構造計画研究所ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

構造計画研究所ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場。建築物の構造設計や解析などのエンジニアリングコンサルティングと、製造業向け解析ソフト等のプロダクツサービスを展開する。2024年7月に持株会社体制へ移行し設立された第1期決算では、クラウドサービス等が牽引し、業績は順調に推移した。


※本記事は、株式会社構造計画研究所ホールディングス の有価証券報告書(第1期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月5日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 構造計画研究所ホールディングスってどんな会社?

建築構造設計から始まり、情報通信や製造分野へ事業を拡大した工学知のプロフェッショナル集団です。

(1) 会社概要

1959年、構造設計の専業事務所として前身企業が設立され、1960年代には米国に現地法人を設立するなど早期から海外展開を進めた。2000年に株式を店頭登録し、2013年に東証JASDAQ(スタンダード)へ上場。2024年7月、単独株式移転により純粋持株会社として同社を設立し、東証スタンダード市場に上場した。

連結従業員数は733名。筆頭株主は南悠商社で、第2位は代表執行役の服部正太氏、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行となっている。南悠商社は創業家に関連する資産管理会社と推察される。

氏名 持株比率
株式会社南悠商社 8.99%
服部 正太 7.43%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.85%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性1名、女性比率9.1%です。代表執行役は服部正太氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
服部 正太 取締役 兼 代表執行役 1985年ボストンコンサルティンググループ入社。1987年構造計画研究所入社、2002年同社代表取締役社長、2021年代表執行役会長等を経て2024年7月より現職。
渡邊 太門 取締役 1979年日本興業銀行入行。野村アセットマネジメント常務執行役等を経て、2015年構造計画研究所取締役副社長。2021年同社代表取締役社長等を歴任し2024年7月より現職。
木村 香代子 取締役 兼 執行役 1984年構造計画研究所入社。2006年同社執行役員、2017年取締役専務執行役員、2021年執行役副社長等を経て2024年7月より現職。
荒木 秀朗 取締役 1989年構造計画研究所入社。2009年同社執行役員、2015年取締役常務執行役員等を経て2024年7月より現職。
水野 哲博 取締役 1987年構造計画研究所入社。2004年同社執行役員、2015年取締役常務執行役員等を経て2024年7月より現職。


社外取締役は、中込 秀樹(元名古屋高等裁判所長官)、本荘 修二(本荘事務所代表)、新宅 祐太郎(元テルモ代表取締役社長)、加藤 嘉一(元香港上海銀行ヘッド・オブ・バンキング、ジャパン)、根本 博史(クリフィックス税理士法人代表パートナー)、今泉 泰彦(元日鉄興和不動産代表取締役社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「エンジニアリングコンサルティング」「プロダクツサービス」および「その他」事業を展開しています。

(1) エンジニアリングコンサルティング

高層建築や風力発電の構造設計・解析、地震動評価や災害リスク評価を行う防災コンサルティング、住宅・建設分野のCAD・BIMシステム開発などを提供しています。顧客は建設会社、官公庁、製造業、通信事業者など多岐にわたります。

収益は、顧客からの受託業務に対するコンサルティングフィーやシステム開発費等が中心です。運営は主に株式会社構造計画研究所が行っており、株式会社KKEスマイルサポートなども関与しています。

(2) プロダクツサービス

製造業向けのCAEや熱流体解析、情報通信関連の電波伝搬解析などのパッケージソフトウエア販売のほか、クラウド型入退室管理システム「RemoteLOCK」や屋内デジタル化プラットフォーム「NavVis」などを提供しています。

収益は、パッケージソフトウエアのライセンス販売料や保守料、クラウドサービスのサブスクリプション利用料などから構成されます。運営は株式会社構造計画研究所のほか、株式会社リモートロックジャパンやInternational Logic Corporationなどが担っています。

(3) その他

上記報告セグメントに含まれない事業として、その他の収益獲得活動を行っています。

収益は、当該事業活動に伴う対価として受領します。運営は、株式会社構造計画研究所を除く連結子会社等が主に行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

設立初年度である2025年6月期の売上収益は約201億円、経常利益は約30億円となりました。エンジニアリングコンサルティングの着実な進捗やクラウドサービスの成長が寄与し、高い利益率を確保しています。

項目 2025年6月期
売上高 201億円
経常利益 30.5億円
利益率(%) 15.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 12.0億円

