オカムラ食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オカムラ食品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する同社は、サーモン養殖から加工、海外卸売までを手掛ける水産会社です。当連結会計年度の業績は、国内養殖量の拡大や海外販売の好調により、売上高353億円(前期比108.2%)、営業利益30億円(同118.6%)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社オカムラ食品工業 の有価証券報告書(第55期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オカムラ食品工業ってどんな会社?


サーモンを中心とした養殖、加工、販売の垂直統合モデルでグローバル展開する水産関連企業です。

(1) 会社概要


同社は1971年に水産加工品の製造販売を目的に設立されました。2005年にデンマークの養殖会社Musholm A/Sを買収し、サーモン養殖のノウハウを獲得。2017年には日本サーモンファームを設立し、国内での大規模養殖を開始しました。海外での加工・卸売拠点の拡大を経て、2023年9月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たしました。

同グループは連結従業員806名、単体95名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家出身の代表取締役社長である岡村恒一氏の資産管理会社と思われる株式会社オカムラで、第2位は岡村恒一氏本人です。経営陣と創業家が安定的な持株比率を維持しています。

氏名 持株比率
オカムラ 36.14%
岡村恒一 19.28%
Steelhead Aps 5.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長兼CEOは岡村恒一氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
岡村恒一 代表取締役社長兼CEO 1985年鍋林入社。1987年同社入社。1999年代表取締役就任。2017年日本サーモンファーム代表取締役社長を経て、2019年5月より現職。
橋本裕昭 常務取締役兼CFO 1994年朝日監査法人入所。金融庁出向等を経て2009年同法人パートナー。2020年同社入社、管理本部副本部長。2024年8月より現職。


社外取締役は、櫻庭一憲(元あおぎんリース社長)、小嶋京子(税理士法人セントラル代表社員)、伊藤史行(元青森県弁護士会会長)、濱田武士(北海学園大学経済学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「養殖事業」「国内加工事業」「海外加工事業」および「海外卸売事業」を展開しています。

(1) 養殖事業


生食用のサーモントラウトを養殖し、国内外に向けて販売しています。デンマークの子会社Musholm A/Sでは主に魚卵採取を目的とした養殖を行い、日本では日本サーモンファームが青森県で大規模な海面養殖を行っています。

収益は、養殖した成魚や魚卵の販売によって得ています。また、生産物の一部は同社グループ内の加工事業へ原料として供給されます。運営は、デンマークではMusholm A/S等が、国内では日本サーモンファーム株式会社が行っています。

(2) 国内加工事業


魚卵(筋子・いくら・たらこ等)やサーモンを原料として加工し、販売を行っています。主な加工拠点は青森県青森市にある同社の第一工場と第二工場です。顧客は国内のスーパーマーケットや外食産業が中心ですが、アジア圏への輸出も行っています。

収益は、加工製品の販売代金です。原料はグループ内の養殖事業からの仕入れに加え、外部からも調達しています。運営は主にオカムラ食品工業が行っています。

(3) 海外加工事業


海外の拠点で水産加工品を製造・販売する事業です。ミャンマーの自社工場やベトナムのパートナー工場にて、サーモン原料の寿司ネタ加工や焼き魚・煮魚製品の加工を行っています。

収益は、加工製品の販売により得ています。製品は日本国内向けに輸出されるほか、シンガポールやマレーシア等の現地販売拠点へも出荷されます。運営は、オカムラ食品工業の東京事業本部やOkamura Trading Myanmar Co., Ltd.等が担っています。

(4) 海外卸売事業


シンガポール、マレーシア、台湾、タイに拠点を持ち、現地の日系スーパーや日本食レストラン等へ日本食材を販売しています。自社グループ製品だけでなく、他社から調達した商材も幅広く取り扱っています。

