ダイブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する同社は、リゾートバイトに特化した「観光HR事業」と、グランピング施設等を運営する「地方創生事業」を展開しています。2025年6月期の業績は、インバウンド需要等を背景に主力事業が好調で、売上高11.5%増、経常利益40.7%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ダイブ の有価証券報告書(第25期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイブってどんな会社?


リゾートバイトに特化した人材サービスや、非観光地でのグランピング施設運営等を通じて地方創生に取り組む企業です。

(1) 会社概要


2002年3月に有限会社ふらり(現同社)を設立し、2019年3月に現社名へ商号変更しました。同年8月には地方創生事業を開始し、香川県東かがわ市にグランピング施設を開業しています。2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2025年5月には観光業界特化型SaaS「ハッサク」を開発するなど事業を拡大しています。

2025年6月30日現在の従業員数は単体で159名です。筆頭株主は代表取締役社長の庄子潔氏で、第2位は同氏の資産管理会社である合同会社なかなか、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
庄子 潔 41.02%
合同会社なかなか 25.56%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 3.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は庄子潔氏です。取締役会における社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
庄子 潔 代表取締役社長 2001年ヒューマニック入社。2003年同社入社、仙台支店長、取締役東日本エリアマネージャーを経て、2012年5月より現職。
山本 拓嗣 取締役プロジェクト推進担当 1997年帝国ホテル入社。2005年同社入社、取締役リゾート人材サービス事業部長、管理本部長などを経て、2024年7月より現職。
野方 慎太郎 取締役営業本部長 2003年ゲオ入社。2007年同社入社、福岡支店長、西日本エリアマネージャーなどを経て、2018年2月より現職。
山中 哲男 取締役事業開発・アライアンス担当 2008年インプレス(現トイトマ)代表取締役就任(現任)。2020年同社取締役就任、2024年11月より現職。


社外取締役は、山口豪志(54代表取締役社長)、岩井裕之(かっこ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「観光HR事業」、「地方創生事業」および「その他」事業を展開しています。

観光HR事業


リゾートバイトに特化した人材サービスを提供しており、日本全国のリゾートホテルや旅館、テーマパーク等の観光施設に対して、人材派遣および有料職業紹介を行っています。若者を中心にリゾート地へ人材を送り出し、住み込みでの就労機会を提供しています。

収益は、派遣先である観光施設等から受領する派遣料金や紹介手数料からなります。運営は同社が行っており、WEBサイト「リゾートバイトダイブ」等を通じて求職者を集客し、観光施設とのマッチングを行っています。

地方創生事業


まだ地域の魅力が知られていない「非観光地」を中心に、グランピング施設やホテル等の宿泊施設の企画開発・経営・運営を行っています。既存の遊休施設や公有地を活用し、初期投資を抑えた開発を行う点が特徴です。

収益は、宿泊客から受領する宿泊料金や、施設運営パートナー企業からの業務提携料、自社運営サイト「GLAMPICKS」の掲載料等からなります。運営は同社が行っており、一部施設ではパートナー企業と協働で運営を行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、情報システム事業等を行っています。

収益や運営体制の詳細は記載されていませんが、同社が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は一貫して拡大傾向にあります。特に2023年6月期以降の伸びが著しく、2025年6月期には130億円を超えました。利益面でも、2021年6月期は赤字でしたが、翌期以降は黒字化し、経常利益および当期利益ともに増加基調を維持しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 28億円 40億円 83億円 124億円 138億円
経常利益 -2.1億円 0.2億円 1.4億円 5.5億円 7.7億円
利益率(%) -7.7% 0.6% 1.7% 4.4% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.6億円 0.1億円 1.7億円 3.2億円 4.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高、各利益段階ともに増加しています。特に営業利益率は4.4%から5.5%へと改善しており、収益性が向上しています。売上総利益も増加しており、事業規模の拡大に伴い利益創出能力が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 124億円 138億円
売上総利益 30億円 35億円
売上総利益率(%) 23.9% 25.2%
営業利益 5.4億円 7.6億円
営業利益率(%) 4.4% 5.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8億円(構成比28%)、広告宣伝費が5億円(同18%)を占めています。売上原価の98%以上は労務費(派遣スタッフ給与等)が占めています。

