構造計画研究所ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

構造計画研究所ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

構造計画研究所ホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。高度なエンジニアリング技術と情報技術を組み合わせたコンサルティングや、ソフトウェア製品のサービス事業を主に展開しています。直近の業績は、主力事業が堅調に推移したことで増収増益を達成し、成長を続けています。


※本記事は、株式会社構造計画研究所ホールディングスの有価証券報告書(第2期、自 2025年7月1日 至 2026年6月30日、2026年9月4日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 構造計画研究所ホールディングスってどんな会社?


工学知と情報技術を活用したコンサルティングやソフトウェアサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1956年に服部正構造計画研究所として構造設計事業をスタートし、1959年に構造計画研究所を設立しました。2004年にジャスダック証券取引所に上場し、2022年には東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。2024年に単独株式移転によって純粋持株会社である構造計画研究所ホールディングスを設立し、テクニカル上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で764名です。筆頭株主は事業会社の南悠商社で、第2位は創業者の親族である服部正太氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
南悠商社 9.00%
服部 正太 7.48%
日本カストディ銀行(信託口) 3.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表執行役は服部正太氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
服部 正太 取締役、代表執行役 ボストンコンサルティンググループを経て構造計画研究所に入社し、社長や会長を歴任。構造計画研究所ホールディングスの設立に伴い代表執行役に就任。
木村 香代子 取締役、執行役 構造計画研究所に入社後、創造工学部長や執行役員、取締役専務執行役等を歴任。構造計画研究所ホールディングスの設立に伴い取締役および執行役に就任。
渡邊 太門 取締役 日本興業銀行に入行後、投資顧問会社等を経て構造計画研究所に入社し、社長を歴任。構造計画研究所ホールディングスの設立に伴い取締役に就任。
荒木 秀朗 取締役、監査委員 構造計画研究所に入社後、企画部長や取締役専務執行役等を歴任。構造計画研究所ホールディングスの設立に伴い取締役および監査委員に就任。
水野 哲博 取締役 構造計画研究所に入社後、熊本構造計画研究所長や取締役常務執行役員等を歴任。構造計画研究所ホールディングスの設立に伴い取締役に就任。


社外取締役は、中込秀樹(元名古屋高等裁判所長官)、本荘修二(本荘事務所代表)、新宅祐太郎(元テルモ社長・指名委員長)、加藤嘉一(元東京三菱銀行中近東総支配人)、根本博史(元中央青山監査法人パートナー・監査委員長)、今泉泰彦(元日鉄興和不動産社長・報酬委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンジニアリングコンサルティング」、「プロダクツサービス」および「その他」事業を展開しています。

エンジニアリングコンサルティング


同セグメントでは、顧客が抱える固有の経営課題や複雑な社会課題に対し、高度なエンジニアリング技術とコンサルティング力を用いた解決策を提供しています。構造設計、環境評価、防災、意思決定支援、情報通信技術、製造技術などの幅広い分野で、専門的な知見やシステム開発を相対で提供しています。

収益は、顧客からコンサルティングやシステム開発の対価として請負契約などで受け取ります。運営は主に構造計画研究所、KKEスマイルサポート、PARA-SOLが担当しています。

プロダクツサービス


同セグメントでは、エンジニアリングコンサルティングで得た知見や国内外の技術パートナーと連携し、製造、建築・土木、情報通信向けのソフトウェアパッケージの販売とクラウドサービスを提供しています。クラウド型入退室管理プラットフォームなども展開し、日本市場に合わせた有益なサービスを提供しています。

収益は、パッケージソフトウェアの販売代金や、サブスクリプション型のクラウドサービス利用料として顧客から継続的に受け取ります。運営は構造計画研究所やリモートロックジャパンなどの子会社が担当しています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、人材派遣業などを展開しています。

収益は、顧客企業に対する人材派遣などの各種サービス提供の対価として受け取ります。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績は、売上高が着実に拡大しており、増収傾向が続いています。経常利益も増加しており、安定した収益基盤を維持していますが、当期利益は一部の費用計上等により前期と比較して減少しています。

項目 2025年6月期 2026年6月期
売上高 201億円 225億円
経常利益 30億円 32億円
利益率(%) 15.1% 14.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益はともに増加しており、事業の成長が粗利の拡大に結びついています。営業利益も伸びており、収益性の向上を示す結果となっています。

