | 130億円 | 130億円 | 126億円 |
| 経常利益 | 3.5億円 | 7.3億円 | 5.9億円 | 5.4億円 | 4.2億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 5.9% | 4.5% | 4.1% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | 4.3億円 | 4.0億円 | 3.5億円 | 7.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となり、売上総利益率も若干低下しています。営業利益および営業利益率は前年と比較して低下しました。販管費の増加などが利益を圧迫する要因となっています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 126億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.0% | 19.5% |
| 営業利益 | 3.8億円 | 1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が7.3億円(構成比32%)、荷造運搬費が5.4億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、商品分野別の売上状況は以下の通りです。パッケージング分野は菓子・食品向け等の需要が堅調で増収となりましたが、コミュニケーション分野はデジタル化の影響や販促需要の低迷により減収となり、全体としては減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| パッケージング分野 | 85億円 | 89億円 |
| コミュニケーション分野 | 44億円 | 37億円 |
| 連結(合計) | 130億円 | 126億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
笹徳印刷のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により資金を得ていますが、前連結会計年度と比較してその額は減少しました。これは、税金等調整前当期純利益があったものの、売上債権や仕入債務の減少、そして法人税等の支払いがあったためです。投資活動では、定期預金の増加や有形固定資産、投資有価証券の取得に資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得により、前連結会計年度よりも多くの資金が使用されました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.3億円 | 0.6億円 |
| 投資CF | -3.7億円 | -6.8億円 |
| 財務CF | -0.9億円 | -4.9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「お客様の信頼第一」を基本理念の筆頭に掲げ、顧客と共に成長する企業を目指しています。また、「価値ある人財へ」として社員の挑戦と成長を支援し、「きっちり『ルール』、しっかり『マナー』」でコンプライアンス順守と社会貢献を重視しています。スローガン「Good Communication, Good Partner」のもと、顧客との信頼構築に努めています。
■(2) 企業文化
顧客と共に生活者を見据えたマーケットインの思想と、「発想から発送までのワンストップソリューション」を基盤としています。長年培った生産体制と製造技術により、高品質・低コストの製品を提供し、環境調和や法令順守を重視する堅実・誠実・公正な活動を実践する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2024年6月期から「2026中期ビジョン」を掲げ、「コミュニケーション」と「包む」技術で新しい感動を創り出すことを目指しています。お客様の良きパートナーとして共に発展することで収益性を確保し、グループ全体の売上高営業利益率を高めることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内印刷市場における旺盛なパッケージ需要を取り込むため、生産性向上や設備投資による能力増強を推進します。また、生成AI等の先端技術の実用化やデジタルメディア領域の競争力強化に取り組みます。海外では中国・インドネシアでの販売拡大に加え、東南アジア諸国への展開に向けた市場調査を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「価値ある人財へ」という理念のもと、社員の健康と安全を最優先に、多様な価値観を尊重する職場環境を整備しています。人事評価制度の高度化やタレントマネジメントの強化により、個々の能力を適正に評価し、最適な配置と育成を推進しています。また、ICTリテラシー向上教育などを通じて人的資本への投資を拡充しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 43.9歳 | 22.2年 | 5,247,512円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休業等取得率(100.0%)、男性育児休業等及び育児目的休暇の取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済環境および需要動向の変化
印刷産業においてプリントメディアの需要減少が進む中、同社グループは新たな事業分野の開拓を進めています。しかし、国内や中国・インドネシアの経済環境の変化、デジタルメディア化の進展などにより、新領域での売上拡大が進まない場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法規制および環境規制への対応
事業活動において環境保護や個人情報保護などの法律・規制の適用を受けています。特に化学物質規制などが導入されており、将来的に新たな規制により事業活動の制約や管理コストの上昇が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外事業展開における地政学リスク
中国およびインドネシアで事業を展開しており、これらの国における自然災害、感染症、政治的・経済的な社会的混乱などの地政学リスクが存在します。急激な変動により事業継続に支障をきたした場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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