(3) セグメント収益


観光HR事業はインバウンド需要等を背景に堅調で、売上高・利益ともに増加し全社の収益を牽引しています。地方創生事業は売上高が約6割増と大幅に成長し、黒字転換を果たしました。その他事業は規模を縮小しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
観光HR事業 118億円 130億円 13億円 13億円 9.8%
地方創生事業 5億円 8億円 -3億円 0.1億円 0.7%
その他 0.8億円 0.2億円 -0.0億円 -0.5億円 -323.0%
調整額 - - -4億円 -5億円 -
連結(合計) 124億円 138億円 5.4億円 7.6億円 5.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイブ社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金が、投資活動での設備投資やシステム開発への支出、財務活動での借入と返済、自己株式取得などを経て、最終的に増加しました。営業活動では、事業で得た利益が主な増加要因ですが、税金や前払金、未払消費税の変動などが影響しました。投資活動では、地方創生事業における宿泊施設の新規開業や増設、システム開発への投資が主な支出となりました。財務活動では、短期・長期借入による収入があった一方で、借入金の返済や自己株式の取得による支出がありました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 6.3億円 2.7億円
投資CF -7.3億円 -2.1億円
財務CF 3.6億円 -0.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「一生モノの『あの日』を創り出す」というミッションと、「誰もがジブンの人生を愛せる世界へ」というビジョンを掲げています。リゾートバイト等の体験を通じて、若者が多様な価値観に触れ、自分の人生に誇りを持てるきっかけとなる体験を創出することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は未知の領域に果敢に挑戦(ダイブ)し続けたいという考えを大切にしています。創業事業であるリゾートバイト事業に加え、グランピング施設の運営など新たな分野へ進出しており、今後もチャレンジャーであり続け、ビジョンの実現と社会貢献を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


事業規模と収益性を測る指標として、売上高および営業利益を重要指標としています。また、主力事業である観光HR事業では、売上拡大に直結する派遣スタッフ等の就業者数の増加、および就業者1人当たりの売上高拡大を重要指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


観光HR事業では、若手・シニア・外国人人材の獲得強化に加え、SEO施策や相互評価システムの導入により派遣スタッフの確保と定着を図ります。地方創生事業では、非観光地での遊休施設を活用したグランピング等の観光事業開発を推進します。また、観光業界特化型SaaSの開発など新規事業やM&Aも積極的に進める方針です。

* 2030年の訪日外国人旅行者数6,000万人目標を見据えた事業基盤強化
* 観光業界特化型SaaS「ハッサク」による業務効率化支援

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ビジョン・ミッションへの共感を重視し、変化に対応できる柔軟な思考と成長志向を持つ人材の確保に注力しています。育成面では、全従業員参加型の新規事業コンテストやマネージャー向けプログラムを実施し、創造性とリーダーシップを養います。また、360度人事評価や多様な働き方の推進により、エンゲージメントの高い組織を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 30.7歳 3.7年 5,089,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 94.1%
男女賃金差異(正規) 64.3%
男女賃金差異(非正規) 100.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の男女比率(女性比率)(45.2%)、男性労働者の配偶者出産休暇取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 派遣スタッフ等の確保について


観光HR事業において、派遣スタッフ等の継続的な確保は重要です。雇用情勢や労働需要の変化により人材確保が計画通り進まない場合や、顧客の要望に応じた十分な人材を確保できない場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 四半期ごとの業績変動について


観光HR事業や地方創生事業は、夏季が繁忙期となるため、この期間に収益が増加する傾向があります。そのため、売上高は年間を通じて平準化されず、四半期ごとの業績が著しく変動する可能性があります。

(3) 宿泊施設開業計画について


地方創生事業における新規宿泊施設の開業には、提案から交渉、地元説明会などを経て通常1年〜1年半程度を要します。交渉過程での計画見直しや、地元住民の反対等により計画が長期化または頓挫した場合、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制について


労働者派遣法や職業安定法などの関連法令の改正や、重大な法令違反による許可の取り消し等が生じた場合、事業活動が制限され、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、社会保険制度の改定による事業主負担額の増加もリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。