※本記事は、株式会社WOLVES HAND の有価証券報告書(第7期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. WOLVES HANDってどんな会社?
動物病院およびペットサロンの運営を主力とし、電子カルテシステム開発や獣医師向け教育も手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
2000年に大阪市で「きたい動物病院」を開業したのが始まりです。2019年にJ-STAR株式会社のファンド等により現法人が設立され、複数の動物病院運営会社を統合しました。2020年には動物病院向けシステム会社を買収し、事業領域を拡大。2024年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
同社の連結従業員数は453名、単体では419名です。筆頭株主は創業者の北井正志氏で、第2位、第3位には投資ファンドであるJ-STARの関連組合が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北井 正志 | 44.04% |
| J-STAR No.3 SS,LP | 15.73% |
| J-STAR No.3 JF,LP | 8.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEO兼COOは北井正志氏です。社外取締役比率は80.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北井 正志 | 代表取締役CEO兼COO | 1998年新田谷動物病院入社。2000年にきたい動物病院を開業。その後、複数の動物病院運営会社の代表を経て、2019年5月より同社代表取締役CEO。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、山口克隆(公認会計士・テレオアフェクトFAS代表)、岡田崇司(税理士・A-Trust税理士法人代表)、今春博(弁護士・いぶき法律事務所)、武田信(元大和証券公開引受部担当部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「動物病院運営」「ペットサロン運営」「動物病院向けソフトウエアの提供」「獣医療教育セミナーの配信」「その他」事業を展開しています。
**動物病院運営**
関西、関東、九州・沖縄の3エリアで動物病院を運営しています。高度医療機器を備えた「センター病院」と、かかりつけ機能を持つ「サテライト病院」を連携させ、身近なケアから高度医療までシームレスに提供しています。
収益は、飼い主からの診療費、検査費、手術費等です。運営は主に同社、株式会社そよかぜ、株式会社バハティーが行っています。
**ペットサロン運営**
動物病院に併設する形でトリミングやペットホテルなどのサービスを提供しています。定期的なケアを通じてペットの健康チェックを行い、異常があれば併設病院での診療を勧めるなど、予防医療の一環も担っています。
収益は、飼い主からのトリミング料やホテル利用料です。運営は主に同社が行っています。
**動物病院向けソフトウエアの提供**
動物病院向け顧客管理システム「わん太郎」の開発・販売を行っています。電子カルテや会計管理機能を備え、クラウド化も推進しています。
収益は、導入病院からの初期費用および月額利用料(サブスクリプション)です。運営は主に同社が行っています。
**獣医療教育セミナーの配信**
小動物臨床獣医師向けの情報サイト「VMN」を運営し、動画配信や文献情報、コンサルティングサービスを提供しています。「世界標準を一次病院の獣医師へ」を理念に、若手獣医師の育成を支援しています。
収益は、獣医師等の会員からの月額利用料です。運営は株式会社ペット・ベットが行っています。
**その他(医療用機械器具の製造・販売)**
関連会社を通じて、主に動物用のレーザー医療機器等の研究開発、製造、販売を行っています。
収益は、製品の販売代金等です。運営は飛鳥メディカル株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加しており、直近の2025年6月期には55億円規模に達しています。経常利益も順調に伸長しており、利益率は16〜17%台の高い水準を維持しています。当期純利益も毎期着実に積み上がっており、事業規模の拡大と収益性の維持を両立していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 42億円 | 43億円 | 47億円 | 50億円 | 55億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 7億円 | 8億円 | 8億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 16.0% | 16.6% | 17.2% | 16.0% | 16.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 5億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約27%前後で推移しており、営業利益率も16.6%と前年より改善しています。M&Aや上場関連の費用が発生する中でも、本業の収益力が強化されている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 50億円 | 55億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 27.1% |
| 営業利益 | 8億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 16.6% | 16.6% |
販売費及び一般管理費のうち、のれん償却が2億円(構成比28%)、役員報酬が1億円(同14%)、給与手当が1億円(同14%)を占めています。売上原価については内訳の詳細な記載がありません。