項目 2025年6月期 2026年6月期
売上高 201億円 225億円
売上総利益 105億円 113億円
売上総利益率(%) 52.2% 50.2%
営業利益 31億円 35億円
営業利益率(%) 15.4% 15.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が28億円(構成比36%)、賞与及び賞与引当金繰入額が8億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である両セグメントともに売上が増加し、業績を牽引しています。特にエンジニアリングコンサルティング事業の売上拡大が全体の増収に大きく貢献しており、プロダクツサービスも順調に推移しています。

区分 売上(2025年6月期) 売上(2026年6月期)
エンジニアリングコンサルティング 120億円 133億円
プロダクツサービス 76億円 86億円
その他 6億円 5億円
連結(合計) 201億円 225億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年6月期 2026年6月期
営業CF 33億円 23億円
投資CF -23億円 -7億円
財務CF 0.6億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も50.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


構造計画研究所ホールディングスは、21世紀の日本を代表する「知識集約型企業 Professional Design & Engineering Firm」を目指しています。社会と共に目指す未来像として「Innovating for a Wise Future」というソート(Thought)を掲げ、工学知をベースにした有益なソリューションを社会に普及させることで、賢慮にみちた未来社会の創出を使命としています。

(2) 企業文化


同社は、自律・自立と機動性、独立性、多様性、透明性、社会性を知識集約型企業としての行動指針に掲げています。自由闊達な知の探索を奨励し、所員が切磋琢磨して主体的にチャレンジできる組織風土を構築するとともに、専攻やジェンダー、国籍によらない多様な経験や知見を組織の活性化につなげる文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業の成長と才能ある人材(人才)の成長の両輪で持続的な成長を目指しています。利益の追求に加えて人材への還元も考慮し、営業利益に人件費と福利厚生費(フリンジベネフィット)を加えた指標を「総付加価値」と定義しています。

* 中長期的に総付加価値の8%程度の年間成長
* 自己資本比率の適正な水準の維持
* 高いROEの維持・向上

(4) 成長戦略と重点施策


付加価値の高い既存事業の推進と新たな事業投資により、中長期的な企業価値向上を図ります。エンジニアリングコンサルティング事業では高収益を維持しつつ新規顧客やテーマを開拓し、プロダクツサービス事業ではクラウドサービス等の規模拡大と利益率改善を目指します。

* 品質の維持および向上
* 多様性のある優秀な人才の確保、育成、定着
* 既存ビジネスのさらなる成長
* 今後10年の成長を担う新規事業の開発、開拓

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社会のいかなる問題にも対処できるよう、バラエティに富んだ専門家を集めた組織を作りたい」という創業の志のもと、多様な人材(人才)の採用と育成に注力しています。個人の裁量を重視した教育制度や複線型のキャリアパスを用意し、定年制の廃止や多様な働き方の提供を通じて、一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年6月期 42.0歳 12.5年 10,660,000円


※平均年間給与は基本給、超過労働に対する報酬、フリンジベネフィット、賞与等を含み、退職手当、通勤手当等を除いています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.9%
男性育児休業取得率 77.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※パート・有期労働者については該当者が存在しないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(5.2%)、有給休暇消化率(87.5%)、男性育児休業取得日数(86日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大型プロジェクトの不良化リスク


エンジニアリングコンサルティング事業の多くは請負契約であり、契約内容やプロジェクト管理の不備によって作業工数の増大や納品物の品質低下が発生した場合、大幅な採算悪化や顧客への損害賠償、機会損失が生じ、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


業務上、顧客の機密情報などの情報資産を保有しており、コンピュータウイルス感染やサイバー攻撃などの不正侵入、自然災害による情報漏洩や消失が発生した場合、信用喪失につながり経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 経営成績の季節的変動による資金繰りのリスク


顧客が決算期を迎える3月末から6月末に成果品の引渡しが集中し、売上高が下半期に偏る傾向があります。経済状況の悪化などで借入れが困難になった場合、上半期に資金繰りが悪化するリスクがあります。

(4) 人才に関するリスク


成長の原動力は人材(人才)であり、労働市場の流動性向上などで優秀な人材が流出した場合や、採用や育成の質が低下した場合、提供するサービスの質や競争力の低下を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。