収益は、食材の卸売販売による代金です。運営は、Okamura Trading Singapore Pte., Ltd.やXenka Trading (M) Sdn. Bhd.などの現地子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益率が10%前後で推移しており、水産事業としては比較的高い収益性を維持しています。当期純利益も安定して黒字を確保しており、垂直統合型ビジネスモデルの効果が現れていると言えます。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 202億円 241億円 289億円 327億円 353億円
経常利益 16億円 33億円 35億円 29億円 28億円
利益率(%) 7.9% 13.9% 12.2% 9.0% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 22億円 24億円 20億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加していますが、利益率は20%前後で安定的に推移しています。販管費の増加も見られますが、売上拡大による利益額の増加がそれを上回っています。営業利益率は8%台を維持しており、効率的な事業運営が継続されていることが読み取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 327億円 353億円
売上総利益 65億円 74億円
売上総利益率(%) 19.8% 20.9%
営業利益 25億円 30億円
営業利益率(%) 7.8% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比29%)、荷造費及び運搬費が5億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて黒字を確保しています。特に養殖事業は売上・利益ともに大きく伸長しており、同社の成長ドライバーとなっています。海外卸売事業も売上を伸ばしつつ利益率を改善させています。国内加工事業と海外加工事業は堅調に推移し、安定した収益基盤となっています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
養殖事業 51億円 60億円 8億円 12億円 20.5%
国内加工事業 76億円 87億円 11億円 12億円 13.5%
海外加工事業 111億円 96億円 11億円 10億円 10.8%
海外卸売事業 89億円 110億円 3億円 6億円 5.5%
調整額 - - -6億円 -10億円 -
連結(合計) 327億円 353億円 25億円 30億円 8.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**
本業の営業活動から得たキャッシュで、投資活動と借入金の返済を行っており、健全な資金循環が見られます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 3億円 35億円
投資CF -23億円 -20億円
財務CF 47億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「海の恵みを絶やすことなく世界中の人々に届け続ける。」をMissionとして掲げています。水産資源の持続可能性を追求しながら、世界中の人々の食生活を豊かにし続けることを企業の使命としています。

(2) 企業文化


同社は、日本の水産業の成長を阻害する「供給の不安定性」と「消費の減少」という二つの要因を解消することを目指しています。養殖による供給の安定化と、アジア圏での販売促進による消費拡大を通じて、衰退産業とされる日本の水産業を成長産業へと変革していくという挑戦的な姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営目標2030」を掲げ、特に国内養殖量の拡大と海外卸売事業の売上拡大を最重要課題と位置付けています。国内養殖量については、目標生産数12,000トンの達成を目指し、必要な設備投資を計画的に進めています。また、養殖事業の拡大によるグループ全体の利益率向上も目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、養殖事業と海外卸売事業を成長エンジンと位置づけています。国内では養殖適地の開発や設備投資により生産規模を拡大し、自動給餌システムの導入等で効率化を図ります。海外では、日本食需要の高まるアジア地域での卸売拠点を拡充し、コールドチェーンへの投資やハラール対応などを進めることで、販売網の強化とエリア拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、問題解決能力が高く、チームに貢献し、グローバルに活躍できる人材の育成を目指しています。海外拠点との連携や語学サポートを通じたグローバル人材の育成、女性や高齢者、外国人技能実習生など多様な人材が活躍できるダイバーシティの推進、および養殖現場での安全性向上などの労働環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.2歳 5.8年 6,105,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動(温暖化)によるリスク


地球温暖化による海水温の上昇などの海洋環境の変化は、漁獲量や養殖生産量の減少を招く恐れがあります。また、台風や赤潮などの自然災害の激甚化は、養殖施設や工場への直接的被害や物流への影響をもたらし、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業の拡大に関連するリスク(カントリーリスク)


海外での事業展開においては、政情不安、為替変動、法規制の変更、商習慣の違いなど様々なリスクが存在します。特にミャンマーのような情勢が不安定な地域での事業活動は、予期せぬ事態により操業に影響が出る可能性があります。

(3) 養殖事業に関するリスク


養殖事業は、区画漁業権や水利権の継続的な行使が必要です。また、海洋汚染や魚病の発生による大量斃死、将来的な環境規制の強化などが事業の制約要因となる可能性があります。さらに、養殖用卵の調達が特定の国に依存していることもリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。