(2) 損益計算書

第1期のため単年度の数値となりますが、売上総利益率は52.2%、営業利益率は15.3%と高い収益性を示しています。

項目 2025年6月期
売上高 201億円
売上総利益 105億円
売上総利益率(%) 52.2%
営業利益 31億円
営業利益率(%) 15.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が26億円(構成比35%)、賞与及び賞与引当金繰入額が7億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益

エンジニアリングコンサルティング事業が全体の売上の約6割を占め、高い利益率で全社の利益を牽引しています。プロダクツサービス事業もクラウドサービス等の成長により収益に貢献しています。

区分 売上(2025年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
エンジニアリングコンサルティング 120億円 49億円 41.3%
プロダクツサービス 76億円 14億円 18.0%
その他 6億円 2億円 32.5%
調整額 - -34億円 -
連結(合計) 201億円 31億円 15.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動で得た資金と財務活動による調達資金を合わせて、投資活動に充当する「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年6月期
営業CF 33.2億円
投資CF -22.7億円
財務CF 0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

21世紀の日本を代表する「知識集約型企業 Professional Design & Engineering Firm」を目指す姿として掲げています。また、工学知をベースにした有益なソリューションの普及により、より賢慮にみちた未来社会を創出するという想いを込め、「Innovating for a Wise Future」というThought(ソート)を定めています。

(2) 企業文化

知識集約型企業として、「自律・自立と機動性」「独立性」「多様性」「透明性」「社会性」を行動指針として重視しています。創業の志を引き継ぎ、多様な専門家が集まり、自由闊達な知の探索を奨励する風土があります。人を「人材」や「人財」ではなく、個々の才能に着目する「人才」と定義している点も特徴です。

(3) 経営計画・目標

利益の追求に加え、成長の源泉となる「人才」への還元も考慮し、営業利益に人件費と福利厚生費を加えた「総付加価値」を重要な経営指標と定義しています。この総付加価値について、中長期的に年率8%程度の成長を経営目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策

品質の確保・向上を最重要課題としつつ、多様性のある優秀な「人才」の確保・育成に注力しています。既存のエンジニアリングコンサルティングビジネスでは高収益性の維持と新規開拓を進める一方、今後10年の成長を担う新規事業として、大学・研究機関との連携や海外スタートアップ企業のサービスの国内展開(RemoteLOCK等)を加速させています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

多様な「人才」を価値創造の源泉と捉え、ジェンダーや国籍を問わない採用を推進しています。個人の裁量を重視した育成支援を行い、セミナー受講や書籍購入費用を会社が負担するほか、複線型キャリアパスや定年制の廃止など、自律的な働き方を支援する制度を整えています。また、持株会社体制下で各社が連携し、多様な働き方の選択肢を提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(連結)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 42.1歳 13.2年 951万円


※平均年間給与は基本給、超過労働に対する報酬、フリンジベネフィット、賞与等を含み、退職手当、通勤手当等を除いています。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.9%
男性育児休業取得率 82.4%
男女賃金差異(全労働者) 76.5%
男女賃金差異(正規雇用) 79.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 117.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(10.3%)、有給休暇消化率(84.1%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大型プロジェクトの不良化リスク

エンジニアリングコンサルティング事業は請負契約が多く、契約内容やプロジェクト管理の不備により工数増大や品質低下が生じた場合、採算悪化や損害賠償につながる可能性があります。専門的な品質保証部門を設置し、提案段階から最終工程までのチェック体制を強化しています。

(2) 情報セキュリティに関するリスク

顧客の機密情報等の情報資産を保有しており、サイバー攻撃や自然災害等による漏洩、紛失等が発生した場合、社会的信用の失墜や経営成績への悪影響が懸念されます。技術的・物理的な対策に加え、所員への教育を通じて管理体制の強化・徹底を図っています。

(3) 経営成績の季節的変動リスク

顧客の決算期である3月から6月に成果品の引渡しが集中しやすいため、売上高や請求が下半期に偏る傾向があります。資金繰り悪化のリスクを低減するため、収益認識の適正化やサブスクリプション型ビジネスの拡大により、売上時期の分散を進めています。

(4) 為替変動リスク

海外パートナー企業への出資や海外プロダクツの仕入、ロイヤリティ支払いに伴い、円安等が進行した場合にコスト増となる可能性があります。販売価格の改定や一括前払いによるレート固定、速やかな外貨変換などの施策によりリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。