■(3) セグメント収益
主力の動物病院運営事業が売上高の大部分を占めており、M&Aや新規開院効果により順調に拡大しています。ペットサロン運営や獣医療教育セミナー配信なども一定の規模を維持していますが、成長の中心は依然として動物病院運営にあります。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 動物病院運営 | 43億円 | 48億円 |
| ペットサロン運営 | 5億円 | 5億円 |
| 動物病院向けソフトウエアの提供 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 獣医療教育セミナーの配信 | 1.0億円 | 1.0億円 |
| その他 | 1.1億円 | 1.2億円 |
| 連結(合計) | 50億円 | 55億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、事業基盤強化のため、高度医療に対応したセンター病院の開設や人材採用等に注力しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出された資金を示しており、堅調な事業運営を反映しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた設備投資や事業買収等に充てられた資金です。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済等、財務構造に関わる資金の動きを示しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 9億円 |
| 投資CF | -4億円 | -4億円 |
| 財務CF | -2億円 | -6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Animal is my life(生き物の命を救い、守り続けること)」を企業理念として掲げています。この理念のもと、「人と変わりない幸せを動物たちに届けたい」「世界最先端の動物医療を実現したい」「動物と社会が隔たりなくつながる世の中を実現したい」という3つの使命を果たし、動物医療の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「Animal is my life」を全ての活動の根幹に置いています。高度な知識や技術の習得に絶えず努める姿勢を重視し、獣医師が経験豊富な指導医からOJTで学ぶ教育体制を整えています。また、「世界標準を一次病院の獣医師へ」という考えのもと、若手獣医師の実践的な教育にも力を入れており、グループ全体で医療品質の向上を追求する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、医療サービスの提供能力と質の向上を測るため、以下の指標を重要な経営目標として掲げています。
* 獣医師数:111名(2025年6月期実績)
* 診療件数:395,059件(同上)
* 獣医師1人当たり売上高:4,301万円(同上)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「持続的運営が可能な組織的動物病院経営モデルの確立」を基本戦略としています。具体的には、高度医療を行うセンター病院と一次診療のサテライト病院を連携させるモデルを既存・新エリアへ展開します。また、後継者不足に悩む動物病院のM&Aによる事業承継を積極的に進めるほか、顧客管理システムのクラウド化によるDX推進や獣医師教育コンテンツの拡充を通じて、業界全体の発展に貢献する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、グループ病院の拡大を支えるため、獣医師や動物看護師の確保と育成を最重要課題としています。日本最大級のグループ規模を活かした採用活動に加え、豊富な診療機会の提供、研修制度の整備、労働環境や福利厚生の充実を通じて定着率向上を図っています。特に獣医師に対しては、OJTや教育コンテンツ「VMN」の活用により、早期のスキルアップを支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 32.1歳 | 3.0年 | 2994000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.0% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 49.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 53.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 飼育動物頭数の減少リスク
同社グループは犬猫等の動物病院事業を主力としているため、国内の飼育頭数減少の影響を受ける可能性があります。人口減少や動物愛護法の規制強化などを背景に飼育頭数は減少傾向にありますが、高度医療の提供による診療単価の上昇などでリスク軽減を図っています。
■(2) 獣医師等の人材確保・育成リスク
高度医療の提供には優秀な獣医師の確保が不可欠ですが、獣医学生の採用競争は激化しており、人材不足が慢性的な課題となっています。計画通りの採用ができない場合や、育成した人材が流出した場合、事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) M&A及びのれんの減損リスク
事業拡大のためにM&Aを積極的に行っていますが、買収後の統合プロセスが計画通り進まない場合や、当初想定した収益が得られない場合、多額ののれん減損損失が発生する可能性があります。過去にもLBOに伴うのれんの減損損失を計上した経緯があります。



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